『稲盛和夫一日一言』 4月30日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 4月30日(火)は、「完全主義を習い性とする」です。
ポイント:完全主義を自分に課し、毎日を生きることはつらいこと。しかし、それも習い性になれば苦もなくできるようになる。
1989年発刊の『心を高める、経営を伸ばす ー素晴らしい人生をおくるためにー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、完全さを追求する姿勢を持つことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
私は、仕事ではパーフェクトを求めます。
ところが、事務屋の人たちは、九割方うまくいけば、「これでいいだろう」と、いい加減なところであきらめてしまいます。事務屋は、ミスがあっても消しゴムで消せると思っているからです。
また、九割方でもそれなりに効果はありますから、あまり完全さを追求することはありません。
しかし、化学実験では、99%うまくいったとしても、1%失敗すればふいになってしまうことがあります。技術屋で修羅場をくぐったことのある人ですと、このささいなミスが命取りになることを知っています。そのため、気難しく完全さを追求するといった姿勢が出てくるのです。
このような完全主義を自分に課し、毎日を生きるのはたいへんつらいことです。しかし、それも習い性になれば、苦もなくできるようになります。
それは、人工衛星が地球の引力に逆らって上昇していくにはたいへんなエネルギーを必要としますが、一旦軌道に乗ってしまえば、エネルギーを必要としないのと同じようなものです。
完全な仕事の追求を、日々の習慣としなければなりません。(要約)
また、2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)「完全主義を貫く」の項で、名誉会長は次のように説かれています。
よく90%うまくいくと、「これでいいだろう」と妥協してしまう人がいます。しかし、そのような人には、完璧な製品、いわゆる「手の切れるような製品づくり」は到底できません。
「間違ったら消しゴムで消せばよい」というような安易な考えが根底にある限り、本当の意味で自分も周囲も満足できる成果を得ることはできないのです。
営業にしろ製造にしろ、最後の1%の努力を怠ったがために、受注を失ったり不良を出したりすることがあります。
自分自身の努力をさらに実りあるものにするためにも、仕事では常にパーフェクトを求めなければなりません。
すべての仕事において、少しでもミスがあれば取り返しがつかないことになる、そう思うくらい、日々緊張して仕事をする。
京セラでは常にパーフェクトを狙います。ものづくりの精神から言えば、最高にいいものであっても、ちょっとした瑕疵(かし)や傷があるだけで、すべてがダメになってしまいます。だからこそ、完璧、パーフェクトでなければならないのです。
しかし実際は、完全主義と言っても、人間ですから完全なことなどできるわけはありません。それでも完全主義を貫いていこうとする意識を持って努力し続けることが大切なのです。(要約)
ここでは、常に完璧であろうという意識を持って努力を続けていると、それがいつの間にか習い性となり、無意識に動いても失敗することがなくなる。みんなでそうした高みの状態を目指して働いていこうではないか、ということが説かれているのだと思います。
最近では、電子機器やシステム全般が進化してきて、ひと昔前のように鉛筆と消しゴムを使って計算するような機会は格段に減ってきましたが、「間違いに気づいたら、消しゴムで消して書き直せばいい」といった発想は、現在でも誰しも普通に持っている感覚ではないでしょうか。
無意識に動いていれば、ある確率で必ずミスは発生します。その確率を少しでも小さくするために、至るところでシステムによる間違い防止やアラーム機構といった歯止め策が講じられ、日々整備・進化しています。
しかし、最後の最後はまだまだ一人一人の人間力にかかってきます。
少なくとも、一緒に仕事をするメンバー全員が、「完全主義」を習い性として獲得した状態になるまで意識のレベルを上げて日々働くことができれば、その集団から素晴らしい成果が生まれてくる確率は格段に高まっていくのではないでしょうか。