【掌編小説】 すずこ

もうこれで3度目の浮気

この男にそれほどの魅力があるとも思えないが

優しく
程よく抜けているのが
母性本能をくすぐるのだろうか

もっと上手くやればいいものを

スマホやカードに
バレバレな履歴を残したままの
お粗末さ

本当バカなの？

バレるたびに
もう二度としないと誓い
ほとぼりが覚めた頃
また繰り返す

結婚して7年
夫婦仲は悪くない

世間的には仲の良い
おしどり夫婦と思われている

あって当たり前の
空気のような存在になりつつもあるが
嫌いになった訳じゃない

もうしない
と反省する態度に
演技は感じられない

男女問わず誰にでも優しいので
いい寄ってこられたら
拒めないのか？

これまでも
相手も本気という訳でもなく
お互い遊びで
悪びれた感じもないようだ

バレたら
いろいろ面倒だから
即終了となる

今回も同様？

だが
流石に
わたしのほうが
限界かも

結婚って
いったい何なのだろう

子どももいないし
耐え忍ぶ時代でもない

幸い1人で生きていくだけの
経済力もある

何なら
夫がいない方が
無駄遣いしない分
ゆとりがあるかもしれない

煩わしい
人付き合いも減るし
家事も1人の方が
間違いなく楽だ

男女平等と
いわれていても
やはり家事の負担は
まだまだ女性が
多くを占めているのが現実だ

この結婚
わたしにとっての
メリットは
と考えてみる

………とくに思いつかない

さて
どうしたものか

離婚届は
2回目が発覚した時に
入手してある

まずは証拠をつきつけて
どんな反応をするか
みてみようか

だめな男を
受け入れてしまう
わたしにも原因があるのだろうか

いっそ
こちらも若い男と
遊んでみてもいいかもしれない

たぶん出来ないけれど

夫に操をたてるとか
そんなつもりはさらさらないが
ただ単にどうでもいい男に
取られる時間がもったいない

やるなら本気だ

そうなのだ
浮気するなら
家庭崩壊して
全て捨てる覚悟でいけと思う

こんな
中途半端さが許せない

よし決めた

今回も
離婚せずに
許してみよう

だからといって
次があるとは思わないで

4回目はない

慰謝料たっぷり搾り取って
ドン底まで突き落としてあげる

その時まで
わたしの掌で
遊んでいるがいい

仏の顔も三度まで
だ

それを
超えたらあとはない

4回目の重みを背負う気ならば

死ぬ気でどうぞ

地獄を見てみるのも
いいんじゃない？