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入社17年目、「不意の異動」をきっかけに自分を捉え直した話

すごく久しぶりの投稿です。1年前に九州のある地方都市に担当者のまま転勤となり、最初は「自分の目標をどのように設定したら良いのか」とこれまでのキャリア最大の挫折をしかけたのですが、早めに「ベテラン担当者」としての自分を捉え直してなんとか1年前向きに仕事してこれたのでそのマインドセットの変化について整理しておこうと思います。悩みを深めず目の前に残された山積みの課題に周りの皆さんと思い切り取組んできたら、KPIの改善度合いで全国上位5%に入ることができ、組織メンバーの皆さんも「組織がとても良くなった」と喜んで下さり(当然様々な良い条件が重なったおかげなのですが)とても手応えのある1年間となりました。
恵まれた場所と人に巡り合えた偶然に心から感謝しつつ、一年前「キャリアの頭打ち感」に悩みそうだった自分に「意外と良かったというか、最高な一年だったよ」と伝えるつもりでこの一年の自分の行動変化についてのメモを残します。


1.改めて謙虚に、人との接点を丁寧にするよう気を付けました(誰とでも敬語で話すようになりました)


九州に転勤してくる時に最初に思ったのが、「きっと年次的にもうpromotionのチャンスはなくなったのだろうし、扱いづらい”腫れ物”にはならないよう人間関係に気をつけて、謙虚に自分のできる仕事をしっかりしていこう」ということでした。それまでは部の各種施策の取りまとめをしていたことや、自分の人事評価を期待していた部分もあり自己顕示欲は今よりもっと強かったと思いますし、後輩には「先輩風」を吹かしていたように思います。また、自分の一挙手一投足の見られ方を気にして、仕事の手応えが小さいと急に落ち込んでしまったりということがよくありました。今から思えば、フル回転で問題解決をしながらも利己心が透けて見えるような、あまりついて行きたいと思われる実務リーダーではなかったのかもしれないなと思います。(この反省がある分、いざpromotionとなった時に前の組織の複数の方からお祝いのご連絡を頂けたのはとても有難い気持ちでした。)
こちらに来てからは幸い、自分自身に対する「評価」としての見られ方に過度な期待をしなくなったことで精神的にも安定していたように思います(そんな暇もないくらい、引き継いだ案件のリカバリーで必死だったということもありますが)。新入社員を含めて全員に対して敬語で丁寧に接することで次第に自分自身が本当に謙虚になっていくようにも感じられましたし、相手に対するリスペクトを持ちながら「教えたろう」よりも「伝えられることを伝えていこう」というスタンスを持つことができたように思います。
また、傍から見れば最初に仕事を抱え込みまくっていたこともあり、徐々に皆さんの方から「それ、やっておきますよ」とお声掛け頂く機会も増えていったのも嬉しい誤算でした。過去の自分にとって大きな課題だった「権限委譲」について、この一年は非常にスムーズに進められたように感じたのも印象的でした。なるべく押しつけがましくならないように、相手を尊重するスタンスはこれからも無くさないように気を付けたいと思います。(そういえば、社内文書もすべて「です・ます調」で揃えるようにしたのもこの1年からでした。これも続けると思います。)

2.自分がイニシアチブを取るよりも、周りにいかに協力できるかを考えるようになりました。


他拠点との連携では、自分が取りまとめる範囲はほぼなくなったので1フォロワーとして優秀な後輩の皆さんが進める施策をサポート・実行する役割になりました。幸い、過去に取りまとめをしていた経験から皆さんが「企画・立案をいくら一生懸命やっても人がついてこない時のしんどさ」は痛いほど想像できたので、画面越しでも笑顔で頷いて、少し場が止まってしまった時にはすぐに前向きに発言して、施策が前に動き出すきっかけになることを心がけたりしました。そうした中でいつからから「困った時の**さん」と言って頂けるようになり、徐々に人間関係ができていく不思議な感覚がありました。部内の繋がりをまるで「存在感の出し合いの場」から「助け合いの場」のように捉え直せるようになったことは自分でも新鮮でしたし、実際に「助け合い」を通じて皆で出したそれぞれのアウトプットは自分がこれまで経験したことのない程大きなものでした(上から目線でしたらすみません)。この好循環のイメージは、よくある競争ベースの「イニシアチブの取り合い・タスクの投げ合い」では成し得なかったものではないかと思います。

3.あれこれ悩みかけたら「今ここ」の課題解決に集中することを心がけました

とはいえ、キャリアのことを含めてあれこれ考えだしたらきりがないほど悩みって増えがちですよね。個人的には、マインドフルネス等でよく言われる「今ここ」に集中する、ということはよく意識していました。PIXAR映画でとても好きなものの1つに「Soulful World」があるのですが、この内容のイメージです。ストーリーは、ジャズピアニストを夢見る「意識高い」音楽教師が落ちこぼれのsoulである「23番」との出会いを通じて、「人生の素晴らしさは何かを成し遂げた先にあるのではなく、常に『今、この目の前に』あるんだよ(意訳)」ということに気付くというものです。天上界の先生達が「人生のPurpose?面白いことを言うんですね」「自分だけのsparks(キラメキ)なんてあってもなくても良いんですよ」と言ったり、プロのシンガーが「夢が叶っても、いつもの日常が続くだけ」と核心をついたセリフを話す等、今の過剰な競争・格差社会を一歩も二歩も先取りしているようなテーマ選定は本当にクリエイティブで素晴らしいなと思います。主人公がプロのピアニストとの念願のセッションが終わった後に言われる「若い魚がここにない”海”を探そうとして、おじいさん魚に”今あなたがいる場所が海だよ”とたしなめられる逸話」もとても好きな話でしたし、「あなたは既にいつでも、人生の素晴らしさを味わえる」という普遍的なメッセージは何度見ても励みになるものでした。

昨年4月に前任者(複数)から引き継いだ案件の量は客観的に見ても1.5人分以上で「こんな込み入った案件と仕事量、4−5年前ならやりきれなかったかもしれない」「自分の培ってきた実務スキルが今、試されているんだろう」と毎夜毎夜書類を整理して読み解く日々でした。ただ「どんなに散らかった部屋でも足元の物を一つ一つ片付けていくしかないと誰かが言っていたな」と自分に言い聞かせながら目の前の課題解決に集中し続けたところ、一年をかけて半分以上の案件を終わらせることができ、長期案件のKPIも大幅に改善しました。また、多くの難案件を担当メンバーと一緒に取り組んだことで、自分なりの仕事のやり方が伝わって「自分の分身」ができていくような感覚があったのも嬉しい経験でした。
目の前の課題解決に全力で取り組みつつ、上司やメンバーの皆さんとのコミュニケーションを絶やさずにいれたことで中長期的な「悩み」をあまり考えずに済んだことは改めて一年を振り返って良かったと思えることです。


4.自分の組織という足元をしっかり固めて「成果を出す組織」にしていくことが、拠点外でも自分の言動を説得力あるものにしてくれると理解しました


日常業務を行う組織がどんな場所なのかは本当に運なところがあるので非常に難しくも感じますが、以前の自分が「部内の取りまとめはやっているけれど、拠点は大規模で手に余り四苦八苦してしまっている」という状況だったのがナンセンスだったかもしれないなと今となっては感じています。数年前まではあまり感じなかったのですが、結局のところ日常業務の大半は「自拠点(やチーム)を上手く回してなんぼ」で、自拠点の運営を通じた試行錯誤の結果や経験値を他拠点にも還元していく場が代表者会議だったりするものですね。そして結局は上手く回っている組織こそ何をするにも説得力を持てたり好事例の発信側になれたりするものなので、「足元の拠点運営で”成果を出す組織”を作り、部の施策にも拠点を挙げて協力すること」こそが部の中でもしっかりプレゼンスを出すことに繋がるのだろうと今は思います。ここは、前の場所で拠点運営で統率を取り切れなかった自分に強く言い聞かせたいことだと思います。書いてみればアッサリしたことですが。

5.最後に

あまり上手くまとめられていませんが、今この一年を振り返った上での自分のマインドセットをどのように試行錯誤してきたかということや結果気づいた学びについてメモを書きました。結果として、大変ありがたいことに半ば諦めていたpromotionもさせて頂けることになったのですが、このこと自体は良い人と環境に巡り合えたという運の要素が圧倒的に強かったと思います。この記事はあくまでベテランになりつつある自分をどう捉え直したかという部分に着目して受け取って頂きたいと思います。
(マイケル・サンデル先生の近著「実力も運のうち」で、「運で得たアドバンテージを、殆どの人は全て自分の努力の賜物と勘違いしてしまう」と痛快に書いていましたが、この振り返りもそのような要素を含んでしまっていると思います。)

あと、promotionのことは過去数年やはりたくさん悩んできました。前を向くために自分なりに色々な方と話したり本を読んだりして考えたことは、終身雇用を前提とした日本の人事制度は「誰もが大まかに納得する理屈付けができて、全体で利益を最大化するための1つのシステム(当然、運や誤差はあるもの)」であって、そこに自分の価値を全投影すべきでないんだろうということでした。「ビジネスパーソンとしての優秀さ」なんてものは客観的に測りようがないことですし、実際に「人事評価」に一喜一憂してしまう時期に同世代の一定割合が外資コンサル等への華々しい転身をされているのを見ると、転職等で中長期で見た「強い個人」を目指すことのほうが時代に合った生き方のようにも思います。(このことは、社会的に見てとても優秀な方々が社内で認められずに悩んでいたケースも多いということだと思っています。)
若手から中堅になりつつある年代に「1つの会社でまるで『特別でない人材』として埋もれていくことへの不安」を感じるのは当然と思いますし、もし「見られていないことへの焦燥感」を感じられているとしたらそれは死活問題とも言えるかもしれませんので逃げ道は常に考えておくべきと思います。ただ、それでも9割の「仕事・人に誠実に関わり学んでいく姿勢」と、1割の「丁寧な印象の積み重ね」を続けていれば、少なくともお客様対応やメンバーとのやりとりの中で日々の手応えは得られると思いますしそこまで悲しい思いをしながら働くこともないのでは(そして、いざという時のキャリアチェンジにも十分対応できるのては)と思うのでした。まとめのところは上手く書けていないのて、後から書き足していきます。


※書籍紹介

1)東芝の悲劇 大鹿靖明 著
かつての東芝のような巨大名門企業が、利己心にまみれた一部の人物によっていかにして私物化され個人の虚栄心のため粉飾を重ねるに至ったかをリアルに描くドキュメンタリーです。ピュアな若手社員の間には見えない、日本伝統企業のリアルな側面が垣間見えるような本でした。「会社で行われる意思決定は、(様々な情報を踏まえつつも)結局は個人の主観とパワーバランスによって行われる」という当たり前の現実が突きつけられる内容でもあります。

2)1兆ドルコーチ エリック・シュミット他 著
転勤して最初の4ヶ月位は徒歩通勤をしていたのですが、その間Audibleで繰り返し聴いていた本です。元フットボールコーチのビル・キャンベルが非常に人間臭い(けれど納得感のある)指南で数々の新興IT企業のCEOをコーチしてきた話です。個人への肩入れではなくあくまで「チームとしてどう成長するか」を考える公平な目線や、「有能でも言うことを聞かないヤツは要らない」という経験に富んだ言動の数々は非常に明快で、聴いていて非常にポジティブになれる一冊でした。自分にとって仕事で立ち止まる度に聴きたい本でもあります。

3)ベテランの心得 堀江翔太
ラグビーが好きなら知らない人はいない、Panasonicの堀江翔太さんが「キャプテンを引退してから一部員としてどのようにチームを引っ張るように心がけてきたか」について語った本です。まさに1年前の自分に読ませたかった、めちゃくちゃ良い内容でした。ベテランになると何となく知識だけ増えて行動が減りがちですが「まずは自分が動かなアカンよね」ですね。

4)虎(ハンバートハンバート)
過去数年なかなかpromotionできずに自分の中の恨めしい気持ちが出てきた時には、まるで自分がこのまま山月記の虎のようになってしまうのではという葛藤もありました。時々この歌を聞いて、人の妬みや恨めしい気持ちは何百年、何千年と変わらない人間の本質のようなものなんだなと受け止めつつ「そんなネガティブな気持ちに飲み込まれないで前向きに生きよう」と自分を鼓舞していました。

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