#188 日本発!注目の素材「改質リグニン」とは!?
『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。
日本発!注目の素材「改質リグニン」
はい、皆さんこんにちは、こんばんは。
いかがお過ごしでしょうか。
今回のテーマは、「リグニン」です。
リグニンと言えば、木材とか植物の構成要素のひとつで、紙を作るときは、一般的には除去されてしまいます。
そして、除去されたリグニンは、廃棄物として扱われて、エネルギーとして燃やされてしまします。
「よし、紙をつくろう。」となったときに、切ってきた木材から、リグニンは除去されて、燃やされてしまう。本当にかわいそうなやつなんです。
そんなかわいそうなリグニン。
「何か使い道はないか」と、色んな研究者が研究を重ねてきました。
そうして出てきた答えが、「改質リグニン」です。
この「改質リグニン」は、サスティナブルな素材で、今、とっても注目を集めているんですが、特出すべきなのが、日本で初めて出来たということ。
更に言うと、日本だからこそ出来た技術なんです。
それでは、「改質リグニン」について解説していきたいと思います。
リグニンとは
まず、リグニンについておさらいしておきましょう。
木材とか植物の主な構成要素は3つ。
「セルロース」、「ヘミセルロース」、そして、「リグニン」です。
リグニンは、木材の種類によってもまちまちですが、構成要素のだいたい3割を占めています。
リグニンを更に分解していくと、「ベンゼン環」というものが繋がって出来ています。
これが、高い強度と耐熱性を持っていて、つまり、木材を守るための強度なんかを作り出しているんですね。
そう、木材にとってみれば、リグニンは防御の要と言える、とっても重要な要素なんです。
サッカーでいうところの、元スペイン代表のセルヒオ・ラモス的な存在です。
リグニンがない木材は、ディフェンスラインが絶望的なサッカーチームと一緒で、とても危険な状態と言えます。
木材にとって、いかにリグニンが重要かということが分かっていただけたかと思います。
リグニンの再利用が難しい理由
でも、紙にするときに除去されてしまう。
そして、使い道が見当たらない。
なぜか。
リグニンというのは、木材の種類によっても構造が異なっていたり、同じ種類の木材でも生息環境で構造が異なっていたり、なんなら、同じ1本の木材の中でも頭と根っこで構造が異なっていたりと、本当に多種多様なんです。
このように、多種多様な構造をもって、しかも科学的に安定しているリグニンを分解するのは、かなり困難。
だから、これまでは燃やされてきたんですね。
改質リグニンの発明
しかし、転機が訪れます。
そのきっかけとなったのが、日本固有種の木材である「スギ」です。
なんと、スギのリグニンは、他の木材と比べて比較的に均一な構造で出来ているんです。
そして、そのリグニンを簡単に抽出して、色んな優れた性能を付け加えることに成功します。
こうして取り出されたリグニンのことを「改質リグニン」と呼びます。
じゃあ、どうやって改質リグニンを取り出すのでしょう。
まず、スギの粉末にポリエチレングリコールという薬剤を混ぜて撹拌します。
こうしてできた溶液をろ過した後、phを酸性に調整し、改質リグニンと溶液を分離させます。
こうして、改質リグニンが取り出されるわけです。
改質リグニンの未来
改質リグニンがどんなところに使えるのか。
例えば、自動車の部材や、電子基板、タッチセンサー、3Dプリンターのフィラメントなど、さまざまな分野での活躍が期待されています。
そして、ものによっては、従来のプラスチック素材の1/3のコストで作ることができ、しかもその市場規模は、将来的に国内だけでも1,000億~2,000億円になるとも言われています。
さぁ、いかがでしょう。
これまで廃棄されてきたリグニンが、未来の産業を支える素材になりつつあります。
現役時代はチーム内の優秀なディフェンダーでありながら、引退後は社会・産業に貢献する。
「リグニン」、素晴らしい素材だと思いませんか。
今後も期待したいですね。
はい、という訳で今回は、日本発の注目の素材「改質リグニン」について解説してきました。いかがだったでしょうか。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
▼リグニンネットワークHP