『稲盛和夫一日一言』 9月3日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 9月3日(日)は、「企業が泣いている」です。
ポイント:貸借対照表を見て、内部留保が少なく、自分の会社がやせ衰えているのに気づかない経営者がいる。利益が出ていることでよしとせず、会社がひもじい思いをしないようにしていくのが経営者の責務。
2015年発刊の『「稲盛和夫の実学」を語る』(稲盛和夫著 京セラ経営研究部・経理部編/非売品)の中で、自分の経営の原点と会計について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
支援者の好意によって京セラを設立していただいたとき、私はまだ27歳の技術者で、経営の経験はなく、会計についても何も知りませんでした。
初めて貸借対照表を見たときなど、「お金が二手に分かれて、表の両側にあるんだなあ」と思ったほどでした。
貸借対照表は、会社の実態をお金の面から表したものです。会社は現金や預金、土地、建物などの資産を持っています。その内容を示すものが、表左側の「資産の部」です。そこには、「流動資産」「固定資産」などの項目があり、会社の資産の具体的な特徴を示す数値が示されています。
一方、左側の「資産の部」に示されているお金がどこから調達されてきたのかを示すものが、表右側の「負債の部」「純資産の部」です。「負債の部」には流動負債と固定負債があります。また、「純資産の部」にある資本金は、経営的な立場からみれば負債のような意味合いのものです。
例えば、会社がお金の借入ばかりで成り立っている状態は、骨と皮だけでガリガリにやせた人のような状態です。経営者は、会社の経営状態をあたかも自分の体のように感じられなければいけません。
理想的なのは、脂肪をそぎ落とし、筋肉で引き締まった健康体です。自己資本比率を増やしていくことによって、体をより健康な状態にしていかなければなりません。
ところが、決算書を見ても会社の異常な状態に気づかない人が非常に多いのです。また、決算書の数字が何を意味するのかさえも分かっていない人がいます。
貸借対照表と損益計算書の理解を深め、自己資本比率が下がってやせ細った会社の状態が分かるようにならなければ、一人前の経営者とは言えないのです。(要約)
貸借対照表とは、「企業の健康診断書」とも呼ばれ、企業のある一時点における財務状態を表したものです。
表の左側にある「①資産の部」と左側にある「②負債の部」および「③純資産の部」の金額がバランスする(①=②+③)ことから、バランスシート(Balance Sheet 略称:BS)と呼ばれています。
ちなみに、「内部留保」とは、企業が長年積み上げた利益の累積額のことで、貸借対照表の項目では、右下の「純資産の部」にある株主資本の中の「利益剰余金」に相当します。法人税を支払い、企業の所有者である株主に配当した後の「もうけ」が蓄積されたもので、一般に「内部留保」が大きいほど自己資本比率は高まり、より健全な経営状態が確保されます。
また京セラでは、経営における重要な原則として、「売上を極大に、経費を極小に(入るを量って、出ずるを制する)という考え方が徹底されています。そこには、名誉会長の次のような思いが反映されています。
経営とは非常にシンプルなもので、その基本はいかにして売上を大きくし、いかにして使う経費を小さくするかということに尽きます。利益とはその差であって、結果として出てくるものに過ぎません。(要約)
「採算はトップの意志で決まる」とも言われています。なぜなら、採算は良くも悪くもすべてトップ、リーダーの意志のあらわれだからです。
日々の採算が成り行きに流されることなく、また決算書の数字をしっかりと理解した上で次のアクションを起こしていけるよう、日々精進あるのみです!