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『稲盛和夫一日一言』 12月3日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 12月3日(日)は、「経営12ヵ条 ③」です。

ポイント:「経営12カ条」は、人間として何が正しいかという最もベーシックで普遍的な判断基準に基づいたもの。

 引き続き、2022年発刊の『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著 日経BP/日本経済新聞出版)の第7~9条について、その要点を示します。

第7条 経営は強い意志で決まる
     経営には岩をもうがつ強い意志が必要

 経営には、こうありたいと思ったら、何が何でもその目標を達成しようとする強烈な意志が必要です。
 ところが多くの経営者は、目標を達成できそうもないとみると、すぐに言い訳を用意したり、目標を修正したり、なかには目標を撤回してしまったりする人がいます。そうした経営者の態度は、単に経営目標を達成できないだけでなく、従業員にも大きな影響を与えてしまいます。
 一方、同じ経営環境にありながら、見事に目標を達成してみせる経営者もいます。そのような強い意志で計画を遂行していく経営者でなければ、現在のような変化の激しい経済環境を乗り切っていくことは難しい、と私は考えています。経営者は、一旦「こうしたい」と決めたら強い意志でやり抜かなければならないのです。
(要約)

第8条 燃える闘魂
     経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要

 経営にも、格闘技などの世界で必要とされる「闘魂」が不可欠です。人がよすぎてケンカもしたことがないなどという人は、早い時期に社長の座をもっと闘争心のある人に譲るべきです。
 いくらきれいごとを言っても、やはり経営には、激しい企業間競争が伴います。たとえ従業員が数人しかいない小さな企業であっても、経営者は従業員を守るために凄まじい闘魂や闘志を持って企業間競争に臨むべきです。そうしないと勝負にもなりません。
 景気や経済変動に一喜一憂することなく、闘争心を持って誰にも負けない努力を続けていきさえすれば、必ず道は開けます。
「絶対に負けるものか」という気概、また、命を賭して従業員と企業を守るという責任感を持った人が経営者になれば、どんな時代にも、企業は必ず成長発展を遂げていくことができるはずです。
(要約)

第9条 勇気をもって事に当たる
     卑怯な振る舞いがあってはならない

 私は、企業経営にあたり、「人間として何が正しいのか」という原理原則に従って判断をしていけば誤りはないだろうと考え、それをただひたすら貫いてきました。
 ところが、さまざまなしがらみが生じ、そのために判断を誤ってしまうことが往々にしてあるのです。経営者に真の勇気が問われるのは、そのような局面です。
 原理原則で決断を下したことによって、脅迫を受けたり、災難が降りかかってくるようなことがあろうとも、またいかなる誹謗中傷を受けることがあろうとも、そうしたことをすべて受け入れ、会社のために最もよかれと思う判断を断固として下すことができる。それが真の勇気をもった経営者の姿です。
 ですから、原理原則に基づいた正しい判断を下すには「勇気」が不可欠なのです。経営者に勇気がなく、怖がり、逡巡しているさまは、すぐに幹部や従業員に伝染していきます。そうした経営者の情けない姿を知れば、従業員からの信頼はたちまちに失われてしまうでしょう。
 経営者は、魂の奥底から発する「勇気」をもって、正しい判断を下していかなければならないのです。
(要約)

 実際に、鏨(たがね)と鎚(つち)を手に岩盤をうがったという経験をお持ちの方はそう多くないかもしれませんが、大分県中津市本耶馬渓町曽木にある「青の洞門」には、次のような史実が残っています。

 旅の途中に耶馬渓へ立ち寄った禅海和尚は、川の桟橋から落ち命を落とす人々を見て心を痛め、享保20年(1735年)から自力で岩壁を掘り始めました。禅海和尚は托鉢勧進によって資金を集め、雇った石工たちとともに鑿と鎚だけで掘り続け、30年余り経った明和元年(1764)、全長342mの洞門を完成させました。(抜粋)

 「涓滴(けんてき)岩を穿(うが)つ」ということわざもあります。
 「一滴ずつの水でも、途切れる ことなく落ち続ければ、岩に穴を開けてしまう。 わずかな力でも 絶えず努力を続ければ、いつかは大きなことを成し遂げられる」ということのたとえとして用いられます。

 「経営12カ条」第7~9条では、全従業員のため、また世のため人のためという大義名分のある目的、意義を掲げたならば、勇気をもってあらゆる経営判断にあたり、「こうありたい」と思うところを、強い意志と激しい闘争心をもってやり抜くことが大切だと説かれているものと理解しています。


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