MCEI Review:これからの時代に必要な編集力の力
大阪での学び直しにMCEI大阪支部の定例会に参加。
株式会社りすの藤本さんの「これからの時代に必要な編集力の話」を伺った。
講演資料のない、いわば事前編集されていないプレゼンテーションで、つかみどころを探すまで頭の中に<?>が浮かんでいたが、講演が終わるころには藤本さんの考える<メディアを通じたビジョンの実現>という『編集力』のプロフェッショナルを感じることができた。
驚くべき事実から強みをみつける面白さ
・ なんでも寒天に流す秋田
・ 地元では当たり前すぎた版画家池田修三
・ キンキンの水筒から始まる マイボトルへのストーリー
・ フイルム会社としての矜恃を表すチェキ
藤本さんの取り組みは、1つ1つの出会いを掘り起こすものばかりだった。
どうして、1つの出会いから掘り起こすことができるのか。
私は、それぞれの背景に<プロフェッショナル>の存在が隠れているからだと考えた。
・ 秋田の農家に嫁いだお母さんにとって、自分の創作やアイデアを表現する場としての寒天
・ 綿密な多色刷りを施しながらも、それを安価な価格で、家々の壁を飾ることを望んだ池田修三
・ 魔法瓶を創る大阪のガラス職人の存在と飲み物をシェアする少女
・ 医療や化粧品市場へ多角化する中でも、細々でもつながり続けるフイルム事業の撮影から現像まで技術
廃れていても、目につかなくても、長く続き、愛されているものには、<プロフェッショナル>がこだわっている理由があるはずだ。そこを掘り起こし、理由=ビジョンを様々なメディアを通じて実現させることが藤本さんの取り組みなのだと思う。
アンテナを張ること。増幅させること。
何か気になりはじめるとそれに関する情報が急に目に入る経験をしたことがある。
子どもが少年野球を始めれば、今までスルーしていた練習器具が目に入ってくる。キャンピングカーで旅行をすると、キャンピングカーフェスというイベントがあることを知り、道の駅に止まっているキャンピングカーが気にってしまうなど、挙げれはキリがない。
これは、自分の中にアンテナを張った結果だと思う。よく、アンテナをあらゆる方向に張ることを薦めたりするが、おそらく「あらゆる方向」ではなく「狙った方向」にすることが編集力では大事なのだと思う。
そして、アンテナを張って受信するだけでは自己完結してしまう。それを自分自身の中で<増幅>させることが必要だ。
藤本さんは行動力や編集機会を最大限生かしてこれを増幅させていた。ご自身の雑誌の編集スタイルでも事前の紙面割りはしないとおっしゃっていたが、どのように増幅させるかに型やフレームワークはないのだと思う。
・ 寒天の話題を最大化するために長野の寒天生産者を結びつける。
・ 版画家の個展を交通の便が決してよくない生家の近くで開く
・ 安売り店には卸さず、定価でしか売らない
・ ファンイベント向けの付加サービスを投入する
1つ1つのケースいかに最大化できるかを考えていたのだと思う。私は、私の仕事でしか増幅できないが、藤本さんの大胆不敵に増幅させる選択肢の幅の広さはうらやましかった。
講演を通じて、藤本さんは、アンテナを張り増幅させるプロなのだと思う。私は、もう少し、編集力を掘り起こしてみたいと思った。
追記:
藤本さんの講演にふれることで「トロロアオイ」の生産危機の記事がアンテナに触れた。何か増幅する方法はあるはずだ。
手すき和紙作りに不可欠 トロロアオイ 「もはや限界」 茨城県小美玉市
■ 存続ピンチ 後継ぎ育たず
茨城県小美玉市の農家が、手すき和紙の粘材として用いられるアオイ科の植物「トロロアオイ」の作付けを2020年にやめることを検討している。同県は生産量で全国の9割を占めるが、生産者の高齢化が進んだことなどで、後継者が見つからないのが原因だ。このままでは国内の伝統和紙の生産にも影響が出かねず、新たな担い手探しが急務だ。
--日本農業新聞 2019年4月9日
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