TENET 回文の考察、ニールの正体、序盤のテストの意味 ( ネタバレあり ) ※2021/2ブルーレイ見ての追記あり
クリストファー・ノーラン監督の話題作、TENET を IMAX で観てきました。
初見のあと、考察動画を見る前に書いたのが下記 note になります。
こうすれば TENET テネットは、わかりやすくなった (ネタバレあり)
その後、TENETの考察動画をいくつか見ました。
また、鑑賞後、映画館をさっさと引き上げてしまったので、現時点ではパンフレットは購入していません。
その中で、特に見事と思ったのは、映画の秘密マーク2さんのYou Tube動画でしたので、機会があれば見ることをおすすめします。
マーク2さんの次には、茶一郎さんの動画がわかりやすかったので、こちらも合わせて見ることをおすすめします。
ここから先は「ネタバレあり」で書きますので、まだ映画を観ていない方には、読まないことをお勧めします。
鑑賞済みの方か、もしくは「何度も見たくないし、初見前に事前知識をガンガン入れたいよ」って方は、読んでいっていただけると嬉しいです。
ネタバレスペース 5
ネタバレスペース 4
ネタバレスペース 3
ネタバレスペース 2
ネタバレスペース 1
TENET の回文
先に見た茶一郎さんのネタバレ解説で知ったのですが、
SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS
という回文が、本作の大きなインスピレーションの元になっています。
このこと自体は、あとから見たら、ウィキペディアの TENET ページにも書いてありました。(下記画像はwikiより)
SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS
農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする
こちらを分解して、解説を入れると下記になります。
SATOR → セイター 悪の組織のボス
AREPO → アレポ ゴヤの贋作者、キャットの愛人か ?
TENET → タイトル、組織名、キーワード
順行10分逆行10分で挟み撃ちにする最終戦 = Ten and Ten の略か
( ヘヴィーメタルバンド名 Black 'n Blue のように、and を N と書くスラングは、一応あるようです。そのまま TEN + TEN 説もあり)
OPERA → 冒頭のオペラハウス
ROTAS → オスロ空港に美術品などを保管する金庫を建てた会社
本作において、この回文の部分部分が、それぞれ非常に大きな役割を果たしているのがわかります。
また、wiki に、「SATOR には、農耕神サトゥルヌスの意味も含まれている」と書いてあります。
サトゥルヌスといえば、第一に思い浮かぶのが、
ゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』です。(下記画像はwikiより)
この世界的名画は、名作漫画「進撃の巨人」のイメージ元の一つとも思われます。
arepo アレポを「ゴヤの贋作者」との設定にした理由は、セイターを「我が子 = ニール = マックス ひいては人類」を食らう存在、と暗示しているからでしょう。そうでなければ、わざわざゴヤの贋作者にする理由がありません。
ニールの正体は ?
「相棒のニール = ヒロインの息子のマックス説」を解説した「映画の秘密マーク2」さんの動画で知ったのですが、ニールの語学の教養からも、ニール = マックス説が裏付けられているようです。
・ヒロインのキャット (母親)とニールだけが、イギリス訛りの英語を話す
・セイター (父親) とニールだけがエトルリア語の読み書きができる
当たり前ですが「一つだけ」なら、偶然です。
「2つ揃う」というのは、現実にもなかなか無いものです。
私の英語力は「文章なら時間をかければ読める」程度ですので、英語の訛りの違いを把握できませんでしたが、日本国内で例えれば、関西弁と口語の標準語が話される世界で (テレビドラマやバラエティはたいていそうです)、二人だけが、古風で文語的な標準語を話している、ようなものなのでしょう。
そしてエトルリア語は、そうとうマイナーな言語なはずなので、日本的にはモンゴル語とか朝鮮語になると思います。
そういう2つの語学力を兼ね備えた人は、なかなか居ないものです。
その他の根拠は、私自身も初見のときに気づいていたのですが、
「ふたりとも細くて高身長。髪型・髪質も含めると、ニールとキャットのビジュアルイメージはかなり似ている」 (ニールの役者は役作りのための髪を染めた、とのこと)
「ニールは、物理学を学んでいる → 学ぶよう方向づけられた」
語学面はわからなくても、ニールが主人公に
「私がどんなに壮絶な人生を送ってきたか、この事件が終わって片付いたときに生きていたら、話してあげたいよ」と話したときに、
(補足、youtubeの会話で「壮絶な」の形容詞は入っていなかった、との指摘を受けました。そうかもしれません。けれど、仮に単に「人生」だったしても以下の主旨は変わりませんので、そのまま行きます)
「こりゃ絶対、ニールは、あの子供 (マックス)の成長した姿だよ。
そして、この事件の中で死んでしまうフラグがビンビンに立っている」
と思いました。
→2021/2/3 ブルーレイ見ての追記
→ブルーレイの字幕では「すべて終わって 2人とも生きてたらー 僕の人生を聞かせてやる」でした
ところが、映画の終盤で、「てっきりニールがマックスと思っていたけど、違うんだな」と、その推測を打ち消しました。
なぜ、推測を打ち消したかというと、最後の感動的なお別れのシーンで
ニールのセリフに対して( はじめて僕と会うときは )「 君にとっては数年後、僕にとっては数年前のことだ」
という字幕のセリフがあったからです。
→2021/2/3 ブルーレイ見ての追記
→(君に雇われたのは)「僕には何年か前 君には何年か後だ」でした。
→日本語の「何年か」は「数年間」と捉えるのが一般的でしょう。
→「ニールが作中より数年若く、主人公が数年老けた程度では、年齢が合わない」と、初見時の私が考えたのも、仕方がないと思います
→今にして思えば ニールの作中設定が25歳→19歳、主人公の作中設定が30歳→36歳 くらいに考えれば、一応つじつまは合うのですが、初見時は役者の年齢通り、2人が30過ぎの同い年くらいと思っていたので。
「数年後と数年前」。これではどう考えても、年齢があいません。
ところが、実は、英語のセリフでは「Years」であり、
適切な日本語訳としては、
「君にとっては何年もあとのことだ。僕にとっては何年も昔のことだった」
と、含みをもたせた表現とのことです。
これなら、十分、ニール = マックス説が成立します。
これは、誤訳とまではいかないけれど、視聴者を無駄に混乱させる字幕と言えましょう。
序盤のテストでわかること
映画序盤で、主人公が使命のために命を捨てられるか、のテストを受けます。
主人公がこのテストに合格したからこそ、この物語ははじります。
そのことで描かれる主人公の設定は、身体能力面の優秀さは、さて置くとして、
・ミッションに対して献身的
・自己犠牲をいとわない
・自らを危険にさらしても、なるべく他人の犠牲は出したくない (罪のないオペラ観客を救うため奮闘した → でも、罪があると判断すれば殺せる)
・ほとんどの人間が失敗するテストを、(少なくとも字幕の表現では)唯一突破した
です。
つまり、その後の展開で感じてしまう「なんでそこまで、ヒロインと子供の命を救おうとする? 」「なぜそこまで献身的なのか ? 」については、「そういうテストを通った程の、稀有な人材だから」で、一応説明がつくわけです。
作中では描かれていませんが、その主人公の献身が、長じてのマックス (後のニール)の心を動かしたのでしょう。
追記 「未来の科学者が、なぜセイターを選んだか」についても、同様のことが言えます。放射能汚染地に、あの契約書を設置したのも、テストだったのです。
・放射能汚染が続くところに、命がけのリスクをおかして、報酬を得ようとする精神
・(そういうところは一人で行けるところではないのだから)自らの報酬のために、他人を犠牲にして奪い取る精神 (実際、セイターはその場に居た同業者を口封じのために殺した)
・未来から来たっぽい、よくわからない契約書を信じられる盲信ぶり
これらの意味で、「主人公が受けたテスト」とは対照になっていることがわかるでしょう。 最後の「信じてしまえる」は共通で、他は、正反対です。
以下は、だいたいこのくらいのバックグラウンドなら辻褄が合う、との推測 (妄想) です。
仮に作中時点で、主人公35歳、ニール30歳、マックス10歳とします。
本作のあと、10年かけて主人公は未来での地位を確立。
このとき、主人公45歳、マックス20歳。
主人公はマックスのメンターとなって、マックスを逆行させる。(マックスはニールになる)
おそらく、主人公はマックスと母キャットをかばって、死んだはずです。
マックスは10年分を逆行。これで物語発生次点の肉体年齢では30歳プラスアルファとなり、ほぼ作中と合います。10年間の逆行ですから「壮絶な人生」と語るには十分でしょう。
吹替版はどうなのか
次回は、ニールの視点に立って、吹替版で見てみたいと思います。
そのときにパンフレットの見本をみて、コレは買わないと、と思ったらパンフを買います。
経験上、吹替版がスクリーンにかかる期間は限られているので、早めに見ないといけませんね。
追記
吹替版の公開は無いようです。残念。音声の加工など、通常の吹替版作成より、ずっと費用がかさみそうなので、仕方がないのかもしれません
(9/26追記) その後、パンフレットを購入しました。パンフレットの構成や、特に驚いた母船(黄色と黒に塗り分けられた船)について記事への感想をこちらで述べていますので、合わせて読んでいただけると嬉しいです。
おわり
小ネタ
愛称マックスのフルネーム 「 Maximilian 」に馴染みがある理由は、超時空要塞マクロスの最強キャラクター「Maximilian Jenius」のおかげです。
マクシミリアンを逆から読むと、Neal (imixiam)