京大理系数学2024を解く 大問6
2024年に実施された京都大学の理系の入試問題の数学を無理のない考え方で解く。
大問6
この問題は見かけ上かなり難しく見えて、どうしたらいいか分からなくなってしまうかもしれないが、実は基本的なことの組み合わせで解ける。一方で解き方に自由度があまりないので、この問題で重要となるのは、見た目の難しさに怯むことなく基礎に忠実に解くことである。
ということで解き進めていくのだが、見かけでは相当難しくみえるだけあって何をすればいいかが分からなくなる。こういう時はゴールから逆算するのが大切である。ということで、最終的な答えの出し方から何をすべきかを逆算していこう。
この問題は極限の問題であるから、極限の解き方が大問5に続いてまたもや必要となる。(詳しい説明は僕が書いた「京大理系数学2024を解く 大問5」の記事を読んでください。)すると、この問題$${N_n}$$,$${L_n}$$がどう考えてもnの式で求められるとは到底思えないので、最終手段のはさみうちの原理が必須になるだろうという予測が立つ。それならば$${N_n}$$,$${L_n}$$を不等式で表さなければならない。
でも、裏を返せば不等式で表せたらいいのだから、具体的なnの式で処理するのではなく、不等式で処理してもいいと思えたら少しぐらいはこの問題も解けそうな気がしてくる。ということで、一旦の目標を$${N_n}$$,$${L_n}$$を不等式で表すこととして問題を解き進めてみよう。
ところで、この問題が難しく見えるのはなぜだろうか?と言われると答えはおそらく$${N_n}$$,$${L_n}$$が抽象的なところにあると思う。実際どんな規模感なのかとかがイメージしづらいし、そんなものの極限なんて尚更イメージしづらい。そんな時は抽象的で分かりづらい部分を具体化してみてはどうだろうか?なんか難しいこと言ってんなと思うかもしれないが、この作業は関数をグラフに書き起こしたり、図形問題で図を書いてみたりするのと同じことであって問題の理解に必要なことである。ということで$${N_n}$$,$${L_n}$$を突き詰めていくためにまずは$${N_n}$$をもっと具体的にしていこう。
$${N_n}$$とは何?と言われるとその答えは「$${a_k}$$の整数部分がn桁となるkの個数」であるが、これをもっと数学的に言い換えてみよう。すると、指数対数の分野で何回もやった問題を思い出すことだろう。というのも常用対数を習った時に桁数を求める問題を死ぬほどやらされたはずだからだ。そんなことを思い出していたら、次のように言い換えられるのではないだろうか?「$${{10}^{n-1}\leqq{a_k}<{10}^n}$$を満たすkの個数」
こうなってくると、$${N_n}$$の範囲を求めるにはkの範囲が必要と気づける人も多いのではないだろうか?ということでkの範囲となるように不等式を変形していこう。
次のようにして、kの範囲を求めたことでかなり$${N_n}$$が具体的になったのではないだろうか?でも、まだ少し分かりづらいし、目標には届いていない。だから、一旦数直線で視覚的に分かりやすくしてみた。
こうなると$${N_n}$$を求めるためにすることがほとんど明確になってきたと思う。というのもガウス記号を使って$${[(\frac{n}{log_{10}2})^2]-[(\frac{n-1}{log_{10}2})^2]}$$と引き算すればいい。また、ガウス記号のままでは邪魔だから不等式で挟んでおく。すると以下のようになる。
これと同じことをLnについてもやっていこう。
すると、以下のようになる。
こうして目標である$${N_n}$$,$${L_n}$$を不等式で表すことを達成したから、あとは逆算した通りにはさみうちの原理を使えば答えが出る。
後半はサラッと終わってしまったが、この問題はやはり最初の一歩を踏み出すのが難しく、それさえ乗り越えれば、実は常用対数の問題とガウス記号、はさみうちの原理を使う素直な問題になっていて、極限自体もはさみうちの原理を使うということさえ分かっていればそこまで難しい変形や置換はいらない。
ゴールからの逆算と抽象的で分かりづらい部分を具体的に捉えることが出来れば、問題をより簡単に捉えることができるはずだ。