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2-3 ファンからの支持も高い!儚い恋愛、初めて恋を知り、初めて恋を失った 「二人セゾン」

3枚目のシングルである「二人セゾン」は前作発売から約3ヶ月半でのリリースとなった。タイトルにもある「セゾン」とはフランス語で「季節」という意味だが、直訳すると「二人の季節」となり、あまり意味が伝わってこない。どんな意味が込められているのか、どんな思いを込めてパフォーマンスをしているのか、メンバーが語るラジオ番組や本楽曲のMVの新宮良平監督、振付師のTAKAHIRO氏のインタビューなども交えながら考察をしていく。


 本楽曲のMVのテーマは「心の衝動」であると監督が受けたインタビューの中のナレーションで語られている。また、メンバーが出演するラジオ番組で、本楽曲について解説するコーナーがあった。その番組でメンバーは、MVを撮影した監督から「ずっとメンバーと何年間も、何十年間もいるわけじゃなくて、今しかないから、そのメンバーといる時間を大切にしてほしい」という意味が込められていると説明があったと話している。また、同番組で振付師から「心臓の音や生きていることを表現したい」と言われたことも明かしていた。これを踏まえて本楽曲を見ていく。


 まず、これまでの2作と違って、すぐに曲が始まるのではなく前置となる映像が入ってくる。都会の中で、小鳥のさえずりや風で揺れる木々の葉の音。それらを目を閉じ感じるセンターの平手は学生服を着ている。目を開け見上げるが、その先に何があるかまではわからない。そこで映像が切り替わり、空と太陽の光、木の葉っぱとともにタイトルとグループ名が表示され無音になる。


 そして、全2作と違うもう一つのポイントは最初がサビから始まることだ。最初のサビ、「二人セゾン 二人セゾン 春夏で恋をして 二人セゾン 二人セゾン 秋冬で去って行く」の部分のMVは、逆光で顔が見えないが、1列に並び、腕を動かし何かを表し踊っているようにみえる。そして、平手の顔が徐々に逆光から外れ見える。動きが独特であること、髪の毛のなびき方がゆっくりであることからスローモションで再生されていることがわかる。最後の2小節では木の葉と空と太陽の光のカットを挟んで、冒頭の学生服の平手のカットに戻る。次の「一緒に過ごした季節よ 後悔はしてないか? 二人セゾン」の最初は、学生服を着たメンバーが階段を駆け上がって行く様子がスローモーションで描かれている。そして、再び平手のソロカットに戻る。そこで平手は少し微笑無用な表情を見せ、持っていたカバンを肩から外し地面に落とし、街へと走り出す。スーツで歩く人々の足元やビルの間を流れる雲などの描写があることから、都会を連想させる。


 Aメロの最初、「道端咲いている雑草にも 名前があるなんて忘れてた」では実際の歌割りで歌唱している今作で初めてフロント入りをした小池美波がMVでも映し出されている。学生服を着た小池はどこかウキウキしているような、笑顔を見せて歌っている。そして、次の「気づかれず踏まれても 悲鳴を上げない存在」では初のフロント入りの佐藤詩織と1st single以来のフロントの鈴本美愉が出てくる。両手でサイマジョポーズの形を作りながら、2拍子を振るかのように手を振りステップを踏んでいる。最後にはターンをし、本楽曲の特徴でもあるバレエの要素を取り入れた振り付けをしている。小池から佐藤・鈴本への移り変わりは同カット内で行われており、連続した映像のためとても自然に歌割りを交代し、ポジションの移動も行なっているように感じる。


 Bメロでは2列目の真ん中にいる3人、渡辺梨加・長濱ねる・渡邉理佐が登場する。「だれかと話すのが面倒で 目を伏せて聞こえない振りしてた」とあるが、MVの振り付けでは、腕を交差し掌を合わせ「人」と2つ作り「二人」を表しているようにも見える。その後の今泉佑唯・小林由依が歌い登場する、「君は突然 僕のイヤホン外した」で初めて具体的な人物が登場する。ここで主人公が「僕」、そして、相手が「君」であることがわかる。ここまでの歌詞で、「道端咲いている〜振りしてた」までは全て、主人公「僕」が自分のことを語っているのではないかと推測できる。クラスでも目立たない存在の「僕」は意図的に周りの人と関わらないようにしていたが、その見えない囲いを作るイヤホンを「君」が外した。と言い換えることができるのではないだろうか。MVの二人の振り付けも何かから解放されたような、ねじり上げた腕を広げ降ろすような動きが入っている。そして、この場面の最後であり、特徴的な歌詞でもある「What did you say now?」は、日本語に訳すと「今なんて言った?」となる。イヤホンを外された僕が君に対して聞き返しているのだろうか。


 これまで出てきた部分は主人公「僕」の目線や言葉だったが、次のCメロは「君」が「僕」に対して言った言葉なのではないかと考える。「太陽が戻ってくるまでに 大切な人ときっと出会える 見過ごしちゃもったいない 愛を拒否しないで」とある。イヤホンをとって、聞き取れなかった言葉を聞き返した「僕」に「君」が話した内容ではないだろうか。目を伏せて聞こえない振りしてたら大切な人に出会えずもったいない。誰かがくれる愛を拒否せず、一度受け入れてみなよという「君」からのアドバイスだろうか。また、最後のフレーズにある「愛」とは前作で知った「愛」なのではないかとも受け取れる。MVでは「太陽が〜出会える」までは基本的に今まで出てこなかった今作で主に3列目を務めるメンバーが出てくる。「見過ごしちゃもったいない」は歌割り通り2列目にいる志田愛佳と菅井友香が映し出される。二人で微笑んでいるスローモションのカットから、歌いながら二人の腕を合わせ指を差す振り付けへと切り替わる。「愛を拒否しないで」では手を空へ向かって伸ばしつかむような仕草をし、笑っている長濱が登場する。


 1番サビに入る1小節前のきっかけのリズムの段階でシーンは移り変わり、それまで学生服だったメンバーは本楽曲の制服衣装へと変わる。「君はセゾン 君はセゾン 僕の前に現れて 君はセゾン 君はセゾン 日常を輝かせる」のMVは制服衣装を纏い、バレエ調の振り付けを踊っている絵が中心となっている。テンポ通りの部分とスローモーションの部分が入り混じり、歌詞でも表現されている過去の部分と「僕」がいま語っている、時空の入り混じりを表現しているように思える。「昨日違った景色よ」の最後の部分では逆光で誰か特定することは難しいが学生服を着たメンバーの一人が空に手を伸ばしバレエのように飛んでいる。「生きるとは変わること 君はセゾン HA−」では今まであったシーンの続きのようなカットが散りばめられ、最後には冒頭に出てきたカバンを置き去り、街を駆け抜ける平手と地面に落ちる枯葉のカットで2番へと入って行く。


 2番Aメロでは旋律がBと同様に戻り単調になる。「街を吹き抜ける風の中 何かの香りがしてたのに 振り返る余裕とか 興味もなかった」と歌詞がある。この歌詞から、1番同様主人公「僕」は周りに興味がなく、壁を作っていることがうかがえる。MVでは学生服で自由に踊る、スローモーション再生中心の映像と、本楽曲の制服衣装でいくつかのグループに分かれてバレエを髣髴させる振り付けで踊っている映像が織り混ざり構成されている。


 2番Bメロの前半では「自分の半径1m 見えないバリア張った別世界」と歌っている。1番のAメロ・Bメロ前半で張っていたバリアのことを指しているのではないだろうか。そして2番のAメロ同様、ここでも周りと距離を置き一人でいる主人公「僕」がわかる。「見えないバリア」を張るために、イヤホンが必要だったのではないかと考えられる。ここのMVは2番Aメロと続いており、制服衣装でグループごとに踊っているカットが流れている。そして、後半では「そんな僕を 連れ出してくれたんだ」とある。イヤホンを使って見えないバリアを張っていた「そんな僕を」君はイヤホンを突然取って、声をかけ外界へと「連れ出してくれたんだ」と1番のBメロ後半と通ずる内容である。MVではAメロであった学生服で踊っているメンバーの複数の別カットで構成されている。ここでも、踊ってはいるが、制服衣装のカットでは多くの割合で通常のスピードで再生されており、学生服のカットではスローモーションを多用していることが2番に入ってからここまでだけでもわかる。この場面最後にある「What made you do that?」は訳すと「どうしてそんなことしたの?」となる。ここで指す「そんなこと」とは「イヤホンを外した」ことであり僕一人だけの世界からどうして「連れ出した」の?という意味なのではないかと考える。そしてここではフロントの原田葵のソロカットが入る。


 ここまでで、映像のカット割りがある程度把握できる。制服衣装の着用したシーンではダンスがメインで撮影されており、学生服では9組の組み合わせ([平手][齋藤][原田][守屋][小池・鈴本・佐藤][小林・今泉][梨加・長濱・理佐][菅井・志田][3列目メンバー])と全員でのカットがあり、それぞれの歌詞を髣髴させるようなシーンが多い。また、全員のカットでは制服衣装同様ダンスシーンもある。そして、それぞれのカットや全員のカット共通で、学生服のカットでは通常再生の映像もあるがスローモーション再生の映像が多く使われていることがわかる。


 2番CメロのMVは学生服と制服衣装でのダンスカットが交互に使われている。また、学生服では踊りながら空に向けて腕を伸ばし階段を駆け上る印象的なシーンもある。この部分ではスローモーションは後半に一度しか使用されておらず、この曲のダンスを見せたい部分であることが伝わる。歌詞は「一瞬の光が重なって 折々の色が四季を作る そのどれが欠けたって 永遠は生まれない」と歌われている。ダンスの意味としてMVの監督が込めた「ずっとメンバーと何年間も、何十年間もいるわけじゃなくて、今しかないから、そのメンバーといる時間を大切にしてほしい」という意味がわかりやすく入っている部分ではないかと思う。欅坂46 21人の誰かがかけたって今の、この作品を作ることはできない。だから、欅坂46でいるこの瞬間を大切にして、仲間と共に過ごしてほしいという意味が歌詞からわかるからこそ、全員で作り上げるダンスシーンをD2では全面に出したのではないだろうか。


 2番サビのMVでは学生服で全員が踊るカットがメインとなっている。階段に並んで1番サビ同様、バレエ調の振り付けや両手でサイマジョポーズを作り、手を振りながらステップを踏む振り付けなどが織り込まれている。そして、「秋冬で去って行く」のところでは手を伸ばす振り付けのところで同時に後ろに振り返り、階段を数段駆け上り次のフレーズの振りへ入る。2番サビでは、冒頭のサビの最初の「二人セゾン〜秋冬で去って行く」までの歌詞は変わらない。最後の「忘れないで」では全員が後ろに振り返り斜め上の空を指差している。2番サビ最後は歌詞、そして次に繋げるために旋律にも変化が見られる。そして、歌詞は「儚く切ない月日よ 忘れないで」となっている。これまでの歌詞のほとんどは過去形で書かれており、主人公「僕」が懐古しているような内容であった。しかし、ここではそれまでの「儚く切ない月日」を「忘れないで」と自分自身に言っているような歌詞となっている。「儚く切ない」という言葉と、「秋冬で去って行く」と繰り返されていることから、主人公「僕」と相手である「君」はすでに別れ、別の道を歩んでいると推測できる。


 次は、この曲で初めて出てくる旋律パターンであるDメロが登場する。前半の歌詞は、「花のない桜を見上げて 満開の日を想ったことがあったか?」となっている。今の「僕」が過去の「僕」に対して心の中で自問自答しているようにも感じる。後半は「想像しなきゃ 夢は語れない 心の窓」となっている。その前の2番サビでは過去を忘れないでと自分に言っているが、ここでは未来について考えている。一人の世界に閉じこもり、バリアを張っていた「僕」が「君」と出会い、様々なことを教えてもらい、出会いと別れを経験し成長したことで、過去を忘れずに、それを未来へ繋げる・活かしていくことが大切なのだと学び自分自身に言っているのではないかと考える。ここのMVは学生服でのカットとなっている。主に、全体が映る場面と平手のソロダンスにフォーカスが当たる部分の2つに別れている。歌番組でも同様に平手を中心に対称に斜めに並んでいて腕を広げ木々が揺れるような動きをしている。平手は一人で前へ出てサビでも見られるバレエ調のダンスも取り入れられている。全体で踊っている時よりも激しく見えるこのダンスは「僕」の心の中の葛藤を表しているようにも思える。


 この次のサビ前のメロディーもDメロ同様初めて出てくる旋律だ。「春夏秋冬 生まれ変われると 別れ際 君に教えられた」とある。ここで「君」とはすでに別れていることが決定的にわかった。また、「生まれ変われると」とあるが、これは「君」が「僕」のバリアを破ってくれたことによって自分の殻を破れた・生まれ変われたような気がすることを指しているのではないか。また、ここでは平手を中心に数人のソロカットが流れる。逆光が強いカットもあるが、ここで徐々に時間が経過し、最初は青かった空も赤くなり夕方になっていることがわかる。1曲のMVの中で1日の時間の流れを表すと共に、歌詞に出てくる春夏秋冬の四季の流れも表しているのではないだろうか。


 ラスサビ①では他のサビは3フレーズで構成されているが、次へ繋げる関係から2フレーズで完結し、次へ進んでいる。歌詞は1番サビの最初の「二人セゾン〜日常を輝かせる」の部分と同じで、最後の伸ばす拍数が短くなっている。MVは、学生服で踊る続きのカット・カバンを置き去り駆け出した平手が橋を走っているカット・制服衣装で振り付け通りに踊っているカットの3つが中心となっている。


 次のラスサビ②は、ラスサビ①同様、最初の「二人セゾン〜秋冬で去って行く」までの歌詞は変わらない。そして、ここの部分のMVは直前の制服衣装で振り付け通りに踊っているカットの続きが主に使われている。だが、今まで制服衣装でのカットではあまり使われてこなかったスローモーションがここでは何度も使われているのが印象的だ。大きく腕を回しているカットで入るスローモーションでは振り付けによって起きるスカートの裾が揺れ動くが綺麗に映る繊細さと動きのダイナミックさの反対の要素が美しく映っている。また、ここまでで多用されているスローモーション再生される映像が過去の「僕」と現在の「僕」の行き来を表しているようにも感じた。

 ラスサビ②の後半1フレーズ目、「初めて感じたときめき」ではいくつかの学生服での組み合わせのカットが入った後、制服衣装で手を伸ばして欅の木を作るカットが入る。そして、最後「思い出はカレンダー 二人セゾン HA− 僕もセゾン」では、今まで出てきたカットの続きが瞬時に移り変わるように出てくる。平手が橋を走っているところや置き去りになったカバン、都会や木々・鳥が飛んでいるカットなど様々なカットが入ったのち、曲が終わった瞬間に欅の木に混じる平手が映る。
そして曲が終わった最後には、橋を走りきって膝に手をつき息を切らしている平手がカメラを睨むように見つめるカットで終わる。


前にも述べたとおり、この曲のMVには、監督がメンバーに伝えたこと、つまり、今しかない、永遠ではない欅坂46でいるこの瞬間を大切にして、仲間と共に過ごしてほしいという意味が込められている。また、我々聞き手にとっては出会いと別れを繰り返す中で人は成長をしていくこと、そして、自分に飛び込んできてくれるような、自分のことを理解しようと努力してくれる人がどこかにいるという勇気や希望を与えてくれているような曲なのではないか。ただ、この曲でも主人公「僕」は、大人や周りに対してよく思っていないということは過去2曲に共通していると感じた。

【フォーメーション 一覧】
(1列目 7名、2列目 7名、3列目 7名 計21名)

二人セゾン


【参考資料】
https://shojadotoku.com/meaning-of-futarisezon-dance-and-choreography
https://www.keyakizaka46.com/s/k46o/diary/detail/6446?ima=0000&link=ROBO004&cd=member
https://youtu.be/mNpPQXMgtmw