闇なる白
あまりにも情報が氾濫し、そのうえそれに対する反応や解釈、主義主張までがどこからともなく飛び込んでくる。昔暗がりの中の私たちを照らした情報が、今や光度を上げて私たちに降り注ぎ瞼を超えて届いている。一息つくこともできなってしまった現代人は、情報、反応、解釈、主義主張の氾濫のせいでかえって何も見えなくなっている。光はかつてこの世を照らすはずだったが、今は闇の元凶でさえある。一見不思議なタイトルのこの曲の表すところは真っ直ぐだ。
「発言の主点を分かっていて曲げないで」とSNSではなんも珍しくもなくなった現象から始まり、「身を隠してしまいたい眠らせて永遠に」とこの世界を厭う歌い手の独白に至るまで、2021年どこかで見たことや聞いたことのある光景が続いてしまう。ひとつも救いもなく、別に悪意ある人もいやしないのだ。
私たちは闇なる白の中、眩み何も見えなくなった。スマホを覗き込んでは自分の頭の中に作られた世界を世界だと思って、時折去来する異星人と今日も戦うのである。
戦いに疲れた時、思い出し聞いて欲しい。