不幸はどこから ショートショート17
「最近、不幸続きなんです。」
そう述べる男性は、呪術師である私に助けを乞うてきました。
聞けば、男性はある壺を買ってから不幸が続いていると、呪われてしまったというのです。
私はこの壺に見覚えがありました。
その壺は文句を壺の口に吐き出すとストレスがなくなり、幸せになれるという代物でした。
実のところはただの壺でしたが、確かにストレスがなくなるということで評判でした。
不満も吐き出せばストレスが軽減されますからね。
そして、この壺を人々のストレスのはけ口として売りつけたのは誰か。
何を隠そうこの私でした。
しかし、幸せを呼び寄せるという壺のはずが、どういうわけか人の手に渡って壺の効果が変わってしまったのでしょうか。
そんなはずはないのです。この壺はただの壺なので、呪いなんかではなく、ただの男性の思い込みだということです。
呪いを引き取るという形で男性からは壺を受け取りました。
ちゃっかりと少しばかりのお賃金を男性からいただいてから、引き取りました。誰も不幸にはなってないです。Win-Winなやりとりです。
マッチポンプ?ちょっと何言ってるのか分かりません。
少し時間が経ちまして、どういうわけか私に不幸が続きました。
鳥にフンを落とされる日もあれば、犬のフンを踏んでしまったりとクソまみれの日々が続いたり、屋台で美味しそうな焼き芋を値段も聞かずに購入し、ぼったくりの値段を吹っ掛けられたりと踏んだり蹴ったりでした。
原因はどうやら壺のようで、この壺は様々な人からストレスのはけ口にされ、ストレスをため込んでしまったようです。
よく見ると禍々しいオーラを周囲に出していました。
呪いの人形などと同様に、物にも魂や怨念が宿ることがあるようです。
私としても初めての体験で衝撃を受けました。
図らずして、呪いの壺へとなってしまっていたようでした。
さて、どうしたものかと考えていましたが、この壺は私に八つ当たりのように不幸を押し付けていたので、ストレスがなくなったようです。
数日が経ち、気が付くと壺が放つオーラも萎んでいました。
それでは、また人々のストレスを受け取る仕事に戻ってもらうことにしましょう。
壺をまた売りに出そうと家を出るタイミングで大雨が降ってきました。
なるほど、壺はストレスのはけ口になることを拒否しているようです。
しかし、私もこの壺から受けた不幸でストレスが溜まっていました。
この壺が職務放棄をしたことをきっかけに、ストレスが限界に達していました。
「えい。」
壺を割ってしまいました。
仕方ありませんよね?ストレスが溜まってしまったのですから。
壺が粉々に割れたことによって、私の気持ちはすっきりしました。
しかし、この割れた壺を掃除するのも私。
「・・・・・・・・・・・」
それからの私は人や物に八つ当たりするのは良くないと、呪いの壺を売ることをやめました。