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お題がないと何も作れない人間|アートとコピー#4

誰のために作ってる?

東京までの夜行バスで、ぽつぽつと今回の課題を振り返る。

世の中のためとか。

誰かのためとか。

課題を解決するためとか。

そんなしゃらくさい理由がないと作れない、つまんない人間になっていたなぁ、ということに気がついた課題だった。

「褒められたくって」

今回ペアを組んだデザイナーさんの、純粋な子どもみたいなひと言に、痛くハッとさせられた。バチーンとキタ。

仕事も、講座も、コンペも。結局褒められたいからやってる。誰のためでもない。ましてや世の中のためなんて言えるほど、自分はできた人間じゃない。

それだけでいいじゃんと。グルグルしてた頭がスッキリした気がした。

それからはふっきれて課題に取り組めた。ただ単に好きなものを、楽しいように。ワハハと、「良いですね!良いですね!」と褒め合いながら。(お世辞じゃなくね)

そして完成した。提出した。

もう、ウケてもウケなくてもどっちでもいい。形になって大満足。それだけで充分。

そう、仕事じゃないんだから。

2023年6月10日。この日は雨が降ったり止んだりでした。

課題の先まで、真面目に向き合う。

第4回の講師はグラフィックデザイナーの佐々木俊さん。これまで手がけてきた事例から、活動の原点の自主制作をテーマに約1時間の講義だった。

「最初は虚空にボールを投げ続けるようなもの」

自主制作を始めた当初を振り返る言葉。それでも続けることで見てくれる人が増える。そして、仕事につながっていったという。

同期の活躍に腐らず、ひとりコツコツと作り続けたから今がある。佐々木さんのラフな姿勢からは「作ってればいいことあるよ」とゆるく背中を押してもらえた気がした。

そして阿部さんからも「課題を課題で終わらせないでほしい」とひと言があった。実現させるくらいの気持ちで取り組んでほしいと。

「仕事じゃないんだから」と口にしてた自分を思い返してヒヤッとした。

単なる課題じゃ終わらない。その先があるなんて、考えてもいなかった。

世の中に出た時の想像。受け手の反応。売り上げ。社会的意義。

そういった実現性まで真剣に向き合い練り上げる。

課題を完成させることで満足していた自分は、伝わるアウトプットになるまで考えることを放棄していたのかもしれない。

その先には何があるんですか?

頼まれてないけど作っちゃう。

とはいえ、何にも縛られず好き勝手作ることで生まれるクリエイティブもある。

それは、ただやりたいからやるという荒削りの衝動かもしれない。デトックスのような毒抜きかもしれない。

佐々木さんは同期が活躍する嫉妬を自主制作で紛らわせてたという。

誰に頼まれたわけじゃないけど、作る。作っちゃう。ただただ自分のために(ダルいと言ってたけど)。

制作の仕事を始めて5年。気がつけば、お題を与えられないと何も作れない人間になっていた。仕事と課題だけで作った気になってる。それ、他のみんなもやってることだぞ。

自分がつい作っちゃうものってなんだろう…。

どっちも大事(という平凡な結論)

元々、頭デッカチに意味と意義を考えるきらいがあった。そんな自分を変えたくて、アートとコピーでは、楽しくユーモアを意識している。

制作を楽しむことは大事。今回は特に体現できたと思う。だが、楽しく好きにやるだけは、たんなる自慰行為だ。

好き勝手楽しく。だからこそ本当に伝わるのか、吟味しなければならない。じゃないと、作るときに感じた楽しさは共有できない。

次のステップに進むには、楽しくて作っちゃう衝動と、理詰めの検証の両方が必要。言うなれば本能で作り、理性で仕上げる、ということ、なのかもしれない。

そんなこと、できるのか…。

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