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【悲報】スーツパンツ、ケツ圧に耐え切れず爆裂


スーツ君、前触れもなく即死

――あれはつい先日、水曜日のことだった。

仕事は別にカジュアルな服装で問題ないのだが、
服を考えるのが面倒なので普段はスーツで仕事をしている。

職場ではオフィス内へのスマホ持ち込みが禁止のため、
ロッカーに全てを預けている。今日のロッカーは一番下段だ。

勢いよくしゃがみ込んだ時、後方……もといケツのほうから
えもいわれぬ破裂音が聞こえた。

ブリブリブリブリュリュリュブツチチブブブチチチチブリリイリブブゥゥゥゥ!!!!!!

幸いロッカールームには人はいなかった。

「おっとっと、僕ともあろうものがうっかり放屁をかましてしまったか」

「まあ人もいないしセーフセーフ」

そんな思考を巡らせるが、尻の感覚からするに
どうやら僕の出口は最初から無言を貫いているようだった。

何だ……?
何か……何か様子がおかしい……。
目視が難しい場合、頼りになるのは触覚だ。
そっと手を伸ばしてみる。

サスリ……。
サスリサスリ……。


『こッこれはッッ……!』
『尻が……!二つに割れているッッ!!!』

ケツのところの生地がパックンチョしていた。
詳細はよく見えないが、割れ目からは糸も引いているようだった。
何度も入念にケツをさすったから間違いない。

――非常事態だ。

被害状況の詳細を確認すべく、今すぐにでもトイレに駆け込みたい。
しかし、トイレに行くためには一度、
人が大勢いるオフィス内に入る必要がある。

ケツが割れた状態で。

そして当然、ケツの破れた穴を見られれば社会的死が確定する。
その日から会社であだ名もつけられることだろう。
ケツ穴確定だ。


日常から一転、「ケツを見られたら死ぬ」世界に放り込まれた。
さながらチープ・トリックのスタンドにケツに張り付かれた
岸部露伴のようだ。

だがしかし、僕の心はまだ平静を保っていた。

実際の被害状況を目視確認できていないので、
意外と軽傷の可能性も全然ある。

また、こちとら社会人生活も長く、経験も豊富だ。

屁をこいたら実が出た経験だって1度や2度はある。

それに比べればケツに物理的なバリアが施されていない程度、
心理的なダメージは少なかった。

どうせ歩いているオッサンのケツなんか見ようとも思わないだろう。
下手にケツをかばうと却って注目を浴びてしまう可能性もある。
堂々とオフィスを横切っていく選択をとった。

然して、おそらく数十人はいるであろうオフィスをまっすぐに通り、
存外あっさりとトイレまで無事に辿り着き、個室へと駆け込んだ。

もしかしたらこの時点で何人かに
「あれ……?あいつのケツ……なんかおかしくね……?」
と気づかれたかもしれないが、僕が観測できていない以上
そのような存在はいないのと同義だ。

無事といっていいだろう。多分。きっと。maybe.



さて、当たり前だがこのゲーム、個室に駆け込むのがゴールではない。
状況確認の準備でしかないのだ。
被害によっては今後の動きを検討しなければいけない。

しかしオフィスを無事に駆け抜けた安堵もあり、
大した穴ではないだろうという自信が形成しつつあった。
これを正常性バイアスという。


大丈夫だ。きっと問題ない。おそらく股の間が少し裂けている程度だろう。
今日はそのまま過ごして、明日から別のパンツで出社すればいいだけだ。

さっそくベルトを緩めスーツをずりおろし、
目視で被害状況を確認した。










バチクソ破れててワロタ





ガチでビリビリに裂けてて笑ってしまった。
諸般の事情により実際の画像はお見せできないので、
代わりに「分度器の画像」を用意した。


分度器の丸みの部分が僕のプリチーなケツのメタファーだと思ってほしい。

そして青い太線部分。
お分かりだろう。ここが破れた範囲だ。

――『まるだし。』

いや、厳密にいうと70~120度あたりは目視で見える部分、
股下の120~170度は通常では角度的に見えにくいので、
せいぜいカラフルなおぱんつがバッチリ見える程度だ。
ま、ツーアウトってトコかな

「破裂したスーツの縫い目は人知れず世界を救う最強のボディーガード
~今更戻ってきてと言われてももう遅い~」

そんな異世界系なろうタイトルが頭によぎりつつ、
今更ながら、あの時勢いよくしゃがみこんだ自分を呪った。
とはいえこのまま便座に座って
ケツの穴とにらめっこしていても状況は改善しない。

ほつれた糸だけ見えないようにして再び装着し、
トイレから出て速攻自席に座った。

何気ない行動だが、この座るという行為は
量子力学に基づいた対策の一つだ。

座っている間は観測者が介入できず、
スーツのケツに穴が開いているかは誰にもわからない。
ケツに穴が開いている状態と開いていない状態は
重なりあって存在し、定まっていない。

いわゆるシュレーディンガーのケツ穴というわけだ。
足りない布面積をyoutubeで見て理解した気になっているだけの
量子力学の概念で埋め合わせた。

ケツとイスの間に量子的不確定性を挟み込みながら、
いそいそとPCを立ち上げ、Google Chromeに打ち込む。

「スーツ ケツ 破れ 対策」カタカタッ ターン!


今時、調べれば何でも出てくるものだ。

そこにはこの絶体絶命の窮地を脱する、2つのアイテムが記載されていた。
っぱgoogleって神だわ

「ガムテープ」「ホッチキス」

ガムテープで割れ目を塞ぎ、
ホチキスで縫い糸の要領で割れ目を完全に閉じて目立たなくする、
ということのようだ。

なるほど……分かたれた布地を一つに繋ぐのは
さながらDQのロトシリーズで魔王城までの道中にある、
2つの陸地をつなげる虹の架け橋……!

その橋をかけるにじのしずくを作るのに必要な
「あまぐものつえ」と「たいようのいし」といったところか……!
※最近にじに縁のある某有名VTuber事務所の、
所属ライバーがDQ1クリア耐久配信をやっていたので

人類の叡智を深く胸に刻み、昼休みにコンビニ直行を決めた。
幸い、あまぐものつえ……もといホッチキスはペン立てにおいてある。
たいようのいし(ガムテープ)だけ買ってこよう。
もちろんケツが割れたままで行くことになるが。







結局補修できたん?の話。

さて、ここからは実際に補強はうまくいったのか、
という話になるが、結論としてはとてもうまくいった。
ケツが割れた状態でコンビニに向かい、
ガムテを買ってトイレで補修をした。

最初はガムテだけでワンチャンいけるか?って思ってたけど
ガムテだけだと布の解れた部分に張ったテープの白い部分が
丸見えになってしまった。
その上からホッチキスで止めるとあら不思議。
全く目立たなくなった。

Web上にスーツの補修方法を載せるに至った
先駆者のケツ丸出しマンに感謝。


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