これから初めてスマートフォンとやらを契約しようと思う 第十話
これまでのあらすじ
今回は、今回こそは、ついにスマートフォンを契約しに行った話。
前回(2日前)店員の松尾さんから「平日でお仕事がお忙しいのは分かります。ですが契約にいらっしゃるなら閉店時間の一時間半前くらいが限度ですね。契約内容の説明に初期設定、特に初めてのスマートフォンの方は慣れないこともあるかと思いますので。」
契約に時間がかかるので早めの来店を、とあらかじめ言われているので、仕事をそこそこに切り上げた月曜の夕方、自分は携帯ショップへ向かっていた。
2013年にガラケーを契約したときも、なんだかんだで一時間はかかった記憶がある。ガラケーですらだ。
ただ、この9年の間、国会でも「携帯代は高すぎる」だとか、2年縛りルールや料金プランに代表される契約形態の複雑さについても議論がなされていることは知っていた。
(そして2日前にこの話を松尾さんと共有してもいた。)
携帯契約が簡略化されれば店員さんの負担も少なくなる、みんなが短時間勤務なら欧米諸国のようにプライベートの充実を優先できる社会になるんじゃないか。
なので「契約が簡単になったよ」と政府が発表してくれれば、すぐにでも契約に行こうと考えていたが、政府はそんなクッキリとした境目は設けてくれなかった。それよりも3Gガラケー終了のお知らせが先に来た。
携帯ショップは、デモ機や価格を見に行くくらいならフラっと立ち寄れる気軽な空間だが、店員さん側は、1人1時間以上かかる契約作業を日々担う大変な業務内容も抱えている。
そう考えれば、「契約しに行く側」の自分なんて気楽なもんだ。説明を聞くだけ、理解できなければ再度質問して噛み砕いて答えてもらって、納得できたらお金を払って契約成立。
…こんな、悟りを開いているように見えて、そんな高貴なものではない、ただの考え事を浮かべているだけの頭で、携帯ショップにたどり着いた。
「○時に予約した多賀山です。契約しにきました。」
今思えば非常に言葉足らずの挨拶だったが、店員さんは慣れたように対応してくださった。
担当してくれたのは、役者の伊藤沙莉さん風の女性。
今回の連載の中で初めて女性が登場した。
伊藤さん「ガラケーから替えるんですね。あぁ、初めてのスマホですか!」
そう言って伊藤さんが運んでくる黒いトレーには、一時間半後に自分のものになるAQUOS zero6が載っている。
なんだか、世界中の人が知っている名画が当館に運ばれてきて壁に展示される瞬間を一応見ている美術館スタッフのような気分だ。
「おお〜」と、小さな声と小さな拍手を贈りたいのは山々だったが、ここは美術館ではない。やめておいた。
伊藤さん「プランは、スマホデビュープラン。」
ええ、そうです。
「本体代金は48回払いの場合だと」
あ、すみません、おとといのうちに一括払いって決めました。
そういうのって、引き継がれてないんだ。松尾さんにはおととい確かに伝えたが。
「一括払いの場合だと、現金払いか○○払い(失念、クレジットか何か)のみになりますが。」
おとといは出番のなかった封筒を出す。
現金で。持ってきてます。
「まず端末を操作する前に当店の保護シートを貼りたいのですが、これは税込○○円で、本日お支払いいただく本体代に加えて…」
すみません、昨日のうちにケースと液晶シート、買ってます。
カバンからそれらを出して、伊藤さんに見せた。
「ここで購入したシートは私が貼れますが、よそで買ったものは貼ることができないんです。そのシートは後ほどご自身で貼ってくださいね。ではこのまま初期設定を始めますね。」
伊藤さんが淡々とAQUOS zero6を起動する。
一方自分はここでも小さい拍手を贈りたくなった。
「SDカードがないと容量がすぐパンパンになりますので、当店のSDカードは税込○○円で本日お支払いいただく本体代に加えて…」
SDカードなしで何日か持ちますか?今日一気にパンパンになりますか?
「数日は持ちますが…」
では、家電量販店で後日自分で買います。
「互換性がひょっとしたら…」
ガラケー使用者なもので、ちょっとよく分からないです。
「Bluetoothイヤホンはお持ちですか?」
はい、AVIOTの。8000円くらいだったかな。去年発売のモデルです。
Bluetoothイヤホンだけは最新なんかい、という伊藤さんのツッコミが聞こえてきそうだった。
きっと、携帯ショップ的には周辺アクセサリーも購入してもらいたいのだろう。
調剤薬局に売られている血圧計、花屋に売られている花瓶。実はそちらの売り上げも大事なのはどの業種の店舗も似たようなものだ。
「充電器は」
タイプCですよね。BluetoothイヤホンとポケットWi-Fiの充電器もそれなので、持ってます。
充電器に関しての知識は最近たまたま読んだ最新のネットニュースに助けられた。欧州連合様々。(詳細は第八話にて。)
伊藤さんがひたすら投げ、自分がひたすらかわす。ずっと勝敗がつかない一方的なドッヂボールを展開しているようだが、一応契約は一歩一歩進んでいる。
伊藤さんによる付属品お勧めゾーンは終了し、通話ができるかの確認と、気がついたらPayPayに登録されていたのと(これだけはかわせなかった。)物理的なホームボタンがないので、そのあたりの基本的な操作など。
それから月々の利用料金の確認方法、返品可能な日数、セキュリティパックの詳細。
…これって、賃貸契約より項目が多くないか。店員さんの給料は知らないが、きっともっと高くて良いのに、思ったより貰えていないんだろうな。可哀想だ。
疲れてくると、こういった「慈悲の心」みたいなものが自分の内側から出現して、脳の回復作業に入ることがよくある。
最後は、きっと同じ携帯会社の方なら皆さんも見ているであろう共通の最終確認動画のようなものを見て、契約漏れ、説明漏れはないかのチェックシートに記入、している頃には外は真っ暗になり、体が冷えてきたのでジャケットを一枚羽織った。
伊藤さん「夕方になると寒くなってきますよね。昼間は暖かい、というか暑いのに」
伊藤さんはもうすぐ今日の仕事を終える。表情も柔らかく会話もフランクになってきた。
一時間半を予定していた契約手続きは結局二時間半かかってしまった。閉店時間も一時間過ぎ、伊藤さんには残業をさせてしまっていた。
日本人はもっと欧米人のような短時間勤務を、なんて言っている自分が、目の前の人を残業させている。
ここの携帯会社は3G回線の終了までまだ一年半あるが、きっとあと半年、2023年に入ったあたりからガラケー→スマホに替える人々が押し寄せ、予約が取りづらくなるんじゃないかと考え、自分はこのタイミングで契約した。
(それはとても賢明な判断です、と以前大倉さんにも太鼓判を押されているのだ)
そうなると来年はさらに店員さんの負担も増えるだろうと予測し今のうちに買い替えたのに、結局残業させている。
申し訳なさと、本体や契約書が入った紙袋を抱え、早く降りたそうにしている店のシャッターの下をくぐり、店の外へ出た。
伊藤さんに深くお辞儀をし、帰り道にスマホをひったくられたらまた店員さんへの負担が…などと良くない妄想をしながら、足早に家路についた。
ようやく、ようやくだ。
自分はスマートフォン所有者になりました。
帰宅してからの初期設定も、まだまだ波乱続きですが、「初めてのスマホの契約」は完了したので、この連載はこれにて終了になります。
また新しい連載で、「スマートフォン一年生」の混乱と奮闘、慣れてきたらAQUOS zero6の良さもお伝えできれば。
ただ、AQUOSスマホは早くも別の最新版が出ているので、 zero6に関しては、もう新しく手に入れられることもないかもしれませんが。
総合的な「AQUOSスマホの良さ」などをお伝えしていければと思っております。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
自分も多くの皆様と同じ、スマホ所有者です!
周辺アクセサリーの購入をことごとく断り、最終的に付いてきたのはタイプC変換アダプタこれ1つのみ。
誤飲しないように気をつけます。