『稲盛和夫一日一言』 9月13日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 9月13日(水)は、「経営と人の心」です。
ポイント:企業というのは、人間の集まりをどうするかということ。だから、経営は人の心の動きを抜きにしては語れないし、人の心を無視して経営することもできない。
2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、「人の心と経営」について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
京セラは、資金も信用も実績もない小さな町工場から出発しました。頼れるものは、なけなしの技術と二十八人の信じ合える仲間だけでした。
会社の発展のために、一人一人が精一杯努力する、経営者も命をかけてみんなの信頼にこたえる、働く仲間のそのような心を信じ、私利私欲のためではない、社員のみんなが本当にこの会社で働いて良かったと思う、素晴らしい会社でありたいと考えてやってきたのが、京セラの経営です。
人の心はうつろいやすく変わりやすいものと言われていますが、また同時にこれほど強固なものもないのです。その強い心のつながりをベースにしてきたからこそ、今日までの京セラの発展があるのです。
「人の心をベースとして経営する」
これは、頼りになるものは「人の心」それしかない。従業員はたった二十八人しかいないけれども、その二十八人が心を一つにして働く以外に自分がとるべき道はない、そう思って貫いてきたものです。
一人一人思うことが違ったり、不平不満があったりするような状態ではどうしようもない。互いに心から信じ合える仲間となり、信じ合う心を持った集団を作らなけらばならない。もしそのような集団となれたなら、我々はどんな苦労にも耐えていけるだろう。
そう考えたからこそ、私は、親子や兄弟みたいに何でも言えて、お互いに理解し合えるような関係を築くために、心血を注いで従業員と話をしてきたのです。(要約)
2022年発刊の『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所)の中で、これまでの京セラの企業としてのあり方を振り返って、名誉会長は次のように述べられています。
考えてみますと、ベンチャー・ビジネスとしての形態で、いわゆる技術先行型の企業としてスタートを切り、今日、世間では一応、素晴らしい発展を遂げたという評価をいただいています。
それは、技術先行型の企業というイメージよりも、人の心をベースとした経営、つまり信じ合られる者同士の集まりという側面を大切にした経営を行なってきたからであり、そのことが技術先行型の行き方とあいまって、今日の発展につながったのではないかと思っています。
経営者には、素晴らしい心根を持つとともに、私心をなくし、皆のために尽くすという犠牲的な精神が絶対に必要だ、と私は思っています。(要約)
「人の心をベースとした経営」とは、言い換えれば、どのようにすれば、強固で信頼のできる心の結びつきというものを、企業内において実現できるかということに焦点を絞って、経営を進めるということです。
人心の荒廃が集団の崩壊をもたらした、という事例は数えきれないほど存在しています。
もっと身近な人間関係をみても、残念なことに、自分が嫌いな人は相手からも嫌われてしまうことが多いものです。 なぜなら「自分が嫌いだ」という自分の中での思い、念波のようなものが無意識のうちに相手にも伝わってしまうからではないでしょうか。
もう一歩突っ込んで考えると、自分で自分を好きになれない人は、いつまでたっても自分が嫌いなままで、周囲に良好な念波を発信できません。
私心をなくし、周囲の人が心を寄せてくれる存在になっていくためにも、まずは「自分で自分のことを好きになる」ことから始めてみる必要がありそうです。