遺族はスケープゴートを求めてる
宝塚歌劇団の劇団員の女性(25)が9月末に死亡した問題で、遺族の代理人弁護士が10日、東京都内で記者会見を開いた。そこで遺族のコメントが代読されている。
弁護人側がどこまで自覚して会見を行ったかは分からない。しかし、かなり危険なやり方だと思う。
週刊文春を中心に週刊誌側はこの事件を「宝塚歌劇団の組織的な問題」として報道してきた。
劇団側も週刊誌への反発は抑え、お知らせには「SNS等での誹謗中傷について」のみ示している。
つまり組織の責任や改革の必要性を受け入れつつ、個人への誹謗中傷は止めようという方針が固まっていた。
しかし今回遺族は
「宙組に配属されたことがこの結果を招いた」
「パワハラを行った上級生が、その責任を認め謝罪することを求めます」
とコメントしている。
監督責任や連帯責任ではなく、犯人という個人を特定し提示を求めているのである。
それがニュース等で流れることは、加害者とされているスターへの誹謗中傷を誘発する。
「誰もが被害者であり加害者」という認識が浸透しても、さすがに103期の加害を言及はしてなかったと思う。
しかし、102期には転落死した生徒の実の姉妹がいる。
遺族はまだ、現役タカラジェンヌの親なのだ。
新人公演基準では、102期は上級生だ。組によっては既に新人公演が行われており、指導する側に回っている。
102期によるパワハラも文春に出ているので、リーク含めればかなり集まっているであろう。
102期→103期へのパワハラも当然あったはずだ。自死するまでとなると、音楽学校時代から積み重なった「長期的なトラウマ」がある可能性は高い。
特に転落死した生徒は、双子の姉妹で予科本科に別れた特殊な音楽学校生活であった。
本当に亡くなった原因を探る気があるなら、「102期は本科生の頃、転落死した生徒にどう指導していたのか」をまず明らかにしたいはずだ。
しかし宝塚は同期も親子間も親同士も、繋がりが強い。遺族としては宙組上級生のパワハラだけを言及し、102期によるパワハラは隠蔽したいのか本音かもしれない。
「102期による加害」が表に出る前に、宙組上級生だけを糾弾して終わりにしたい。
つまり102期の娘や娘と仲の良い同期の将来は守りつつ、犯人として人生を潰すほどの復讐相手は欲しい。
ご都合主義と、誹謗中傷の的にする私刑の意図が見えてしまっていた。
自殺したなら純粋な被害者であり、生涯加害をしなかったとは誰も思っていない。単に気が引けるから言わないだけである。
もちろん遺族なら聖人君子という訳でもない。「スケープゴートを差し出せ」という要望も仕方ないからこそ、非難はしにくい。
「宙組上級生のパワハラは制裁を受けさせ、音楽学校含めた他のパワハラは見逃して欲しい」というのは一見無茶苦茶だが、会見が無ければほぼそうなっていたように思う。
ただあそこまで大々的にパワハラを言及した以上、宙組だけというのはおかしい。
102期はもちろん、転落死した103期生に上級生として関わった生徒を全て洗い出す必要がある。
遺族は特定の宙組上級生が原因と決め打ちしているからこそ、謝罪というゴールを設定したのだろう。
しかし人が死を選ぶのは、そんなに単純なことではない。