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#187 「白」原研哉

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

「白」原研哉

はい、皆さんこんにちは、こんばんは。
いかがお過ごしでしょうか。

今回は、ある本を紹介したいと思います。
デザイナーの原研哉さんが書かれた「白」(中央公論新社・2008年)という本です。

この本は、「白」という色を、色ではなく概念として捉えていく、そんな内容になっています。

それでは、早速本の内容に移っていきたいと思います。

第一章「白の発見」

本の冒頭は、こんな文章で始まります。

“白があるのではない。白いと感じる感受性があるのだ。だから白を探してはいけない。白いと感じる感じ方を探るのだ。白という感受性を探ることによって、僕らは普通の白よりももう少し白い白に意識を通わせることができるようになる。そして、日本の文化の中に、驚くべき多様さで織り込まれている白に気づくことができる。静けさや空白の言葉が分かるようになり、そこに潜在する意味を聞き分けられるようになる。白に気を通わせることで世界は光を増し陰翳の度を深めることができる。”

はい。
まず、白という色を感じることで、身の回りにある白の多様性に気づくことができると言っています。
虹の色の数が、国によって違うというのは有名な話です。
日本では7色ですが、アフリカのアル部族は8色です。アル部族は緑の解像度が高く、緑と黄緑に分解するそうです。
一方で、南アジアのバイガ族は2色と捉えます。
この様に、国や文化によって、色の解像度は大きく異なります。

白を感じることで、白の解像度が高まり、世界が広がる。そんな感じでしょうか。

この様に、第一章は、「白を発見していく」という内容が書かれています。

第二章「紙」

そして、第二章のテーマは「紙」。

本文を紹介します。

“紙の誕生が人間にもたらしたイマジネーションにははかりしれないものがあるはずだ。紙の発明は一般的には「書写材」の発明と言われているが、単に「実用」の観点から見るのではなく、白い枚葉の誕生が覚醒させた「イマジネーション」をこそ問題にするべきではないか。確かに紙はメディアである。しかしメディアの本質は実用性のみならず、むしろそれが人間の創造性やコミュニケーションへの衝動をいかに刺激し鼓舞するかという点にある。”

これは、デザイナーの原研哉さんならではの捉え方ですね。
紙は「書く」という機能性を持った物質であるという事実がある上で、その本質は、白いキャンバスが掻き立てる「イマジネーション」ではないか。ということを言っています。

確かにそうですよね。
紙のスタンダードな色が黒だったら、緑だったら、赤だったら。
白い紙ほどイマジネーションが生まれないかもしれませんね。

先に進みたいと思います。

“薄く均一な素材は壊れやすくはかなげである。その白い紙に墨の黒色で文字や図を置く。その劇的なる対比。ここには人類史上最も重要な感覚の覚醒があったはずだ。文化史の中でひときわまばゆい光を放つイメージの特異点がここにある。”

はい。
イマジネーションを掻き立てる白い紙は薄くはかなげだけど、そこに書かれる文字や図は対比的な黒色。
この対比的な構造こそが、感覚の覚醒を呼び起こすのだ、ということですね。

第三章「空白 エンプティネス」

第三章は、

“白は時に「空白」を意味する。”

という文章から始まります。

「空白」や「不在」を意味する白は、日本の文化に色濃く息づいていると言います。

“日本人のコミュニケーションは分かりづらいと批判されることがある。伝えたい事柄を明言せず、ぼかしてしまう。主語をはっきりさせない。根回しや腹芸を用いて、曖昧なままでことを進めようとする。だから、全てを明確にし、論理構造を顕在化させる西洋式のコミュニケーションの文脈では理解しにくいということであろう。しかし、「阿吽の呼吸」や「根回し」「腹芸」は高度なコミュニケーションでもある。主体をはっきりさせなかったり、責任者を特定できなくしたり、言わずもがなでことをすませることは、暗黙裏(あんもくり)の合意形成のシステムである。そのようなコンセンサスが自然と共有される事態は、練度の高い集団的コミュニケーションが動き出している状況においては、むしろこのような合意形成の手法が精密に読み直され、研究される必要があるだろう。
極めて大事な決定をする時に、決定の対象となるものやことを直接指示せず、それを括弧にくるんで扱うという方法は、空白のコミュニケーションであり、エンプティネスの運用である。“

はい。
日本人特有の曖昧なコミュニケーションは、空白のコミュニケーションである。

第三章では、日本のコミュニケーションや様々な文化は、空白、つまり白という概念に宿っているという事例を紹介されています。

まとめ

まとめてくと、白を色として探すのではなく、感じることでその多様性に気づいていくことができる。

紙は、単なる「書写材」ではなく、「イマジネーション」を掻き立てるもの。
その紙の白と、墨の黒の対比こそが感覚の覚醒を呼び起こす。

更に、白は「空白」を意味する。
日本のコミュニケーションや文化は、その空白に宿ることが多い。

そんな内容でした。

どうでしょう。白への解像度が上がった、そんな気になりますよね。

もっと深く知りたいという方は、是非、書籍を手に取ってみてください。

はい、という訳で今回は、デザイナーの原研哉さんの著書・「白」について解説してきました。いかがだったでしょうか。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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