イベ参加を夢見て

今朝というか昨夜見た夢があまりに強烈かつ鮮明で、未だに記憶から消えないのでちょっとメモです。

5月4日に迫る同人イベントに行きたかった私の深層心理が、せめて夢の中でと見せてくれたのでしょうか。イベントに参加する夢を見ました。

夢の中のイベント会場は、今までネット情報で見ていた建物とはかけ離れた外観をしていました。恐ろしく豪奢で巨大な円柱状の城塞のようで、一体どこから入ればいいのかわからないのです。幾重にも折れ曲がりながら列を成す参加者のお陰で、『この後ろに並んでいればいつか会場に辿り着ける』と私は最後尾を探しました。
最後尾を求めて走っていた刹那、一陣の風が吹きました。物凄い風でした。差し入れが入った鞄だけは何があっても離すまいと握り締め、通行証(実際は入場チケットが必要なのだと思います。木札に呪文のような模様が描かれた通行証が夢の中では必要でした)をポケットの上から押さえながら踏ん張る私。
が、地面がくるりと廻り、風に煽られ、巻き上げられ高く高く上昇した参加者達と共に風に乗って建物内に吸い込まれていきました。
あまりの衝撃に声も出せないのは私だけで、他の方々は華麗に着地すると宝の地図を片手に一目散にそれぞれの神を求めて走り去りました。
『あわわ、あわわわわ』とリアルで発声することは稀な言葉を発しながら、私は人生初参加のイベント会場を見渡しました。
円形の建物内は端が霞んで見えないほど広く、全体的には薄暗いのですがスペース付近は派手派手に飾り立てられライトで照らされています。幻想的な光景でした。建物同様スペース配置も円形です。そして上階に行くほど大手作家さんのスペースが配置されています。私が目指すMYGODのスペースは最上階に配置されている筈でした。
上にはどうやって行けばよいのか辺りを見渡すと、私はあることに気付きました。
参加者の頭上にSNSで使用するアイコンのような物がぼんやりと浮かんでいるのです。お互いそのアイコンを目印にして相手を認識しているようでした。
いつの間にそんなものが!?もしや私にも?と頭上を確認しようと試みました。しかし残念かな、自分で自分の頭の天辺を見ることはできません。ぼんやり浮かぶアイコンは頭の動きに合わせて移動し、頭から30センチ程上空に常に位置しているようです。
私はイベントの係員らしき人に尋ねました。
私の頭上にアイコンは見えますか、と。
係員さんは答えました。
見えない、と。
アイコンを浮かべさせる為には経験値とアイテムとMPとHPが必要なのだそうです。夢の中の私はアイテムってなんですか?との疑問を抱く事もなく、なるほどと頷くばかりです。
親切な係員さんはさらに教えてくれました。初参加の方は先ずは自分で名乗り、腐の証明をすることです。回数を重ねると貴方にもアイコンが出て来ますよと。
私はMYGODの前で、フォロワであることと腐の証明を行わねばならない事実に膝が震えました。冷静に考えると実際神と対話できる時間など殆ど無いのですが、何せ夢の中ですからね。私は真剣でした。
私は最上階目指して突き進みました。途中崖を登ったり、丸太の橋を渡ったり、金魚を5匹掬ったりと様々な試練が待ち構えていました。至宝を求める戦いとはかくも辛く複雑なものかと初参戦の私は驚愕しました。だがこの苦しい戦いの先に、難攻不落な試練の先に、MYGODが微笑んで待っているのです。
私は登り、走り、跳び、掬い、乗り越えていきました。物凄い戦いでした。
最上階が近付いて来ます。
周りの参加者は篩い落とされるどころか増える一方です。
神々に会いたいというその一心が齎す同人愛好家達の逞しさに、人間を動かす原動力はやはり心なのだと私は感動しました。
肉体は疲労していましたが心は晴れやかでした。正に薫風香る5月の青空のような爽快な気持ちで間近に迫る最上階を見上げた瞬間。

私は気付きました。

MYGOD、今回欠席でございます。と……

心が空っぽになりました。足場を失い、無重力の状態に投げ出されるような浮遊感の後、私は会場の外に立っていました。ポケットの中の通行証を取り出すと、ボロボロと塵になって消えてしまいました。

欠席だと知っていたのになぜ私はこんなに命懸けで頑張ったのだろうとの疑問が掻き消されるくらい初参戦の威力は達成感と多幸感を齎し、私は1人余韻に酔いしれました。
周囲に人はおらず、遠くで海鳥の鳴く声が聞こえます。
私は鞄の中の差し入れに損傷が無いかを確かめ、とぼとぼと歩き出しました。帰路に着くのです。
差し入れは今度全日本同人連盟に委託してMYGODにお届けしようと夢の中の私は考えていました。
MYGODの次のイベ参戦時には、今日の経験値をフル活用して余裕を持って臨むのだと、私は折れぬ心で次を見据えていました。
寂しさと充足感を抱えながら帝都の駅に向かうため、とりあえず私はバスに乗りました。
乗ってからふと気付きました。私の現住地ではバスは降車時に料金を支払うのですが、都会のバスはもしや先払いではないかと。先に料金を払っていない私はソワソワし始めました。しかし小銭は潤沢にあるのだと自分に言い聞かせ降車の時を待ちます。
街並みが都会かと思えば田舎道を走ったりと目まぐるしく変わります。無事に駅まで辿り着けるか不安になった頃、バスが終点ですとアナウンスしながら停車しました。
幸いな事に料金は後払いでした。330円の料金を料金箱に入れ、ありがとうございましたと軽く頭を下げてバスを降りようとした時です。
運転手さんに呼び止められました。料金を多く入れ過ぎたと言うのです。
私は過小でなければ問題ないでは無いかと思いましたが、運転手さんは帳簿の帳尻が合わなくなると少し怒り気味でした。
お釣りを渡すので待っていろと言われ、申し訳ない気持ちでステップに立っていました。運転手さんがゴソゴソと大きな黒いガマ口を探り、中から取り出したのは、

焼け焦げた10円札2枚でした。

初めて見るお札。しかも四隅が焦げています。
困惑する私はそれを手に握らされ、バスから降ろされました。
私は手の中の10円札をじっと見つめました。表面は燻されたように変色し、四隅は欠損していますが2枚とも9割以上残っています。
私は思いました。

「銀行に損傷紙幣の両替に行かねば」

そこで目が覚めました。
あまりの生々しさに暫し夢とは信じられませんでした。今起きたこの現在が夢では無いかと思った程です。イベント参加の夢を見たのはこれが初めてではありませんが、これほど大変だった夢は初めてでした。しかしそれでも行きたいと願う気持ちは萎えることなどありません。寧ろより強くなりました。

神に会いたい。至宝を入手したい。同胞と好きを分かち合いたい。
様々な思いで参戦の為集結する方々が、どうか安全に幸せにイベントを楽しめる事を願ってやみません。いつか私もリアルでイベントに参加しましたと感想を綴りたいと夢見ております。


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