地方で働くことの面白さ(転勤族目線)
13年前に東京本社の会社に就職して、4年間の東京生活をしてから9年間ずっと地方都市で働いて暮らしています。地方転勤の最初は「将来、本社や海外で活躍する為には期間限定の地方経験も必要なんだぜ」くらいに思っていましたが、10年近く地方で暮らした今では地方の生活がすごくしっくり来ていて「一生、地方で地元のために働いて暮らしたい」とすら思っています。なので今日は地方で働いて発見したことについて記載します。転勤族なのでIターンとは違いますが、色々な都市を経験していますよ。
1.思ってもない街がホームタウンになる面白さ、勝手に地元を愛しそこから日本を見渡す新鮮さ
大学卒業までほとんど地元の私鉄にしか乗ったことのなかった(阪神間だけで育った)世間知らずだったので、22歳で上京して4年間東京で働いた際にはまず「世の中にこんな標準語で話す人おったんや、サザエさんみたいや」とカルチャーショックを受けたのでした。住んでいた川崎市も勤務地だった東京も、便利でおしゃれだったけれどもそこまでの「ホーム感」はあまりなかったように思います。初めての仕事と場所で、土地のカラーを味わうほど地に足ついた生活ができていなかったのでしょう。
そして5年目、初めての転勤で関西の東の端のある8万人都市に転勤した時に「30分に1本しか電車来ないのか!」「カエルの合唱がものすごいな!」「そして自分はこの街に住むのだ!」と、妙な高揚感に包まれたことを覚えています。人の流動性が比較的低く、同年代の人同士が卒業アルバムで人を探すこともあったり「安土桃山時代から一族でここに住んでます」という人もいるような地域で4年間、「ここでもし一生暮らすなら自分はあのへんに家買いたいな」とか「子供にはここの高校目指させよう」とか、そこで一生を暮らす生涯をなぜか繰り返しシミュレーションしながら地元を走り回って働くことは自分にとって非常に泥臭くも面白い経験でした。
地元の高校を甲子園や花園で応援したり地元の政治家をなんとなく応援したりと、要は勝手に地元を愛して新たなホームタウンから日本全体を見渡す経験は「あぁ自分はどこでも地元を愛して暮らしていけるんだな」という妙な自信にも繋がります。きっと同じような思いをされる方が多いので、社内で「人間到る処青山あり(どこにでもあるお墓、それぞれの場所に人の暮らしがあるのだなぁ)」という言葉をよく聞くのだと思います。
2.均質的だと思っていた日本も結局、「濃いローカル」の集合体であることの気付き
上記1.のような転勤をその後2回繰り返して、今ようやく腑に落ちつつあるのは均質的だと思っていた日本も結局は、「濃いローカル」の集まりに過ぎないんだなということです。各地に行けばそれぞれの風土と歴史があり名士がいらっしゃり、地元有名企業を中心とした地元のエコシステムがありますね。大学3年で就活をする時に父親が「自分が勤めている私鉄よりも大きな会社が何十社も集まっているグループが東京にはあるんだよ(当時は意味不明)」「狭い地元に留まらず広い世界を見てきなさい」と言われて財閥系企業に入った訳ですが、良くも悪くもイメージとは異なりました。グローバル企業であっても1地域においては地元企業と変わらず、結局は1つ1つの地域にしっかり根ざして、地元の方々と顔を合わせて信頼してもらって、地域を良くしていくような仕事をするのが良い仕事なんだろうと今は思っています。グローバル企業の資本の大きさがあるからこそ利用できるスケールメリットとそれに伴う人とやITへの投資、そしてそもそも大きな資本だからやれる業種(保険のような世界中のリスクを取ってバランスさせるような業種)というのは当然ありますが、地元でその瞬間やるべき仕事は地元にどっぷり浸かることだというのは自分としては嬉しい誤算だったようにも思います。
3.「濃いローカル」で転勤者が出せる付加価値と自分なりの強みの見つけ方
そして「濃いローカル」にどっぷり浸かりながら転勤者の目線で考えることは、「①地元のメンバーに地元のお客様から選ばれる良い仕事をいかにしてもらえるか」であり、「②転勤者として、日本全国にあるより良い仕組みや価値観をいかに組織と地域に還元しアップデートし続けられるか」だということです。言い換えると「地域最適とスケールメリットのベストミックスを考える面白さ」ですが、そうなるとすっかりビジネススクールの海外進出ケースのようですね。そして②の転勤者としての役割(付加価値)を果たすには、一つ一つの赴任地で自分の経験を還元しながら、自分自身をさらにアップデートし続けることが何より重要ですね。自分の会社では転勤ルートが全く同じ人はほぼ0なので、各地で経験してきた数々の試行錯誤と濃い学びの掛け算は自分にしかないものであり、一つ一つの地域で思い切り働く中で見えた自分ならではの成功パターンの数々が徐々に自分の強みになっていくのだと今は思います。自分の仕事はサービス管理なので、各地の「サービスの実務」「組織マネジメント」「地元のネットワーク構築」それぞれの観点で自分がうまく経験を出せるカテゴリ、苦戦して学ぶカテゴリがあったりして自分の引き出しがどんどん広がっていく(おそらく会社の20〜30年ではなくならない)のは成長実感としてもすごく面白いです。RPGみたいなものですね。
4.今後について
上記の他にも、地域ならではの食べ物や自然の豊かさ(特に自分にとっては各地で登山ができるのが楽しみ)等もあり、自分は今の仕事の内容も全国転勤そのものについても非常に楽しめています。今後の最大のテーマは家族の生活との両立であり、やはり中長期ではどこかに腰を据えた生活をしていかないといけないのだろう(でも各地を転々としながらの子育てってどこまでやっていけるのかな)と、少しもやもやしているのが現状です。今、県の勉強会でIターンの話を聞いたりしていて、ローカルに必要とされてローカルに貢献できる仕事をしていくこともすごく魅力的なキャリアと人生だなぁとも改めて思っており、地元に根差して付加価値を出し続けられるキャリアというのも模索し続けたいとも思っています。ただ自分の付加価値がどれだけ出せるのかが問題なので、プロボノ等を通じて自分の付加価値をシミュレーションしていくのが良いのかもしれませんね。
少し時間切れで書き終えたので、順次アップデートしていきます。(以上)
※参考図書
◆サービスを制するものはビジネスを制する https://www.amazon.co.jp/dp/4492533346/ref=cm_sw_r_cp_apa_ddYzBbD953154→転勤と関係ありませんが、各地のサービス改善を考える上で自分の中でのバックグラウンドになっている本です。サービスマネジメントというカテゴリがあることを知ったことがまず目からうろこでした。