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『稲盛和夫一日一言』 3月20日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 3月20日(水)は、「高い目標を掲げ達成する」です。

ポイント:高い目標を掲げたとしても、眼前の今日一日を懸命に努めること。そうすることで、気がつけば思いも寄らないところまで到達していける。

 2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)の中で、「高い目標」を掲げ続けることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 京セラは、京都市中京区(なかぎょうく)西ノ京原町(にしのきょうはらまち)という京都のはずれにあった、ある配電盤メーカーの倉庫を間借りして、従業員28名で創業しました。

 当時、私はそのわずかな従業員を前に、「この西ノ京原町で一番の会社になろう。西ノ京原町で一番になったら、中京区で一番の会社を目指そう。中京区で一番になったら、次は京都で一番。京都で一番が実現したら、日本一になろう。日本一になったら、もちろん世界一だ」と、ことあるごとに語りかけていました。

 ただ実際には、「世界一」はおろか、町内で一番も、そう簡単なことではありませんでした。
 狭い町ではありましたが、当時、西ノ京原町には、立派な会社があったのです。最寄りの駅から京セラへ来る道すがらに、自動車の整備に使うスパナやレンチをつくっている、京都機械工具というメーカーがありました。
 そのころ、勃興しつつあった自動車産業に歩調を合わせ、朝から晩まで一日中、機械がうなりを立てているような、活気のある会社でした。

 創業したばかりで意気に燃えていたばかりか、努力を怠ればもう明日はないという危機感もありましたから、私たちは夜を日に継いで頑張っていました。
 しかし、ようやく夜中に仕事を終えて、その会社の前を通りかかると、いつも煌々(こうこう)と灯りがつき、多くの人が働いているのです。
 京セラよりはるかに大きな会社がそこまで働いていたわけですから、「西ノ京原町で一番」になることさえ、並みたいていなことではありませんでした。

 それでも私は、「西ノ京原町で一番の会社になろう」と従業員に語り続けました。さらには、「西ノ京原町で一番になったら、今度は中京区で一番の会社になろう」と、より大きな夢を語りつづけました。
 中京区には、当時すでに京都を代表するメーカーであり、近年もノーベル賞受賞者を出したことで知られる、島津製作所がありました。中京区で一番になるには、その島津製作所を抜かなければならないのです。

 もちろん、確かな目算などあったわけではありません。当時の京セラの規模や力量から言えば、まったく身のほど知らずのものでしかありません。
 しかし、たとえ身のほど知らずの大きな夢であっても、気の遠くなるほどの高い目標であっても、それをしっかりと胸に抱き、まずは眼前に掲げることが大切なのです。

 なぜなら、人間には、夢を本当のものにしてしまう、素晴らしい力があるからです。
 京都一、日本一の企業となると思い続けているうちに、いつのまにか自分自身でもそれが当たり前のように思えてきました。また、それは従業員にとっても同様で、いつのまにか、とてつもない目標を私と共有し、果てしのない努力を日々重ねてくれました。

 そのような日々が、私たち京セラを、創業当初、誰も予想だにできなかったところまで導いてくれたのです。
 高い目標とは、人間や組織に進歩を促してくれる、最良のエンジンなのです。
(要約)

 また、2022年発刊の『経営12ヵ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著 日経BP/日本経済新聞出版)「第7条 経営は強い意志で決まる」の項では、何が何でも目標を達成することの大切さについて、名誉会長は次のように説かれています。

 「経営とは、経営者の『意志』が表れたものである」と私は考えています。こうありたいと思ったら、何が何でもその目標を達成しようとする強烈な意志が必要です。

 経営者は、「こうしたい」と決めたら強い意志でやり抜かなければなりません。状況の変化に経営を合わせていては、いったん下方修正した目標でさえ、次にやってくる経済変動の波に翻弄され、さらに下方修正が必要になってしまいます。それでは投資家や従業員からの信頼を失ってしまいます。

 そのときに大切になるのが、従業員の共感を得るということです。従業員全員が「やろう」と思うものになっているかどうかが大切です。
 いわば、経営目標という「経営者の意志」を「全従業員の意志」に変えることが必要なのです。
(要約)

 創業当時を振り返って名誉会長は、「大きすぎる目標に向かってただ突っ走るのでは、まるでドン・キホーテみたいで必ず失敗する、とどこか醒めて構えていたところもあったものですから、私はとにかく、その日一日分だけを必死に走るよう心がけてきました」と、述べられています。

 「今日一日を一生懸命に生きていれば、明日は自然に見えてくる。今週一週間を一生懸命に生きれば、その次の一週間が見えてくる。今月を一生懸命に生きれば、来月が見えてくる。今年一年を一生懸命に生きれば、来年が見えてくる。だから、この瞬間に全精力を傾注して生きていく」

 高い目標を掲げ続ける一方、目の前の一瞬に魂を込めつつ生きていくことで、自らが定めた高い山の頂上に立つことも可能になっていくのではないでしょうか。


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