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Zepp Nagoyaの想い出〜とある凡人の話〜



20時〜22時頃に、Zepp Nagoyaの2階にある関係者席からスペシャルゲストさんのライブを見てた。

そのとき1階にはまだ1000人以上のお客さんが居たと思う。

でも地下アイドルさんの出番はほとんど消化されていたから、関係者席には既に、スペシャルゲストさんの出番のあとに出演する予定の、ほんのわずかのアイドルさんと、僕らしか残って居なかった。

ぼくは非常に感受性豊かなのが長所でも短所でもあって、

どうにもガラガラの関係者席からジッとステージを見ているクロちゃんの後ろ姿が、とても寂しいものに見えた。

私はある程度、年を取ってから何となく音楽を始めたわけだけど、彼は若い頃からずっとバンドをやってきて、できればプロになりたくて、結局、それが叶うことなく会社員になって、その合間にギターを弾いている。

もし、彼が私と一緒ではなくて、他のバンドと一緒に居たら、

もしくは、私がもっと歌がうまくて、もっと若くて将来性がある頃にRose&Rosaryが始まっていたら、

彼はもっと大きいステージでギターを弾いて居ただろうか。

彼はもっと有名だっただろうか。

7分間と言う限られたステージではなく、フル尺でZepp Nagoyaのステージに立てただろうか。

そう思ったりもしたけど。

ちょっと考えて、

それは絶対無いな(笑)

彼が今までの人生において引ける牌の中で、Rose&Rosaryが最大の当たりクジだっただろうな(笑)

と思った。(笑)

これがどこかで誰かの力になることな気がするから、語るんだけども。

よほどの天才ギタリストが出てこない限り、おそらくどんな対バンとぶち当たっても、その日ステージに出たギタリストの中で、クロちゃんがぶっこ抜きで一番ギターが上手い。

けれど基本的に彼の翼と言うのは生まれつき多分折れていて、自分で飛ぶことができない人間であるように見える。

彼のことを悪く言っているのではなく、世の人々のほとんどは、だいたい翼が折れていて

自分1人では飛ぶことは出来ない場合が多い。

翼が折れている人達は、悠々自適に人生を飛び回る、自分と違う種類の人々を見て、

自分に自信を無くしたり、羨ましく思ったり。

憧れてファンになったり、その人の背中を追いかけ続けたり。

飛ぼうとすることすらやめてしまったり。

社会や、ごく周囲に、言い訳に使えるような都合のいい人たちを見つけて、

『自分が飛べないのはこの人達のせいだ、世の中のせいだ』
『飛んだどころで、だから何の意味があるんだ』

とか言って、飛べない理由を外部に求めて、自らを安堵させようとしながら暮らしていく人なんかも居る。

仮に、私に翼があったとして、そのひとたちに

『翼があっても、ある人なりの苦労があるよ。どちらが幸せかなんて、誰にも解らないよ』

と言ったって、それは心に届く言葉ではないし、

『翼が生えててみんなと違うから変だって、いつも笑われて辛いよ』

『友達なのに、なんだか友達が、地面に落ちろ!って心の中で思いながらこっちを見ている気がして、心が休まる日が無いんだ』

なんて言葉は、嫌味にしか伝わらないわけで。

人の運命と言うのは、半分は自分で変えられるけど、半分は決まっているんだと思っている。

徳を詰んで善人だったから、翼があるわけでもない。

私には翼があるかもしれないような事を偉そうに言ったけど、あるんだとしても、それは本当にしょうもないもので

目の前にミカンのダンボールが転がっていたから、冗談で切り抜いて背中にしょってみたら周りの人が笑うので、『ネタになったぞ!みんなが楽しんでて良かった!』と思っていたら

案外、ダンボール紙の翼でも、周囲が引くほど飛べたりして

『あいつの翼、愛媛ミカンって書いてあるぞwww』

ってあざ笑ってる人達が、途中で

『あれ?むしろ、逆に、アレもアリじゃね?いいなぁ…(´・ω・`)』

って思い直したりしてくれる、そんな可笑しくて、ちっさな、しょーもない翼が私の人生なんだけど。

Zeppのステージの光に合わせて、クロちゃんの背中がボヤッと見えるたびに、色々考えた。

彼は、とても他人や世間を怖がっているように見えるし、

相手にされないかもしれないこと、見向きもされないこと、自分なんて世の中に必要ないかもしれないことに、極端に恐怖を感じる部類の人種なんだろうと思う。

絶対にそれを表に出すことはないから、本当にごく近しい人しか気づかないだろうけど。

だからクロちゃんを飛ばすには、それ専用の滑走路を引かなきゃならないし、

私や、他の人が

『大丈夫、大丈夫』『こっちこっち』『みんな待ってるから』
『誰も君に悪いことはしない、誰も君を裏切ったりしないよ』

と誘導しても、本人が本人なりの尺度で納得しないと、こっちすら見てもくれない。

なのに、滑走路で応援する人達が、疲れて応援を諦めようと思った頃、突然クロちゃんは噴煙をあげて勝手に1人で飛んでいくようなところがある(遠い目)…

身内からすると、

なんだ、飛ぶのかよ(白目)…

やれるなら、最初からやれぇや(白目)…

と思う。

自分のやりたいことが自分自身で解ったり、

思いついたり、

視界が良好になった瞬間、

クロちゃんは突然強くなって、誰よりもステージで大きくなる。

そんで、そこからすっごいワンマンになるし、ワガママになるし(白目)…

自分のペースでやろうとする(遠い目)…

本人は舞い上がってて気づいてないだろうけど、

滑走路で誘導の旗を振ってたぼくの頬さえ蹴り上げて滑走しているようなことも、しばしばある。

通常のフロントマンにありがちの、心臓に毛が生えていて、自己主張が強くて、自分が一番だと思ってるタイプのボーカリストだと、ここでキレて、クロちゃんの足を掴んで叩き落すだろうと思っている(笑)

また、通常の、心優しき、か細いメンタルの一般人であれば、クロちゃんを飛ばした時点で、

『ああ、飛んだ、良かった…』と、ここで力尽きて絶命してしまうであろう(笑)

まさか、滑走路を作って自分も疲れている最中、ジェット噴射で飛んでるクロちゃんを追尾して、そして遅れを取らないように、自分も

『こいつ、タダ者じゃねぇぜ!すげぇ!』

オーラを出し続けて飛ぶとか、結構しんどい。

しんどいけど、良かったなぁと思うし、こっちも

『おー飛んだ飛んだ!』

って言う達成感があるし、何より嬉しい。

ぼくは、

『Zepp Nagoyaで、メジャーアーティストも沢山来て、1000人お客さんが来るライブ』と言われて

その1000人の前でどうアピールするかよりも、

ほんのごく少数の、今見えてるファンの人達に何ができるかばっかり先に考えてしまって、

『いやぁ、演奏時間短いんだったら、会場が小さくても長く演奏できて、お話も沢山出来たほうがいいのでは…』と昼間にシークレットライブを入れてしまう、小さいことのほうが気になる人間、目の前に居る人達のほうが気になる人間なので、

身内であるペシミストの彼が、時折、悠々と空を飛んでるのを見守ることは

自分自身が、どんな大きいステージに立って、名前が知られていて、街角で自分の歌が流れて、衣食住に困らないような生活をするより

とても幸せなことであるのです。

おそらく、この人をここまで誘導できるボーカリストと言うのは、ぼく以外に居ないのではないかと思うのです(笑)

お客さんへの見世物がフェイクで、計算で、行動と心がちぐはぐな状態のものでいいんだったら、まぁ選択肢は沢山あろうと思うが…

彼は悪人ではないから、
自分をひた隠しながら進んでいくこと、
苦労していかないで運だけで登りつめて成功するようなことがあったら、

きっとそこから見える景色は彼の思ってたものとは違って綺麗ではなかったはずだし、
どんだけ取り巻きが居ても、それらは彼が心許せるようなものではなかったと思うし、

おそらく世の中をもっともっと嫌いになったように思うのです。

そして嫌いな世の中に適応するために、絶対、嫌なヤツへ変貌するな(笑)

嫌なヤツだと自分で解っているのに、嫌なヤツになるのは辛かろうな。
あいつピュアだからな。

ぼくが偉いかのようなブログを書いているけど、クロちゃんもクロちゃんですごい偉いのです。

本当はプライドがバカほど高くて誇り高くて、

ぼくなんかよりキャリアも全然長いのに、

ぼくがこうだって言ったら、ちゃんと引く時は引くし、合わせる時は合わせるし、折れる時は折れてくれる。

『こうした方が印象に残るはずだから、こうしろ!』と言えば主義に合わないこともやってくれるし、嫌味なキャラクターの立ち位置にもちゃんと立ってくれる。

普通であれば、ステージであれだけの事をやれる人は、人の言うことは聞いてくれないし、合わせてくれないし、折れてくれないのです。

協調性があって、人の言うことを聞いて、合わせて、折れるような人ほど、ステージに殺されてしまうからね。

身内褒めだけど、ぼくが最近よく思うのは、きっと彼が折れた翼で空を飛んでいることは

ごくごく普通の、平凡な人たちの心に何か与えるものがあるんじゃないかなと…

なんとなくファンの人達と話していると、三十路の男性がクロちゃんに与える評価が他の世代より若干良かったりする。

きっと、ごく当たり前の、天が味方したわけでもない人生を送るお兄さん同士、

なにか通じるものがあるのかなと思っている。

世の中の大部分の男なんかは、本当はワンマンだしワガママなのだし、それでいて打たれ弱いんだけども

別に、本当はワンマンだしワガママだからと言っても誰も離れて行ったりはしないし、

誰かをぶちのめして離陸してったからと言って

誰も何も言わないし、誰も嫌わないのです。

むしろ嬉しいのです。

100人が喜ぶのであれば、1人の身内くらい、どんどん頬でも肋骨でも踏んで離陸したらいいのです。

自分に生まれてきたのに、自分を殺して生きるなんてとんでもない。

ここまで、クロちゃんの悪口を言いたかったわけではなく

なんだか、彼はよくありがちな、世の中を生きるオッサンの要素を集めたようなキャラクターに思うので

悠々自適に、世のオッサンにも生きてほしいなと思うので。
こんなブログを書いたりしております。

気を使ったり、申し訳ないと思ったり、他人を警戒したり、自分を隠して生きるより、周囲の評価を気にして生きているよりも

全部出し切ったほうが、きっとあなたが生まれてきたことを喜ぶ人が増えるはずだと、

平気で身内なら頬でも肋骨でも

どんどん普段から踏みまくってる

ぼくなんかは思うよねぇ(笑)…

人間と言うのは、どうしても自分に都合の良い人たちだけで周りを固めたがりで

自分と趣味や、外見や、価値観が同じ人間だけで群れたがりで

折角オカンから生まれて飛び出してきたのに、また自分が安心して絶対保護されて納まるための、ちっさいちっさい居場所を捜し求めることに人生の大半を使ってしまう

でもぼくは年を取ってから、価値観が違う人達でたすきの受け渡しが出来ることや、

自分と考え方が違う人に背中を任せることの尊さをよく思う。

たぶん、昔は、もっともっと、クロちゃんも、ぢるも、自分とはぜんぜん違う価値観の人間だったと思うし、意見が食い違うことも多かったように思う。

現地を見てない人は、きっと

『深夜1時wwwしかも演奏時間7分ってwwwそれでZepp Nagoyaに出たって言ってるよwww』

『そんなの恥ずかしいwww』

『客席ガラガラwww100人切ってるじゃんwww』

と笑うと思う。

『チケット代高くてもいいよ、持ち時間少なくてもいいよ』って言って、みんながチケット買って行ってくれたから、その人達の顔を見て、あとから

『昼間、無料でシークレットライブやって、もっとたくさん皆にライブを見せよう!』って思い立ったんだけど、

きっと人の優しさが解らない人や、痛みに鈍感な人は

『動員稼ぎたいから、昼間にライブやって必死に営業活動してるんだろうなwww』

って言う逆転の発想で受け取るはずなんだよね。

自分より小さくて、影響力のない人間にしか笑われたり、ちょっかいかけられたりしないから、気にしないけどね。

イベントが始まって、私達が出演するまでの12時間、スタッフさんたちに、何度も何度も、

『出番は1時過ぎると思いますが、辞めますか?辞めませんか?』

と聞かれた。

ライブに出るために交通費かけて来て、辞めますか?辞めませんか?と聞かれても困るんだけどもw
『いや、あの、辞めるのは本意ではないので、どうにか、やれるようにしてもらえないでしょうか…』と返すのが精一杯なんだけどもwww

途中で、その言葉が『押してるから、むしろ辞退してくれ』と言う言葉にも聞こえるほど疑心暗鬼にもなったし

終電もなくなるから、一旦Zeppに渡したみんなの6000円をもぎ取ってお客さんに返金して帰ろうとも何度も思ったし

お客さんは疲労で座り込んでるし

何が正しいのか、何が優しさなのか、誰の味方をすればいいのか、

もしかしたら、自分も『でっかいライブハウスでライブしたぜ!』って事を自慢にして振りかざしたいような人間だから、みんなが困ってるのに、こんな夜更けにステージに立とうとしてるのか

本当にいっぱい悩んだ。

長くなったけど、Zeppの2階でクロちゃんの背中を見ているときに、クロちゃんやぢるのことを色々考えながら、

それを考えているうちに東京のお客さんの顔が頭に浮かんだり、

Rose&Rosaryの出演時刻が近くなって、見知ったうしろ姿の子らが1階の客席に入ってきたりしているのを、ずっと見ていた。

お客さん1人1人のことは、クロちゃんほど一緒に居るわけではないので、あまりよく解らない。

よく解らないけれど、

『…あのさぁ、ウチが大トリで良かったよね?この状況、辛いよね?
でも、他の人がこういう気持ちになるくらいなら、自分のとこで良かったと、心から思うんだよね…』

『うちのお客さん、強い人達だから…絶対に、全58組中の出演者の中で、いちばん頑張れて、弱音吐かなくて、人のせいにしない子達だと思うから、ウチが大トリで、きっと良かったよ』

って話しながら、

きっと、ほんとはシャイだったり、自分に自信がなかったりするんであろう、名古屋のファンのみんなにエールを送ってもらって、

普段リアリスト気取った翼の折れたヤツとか、

ダンボール紙で出来た翼をしょったダサいヤツが

深夜1時のZeppのステージを飛び回っていたことは、

きっと、ぼくらと同じ凡人に何か訴えることが出来たんだと思っているし、

凡人であるぼくらがあそこに出る勇気を振り絞れるほど

うちのお客さんや、他の出演者のファンであるお客さんが一丸となって応援してくれたことに、心から感謝しています。

PS.

いいヤツだから、こうして話題にできるだけで
経験上、他んとこのギタリストのほうが裏ではぜんぜん性格がクソである

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