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ベルギー留学 長期滞在ビザ取得記
はじめに
私は現在、都内の企業に勤務する傍ら、大学の博士課程でコンピューターサイエンスの分野で研究を行っています。2025年2月からベルギーのブリュッセル近郊の KU Leuven という大学に研究留学することになりました。その際、必要になった D visa for students of higher education (minimum stay of 91 days) の取得がなかなかのペーパーワークだっため、ノウハウとして日本語で残しておきたいと思い Note を書こうと思いました。(実は Note に投稿するのは今回が初めてです。)この D Visa はベルギーに 91日以上の長期滞在の際に必要なビザで、主に日本の大学からの交換留学やベルギーの大学に正規生として入学される方を想定して書いています。
ちなみに私自身、D Visa の手続きでは、同じベルギーの大学に留学されたホノカさんの Note を参考にさせて頂きました。しかし、当然、私とは状況が異なるのと、またアップデートもありそうだったので、書いてみたというのもあります。ベルギーの D Visa 取得は基本的に①オンライン申請 → ②必要書類の準備 → ③大使館訪問・書類提出という流れで、この過程で生じる不明点については、大使館に英文メールで問い合わせを行いながら進めることになります。従って、このステップに沿って説明したいと思います。
補足: この Note はあくまで私個人のビザ取得記であり、「こんな感じなんだな」、「こんな風にやればいいんだな」と雰囲気を知って頂くところまでが目的であり、実際の手順については、大使館サイトの案内を確認して頂きたいです。(私も一通り手続きを終えてビザを取得してから書いているので一部記憶に漏れがあるかも知れません。)
手順
1. オンライン申請
最初に、Visa Application for Belgium というベルギー外務省のサイトで申請を行いました。自分の基本情報やパスポート情報等、必須項目を中心に入力しました。申請時点では(書類提出時点でも)、滞在先のレジデンスが決まっていなかったので、大使館にメールで問い合わせたところ、KUL (KU Leuven) の住所で構わないと言われて、大学の住所とコーディネーターの連絡先を入力しました。
また、申請後、当サイトで大使館への書類提出の予約を行います。このシステムを通して、予約のリスケジュールもできます。私は勤務先との調整等で手間取り、何度かリスケジュールすることになりました。11月から 12月上旬の期間でしたが、2週間後であればリスケは容易でした。繁忙期(といってもいつか分かりませんが)に手続きされる方は私よりも余裕をもって動いた方がよろしいかと思います。
2. 必要書類の準備
以下の 11 書類を大使館に行くまでに用意する必要があります。気が遠くなりそうですが、一つずつ丁寧に揃えていけば誰でもできます。
(1) 申請フォーム / Visa Application Form
(無料)
1 のオンライン申請を 2 枚印刷して、手書きで署名と日付を記入します。
(2) パスポート / Passport
( 10年有効版: 16,000 円)
有効期限が切れていたので、有楽町の交通会館のパスポートセンターで再発行しました。写真は同じ交通会館のトコーで撮影して、5 分くらいで出来上がりました。パスポートは申請から受け取りまで 1 週間くらいかかります。(ちなみに当時の私の英国のオンライン英会話講師によると、英国ではパスポート取得に 2週間はかかるそうで、日本は速いと言われました。)
(3) 写真 / Recent photographs
(約 1,800 円)
(2) と同じパスポートサイズ (ICAO) で 3 枚必要。(2) と同じ交通会館のトコーで撮影しようとしたところ、ビザは、(a) 背景と同じ白いシャツは止めた方がいいのと、(b) ジャケットを着用した方がいい と言われて、一度、それ用の服装で出直して、撮影してもらいました。(また、撮影時は眼鏡も外しました。)トコーは国毎のビザのポリシーを記載されたマニュアルを持っており、プロフェッショナルなアドバイスを頂けます。
(4) 犯罪経歴証明書 /Certificate of criminal record
(無料)
下記の 2 段階に分かれます。
(a) 犯罪歴証明書
正式には渡航証明と呼ばれています。東京都に住民登録している方は、警視庁で申請する必要があります。下記を持参して霞が関に向かいました。
(i) 警視庁ウェブサイトからダウンロードした申請書(要記入)
(ii) パスポート
(iii) マイナンバーカード
(iv) 留学先大学の Admission Letter のコピー
1 階の詰所みたいなところで出入業者と一緒に待たされて、順番が来ると呼ばれて、同じ 1 階の部屋に通されました。そこで、書類を一式提出して、機械で手を掴まれながら両手の指紋を取られました。その後、引換証を渡されました。(1 週間くらいで出来上がります。)帰りは玄関まで見送って頂き、その際、最近、KU Leuven に留学する人が多いと聞かせられて、意外に感じました。
(b) アポスティーユ
アポスティーユは付箋という意味らしく、アポスティーユを取得して初めて、日本にある大使館・領事館の領事認証があるものとみなされて、提出先国で使用することができるらしいです。(a) のアポスティーユを日本の外務省に証明してもらう必要があります。郵送での申請が推奨されていますが、(a) を受け取る警視庁と外務省が徒歩圏内だったのと、社会科見学の一貫であえて本省に行きました。下記を持参して窓口に伺いました。
(i) (a) の犯罪歴証明書
(ii) ダウンロードした申請書(要記入)
(iii) 返送用の郵便のレターパック
レターパックは農水省の郵便局で購入できます。正門で警察に身分証明書を見せると、場所を指示されました。正面玄関ではなく、財務省側の裏手に窓口があり、下々の者の応対場所といった雰囲気。そこで書類一式を渡し、確認してもらい、受領証?を渡されました。1週間もかからないで送られてきたような気がします。
まあ、警視庁も外務省も初めて行ったので、いい経験でした。
(5) 健康診断書 / Medical certificate
(約 16,000 円)
原本 + コピー2枚。大使館のウェブサイトで地域毎に指定された医療機関で受診する必要があります。私は東京では最も無難そうな日比谷クリニックで受診しました。日比谷クリニックは渡航前健診に特化したクリニックのようでした。2ヶ月くらい前に勤務先指定の(より充実した)人間ドックを受診したばかりだったので、無駄に思えてしまいましたが、大使館でも分かるフォーマットで書類を出してくれるということででしょうか。採血はされましたが、最低限のメニューで 1 - 2 週間くらいで郵送で結果が送られてきたような気がします。
(6) 入学証明書 / Admission letter
(無料)
原本 + コピー 2 部。留学する KU Leuven のコーディネーターが International Student の受け入れに慣れていて、自発的に東京の大使館に送付してくれていました。(紙の原本がない場合、大学から直接、大使館にメールで送付してもらう必要があります。)私は、大学のサイトからダウンロードした Admission Letter を 2 部のみコピーして用意しました。
(7) (英文)在籍証明書 / Certificate of enrollment
(無料)
原本 + コピー 2 部。大学に申請書と返信用切手と封筒を同封して郵送で取り寄せました。(修士を取得した私立大学は証明書はコンビニで取得できるのですが、在学中の国立大学は直接学生課に出向くか郵送しかありませんでした。)
(8) 資金証明 / Proof of sufficient means
(1,001,961 円)
ビザを取得するに当たり、長期滞在できる資金力を証明しなければいけません。以下、3つの方法があるようです。
(a) 奨学金等の証明
(b) 保証人の証明
(c) ベルギーの銀行口座での資金証明
私は、(c) になりました。留学する KU Leuven の案内に従い Blocked Account に振り込んで、その証明を KU Leuven のコーディネーターから東京の大使館に送付してもらいました。Blocked Account とは予め大学の口座に必要な資金をプールしておいて、月々払い戻される仕組みです。月 1,000 EUR * 6 ヶ月 + 手数料 100 EUR = 6,100 EUR (1,001,961 円)となりました。東京で半年生活してもそれくらいかかるかも知れませんが、円安もあり海外送金には気合が要りました。日本から大学の口座への送金には、下記 (10) で紹介する Wise を使いました。
(9) 履歴書 / Curriculum Vitae
コピー 3 部。内容はご自身の判断で OK。自分は米国の Ph.D. の CV を参考に下記骨子で作成しましたが、研究者以外は Publications はいらないはず。(ここで作成しておければ、帰国後、これをベースに就職活動に使えるます!)ベルギーに長期滞在する資格があるという視点で語学検定とかアピールできるものは書けばいいと思います。
Education
Work Experiences
Licenses & Certifications
Publications
(10) 登録手数料 / Proof of payment of administration fee to the Belgian Immigration Office
(37,703 円)
ビザの発行手数料でベルギーの内務省公共サービス部(SPF Intérieur)に申請前に支払う必要があります。私のときは、D Visa for Students – Higher Education で、237 EUR でしたが、2025 年 2 月以降、金額が更新されているので、大使館のウェブサイトをご確認ください。一般に銀行からの海外送金は結構な手数料を取られると聞きますが、Administration Fee の説明書にも記載されているように Wise を用いた送金が可能になっています。送金方法については、個人の好みもあると思いますので、そこは適切な方法を選んで頂ければと。
Wise 紹介プロモーションリンク
新規サインアップで、75,000 円分の送金手数料が無料
上記は Wise のプロモーションリンクで、リンクからサインアップした方は75,000円分の送金手数料が無料になるとともに、紹介者も 3人以上にサインアップして頂くと、11,000円受け取れる仕組みらしいです。まあ、そういう仕組であることはご承知おきください。ただ、私はこの仕組みを利用しないで、口座開設してしまって、再度、紹介リンクから作成しようとしても名寄せがされてしまって開設できなかったので、Wise を最初に開設される際は(上記でなくとも)プロモーションリンクから開設する方法をおすすめします。
(11) 保険証書 / Proof of (travel) health insurance in Belgium
(約 39,980円)
所属大学の学生教育研究災害保険のオプションという形で割安な価格で加入しました。保険代理店とは全てメールと郵送でやり取りしました。国内の大学が共同で東京海上に委託している保険で、利用できる方は個人で直接契約するよりもリーズナブルな価格で契約することができます。
3. 大使館訪問・書類提出
何とか書類一式を揃えることができ、予約した日時に麹町の駐日ベルギー王国大使館に向かいました。有楽町線 麹町駅から徒歩 5分強のところにあり、途中、ハイソなマンション立ち並んでるなといった印象でした。(私は、過去、単科生としてグロービスに通っていたことがあり、その裏手にあると記憶して向かいました。)
玄関は二つあり、下記写真の国旗が掲げられているところの玄関(2階)は業務用の受付で、一般外来の受付は1階になります。入ったところに国王と女王の肖像写真が掲げてあり、「おおっ」と思いました。受付は一人ずつで、私は30分くらい早く着いてしまたったので先約が終わるまで椅子に座って待っていました。テーブルの上には私が行くKU Leuvenのパンフレットが置いてあり、PR に力を入れているなと感じました。
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窓口では、始めに書類一式提出して、来客者として自分の情報を紙に記入しました。私の場合、申請フォームに勤務先の情報も記入していたので、勤務先からの派遣ではなく、所属大学からの派遣であることが分かるように申請書にその旨を追記するように言われて、その場で記入しました。その後、機械で両手の指紋をスキャンするように言われて従いました。終わると、ビザの引換書を渡されて終了でした。発行までどれくらい要するか聞いたところ1週間くらいと言われました。所要時間は15分くらいだったと思います。
その後、2営業日後にメールで発行できる旨の連絡を受けて、受け取りは金曜日以外の営業日の 14:00 から 15:00 の時間帯とされていたので、月曜日、同じ場所に向かいました。ビザがプリントされた自分のパスポートを受け取り、入国後、10日以内にこのビザを市役所に持っていって、滞在許可証を発行してもらわなければいけない旨の説明を受けました。基本的に大使館のスタッフは親切だったと思います。(私の場合、Health Insurance の証書の原本を当日、返されなかったので、後日、電話で確認したら速達で郵送してくれました。)その後、一通り終えた解放感?からか、麹町から千鳥ヶ淵公園を経由して九段下まで歩いてしまいました。
おわりに
以上、ベルギー留学における長期滞在ビザの取得記でした。本件、2025年9月頃から始めて、12月にはビザの受け取りを終えることができました。やはり、まとまったお金が必要になったというが一番の印象ですが、各書類の発行に当たり、行く先々で研究留学を好意的に受け止めて頂き、ベストエフォートで対応してもらったと思っています。留学というのは、行くのは自分一人でも、ビザの発給に限らず、大学、役所、各種サービス会社、そして家族と様々な人のバックアップがあって初めて実現できるものと思いました。この記事はベルギーへの入国手続きについてのものですが、日本からの出国に当たっても、社会人の場合、日本で支払っていた税金や社会保険や民間保険をどうするのか、証券口座をどうするのかとか考えなければいけないことが多く、やはり現代においても、国境を越えて活動するというのは、一大事なんだなと実感しました。
参考文献
D visa for students of higher education (minimum stay of 91 days)
ベルギー留学~学生長期滞在ビザの申請方法~