『稲盛和夫一日一言』 7/11(火)
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 7/11(火)は、「人生も経営も一人旅」です。
ポイント:人生というのは、ただ一人の旅。生まれるときも一人なら、死ぬときも一人で、誰もついてきてはくれない。突き詰めれば、経営もまた一人切り。だから、自分の力で歩いていくことが大事。
2011年発刊の『新版・実践経営問答 こうして会社を強くする』(稲盛和夫著 盛和塾事務局編 PHP研究所)の中で、社長業には何が大切か、という盛和塾生からの質問に対して、稲盛名誉会長は次のように回答されています。
社長業として何が大切か、何に気をつけるべきかとの質問です。あなたは先代のお父さんに代わって若くして社長になられたわけですが、先代のころからの従業員も人間的によい方ばかりで、問題なく受け入れてもらったとのことで何よりです。
給料を払い、トップである社長が命令すれば、部下は働いてはくれますが、本当に心服してこの社長についていこうという気にさせるには、社長であるあなたの器量、人格の立派さというものが必要になります。
なぜなら、お父さんが会長として経営トップに残っておられる間は問題ないかもしれませんが、もしお父さんが亡くなれば、やがてはあなたが社長として常に最終判断を下さなければならない立場になるからです。
会社にとって社長というのは、物事を決める最終の地位です。例えば、副社長、専務といった役職のときは、上に最終決裁者がいますから、「自分はこうしたいと思います」と言うだけで済むのですが、社長というのは最終のディシジョン・メイキングをする人ですから、その後ろには誰もいないわけです。
では、決断するときに何をもって決めるのかというと、自らの心の中にある座標軸が基準となります。ですから私は、社長業を全うする、つまり企業を治めるためには、判断・決断の基準となるしっかりとした心の座標軸を持っていることが一番大事だとお話ししたわけです。
私は創業のころ、「人間として何が正しいのか」「原理原則に基づいて経営する」ということを、心の座標軸として判断基準におきました。そして、ずっとその基準に照らして、常に自問自答を繰り返してきました。
社長というものは、最終判断者であるがゆえに大変孤独な存在です。常に自分の下した判断が正しかったのか、本当に良かったのかと不安になります。ですから、そうした孤独に耐えていくためにも、真の仲間づくりというか、腹を割って話せる友人を、今からつくっておくべきだと思います。(要約)
今日の一言には、「経営者は一人切りなのに、自分の力で歩くということをしないで、どうすればいいのかと、常に他の人に聞いているような生き方をしているようでは、人生も歩けないし、経営だってうまくいくはずがない」とあります。
この問答の中で名誉会長は、社長、経営者が気をつけるべきことについて、さらに次のようなポイントを示されています。
①公私の区別を峻厳(しゅんげん)と設けること
公私混同をしない/不公平があってはならない
②企業に対する無限大の責任感を持つこと
企業に命を吹き込めるのは社長自身しかいない
③人格と意志のすべてを企業に注入すること
④従業員の物心両面の幸福を追求するため、誰よりも努力する存在である
こと
⑤従業員から尊敬される存在であること(=心を高める必要がある)
長くサラリーマン生活を続けていると、なかなかそうした心境にはならないかもしれません。しかし、サラリーマンを辞めれば、自分の人生は自分自身の意思で歩いていくしかありません。
お釈迦様の言葉に次のようなものがあります。
『独生(どくしょう)・独死(どくし)・独去(どっこ)・独来(どくらい)』(人間はみな、独りで生まれ、独り死す、独り来たりて、独り去る)
「人間はみな生まれてから死ぬまで連れのない一人旅」
この言葉を噛みしめられるのも、生きていればこそではないでしょうか。