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『稲盛和夫一日一言』 6/5(月)

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6/5(月)は、「いい仕事をする条件 ①」です。

ポイント:いい仕事をするために必要不可欠なこと、それは「細部にまで注意を払うこと」。仕事の本質は細部にある。いい仕事は、細部をおろそかにしない姿勢からこそ生まれる。

 2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)5章 「完璧主義」で働く ー 仕事で一番大事なことは「細部にある」ー という項の中で、稲盛名誉会長はご自身の若いころの経験について、次のように述べられています。

 完璧な仕事をするために、必要不可欠なことがあります。私がそのことを知ったのは、最初に就職した会社でファインセラミックスの研究開発を始めたばかりのころでした。

 当時、ファインセラミックスの原料粉末を混合するには、ポットミルと呼ばれる円筒形をした陶磁器製の器具を使っていました。中にはボール状の石がたくさん入っていて、ミルを回転させると中の石が動いて原料粉末が混合粉砕されます。

 ある日のこと、先輩の技術者が、洗い場に座り込んで、ポットミルと粉砕用の石を、一生懸命に時間をかけてタワシで洗っているのを見かけました。
 彼は、いつも真面目に仕事をこなす、寡黙で目立たない人でしたが、その日も地味な作業を黙々とこなしていました。

 「サッサと洗ってしまえばいいものを、なんと要領の悪い」私は内心でそうつぶやき、その場を立ち去りかけて、ふと足を止めました。
 よく見ると、先輩は粉砕用の石をヘラを使ってきれいにしていたのです。石の中にはたまに欠けているものがあって、その欠けたくぼみに前の実験で使った原料の粉がこびりついたままになっていることがあります。
 先輩は、それを一つひとつヘラを使って丹念にそぎ落とし、さらにタワシで丁寧に洗っていました。そればかりか、腰から下げたタオルで、洗った石を一つひとつ、なめるように拭いていたのです。

 それを見た瞬間、私は頭を殴られたような衝撃を受けました。
 ファインセラミックスはきわめて繊細な性質を持っているため、ポットミルの中に前の実験で使った原料の一部が残ったまま次の実験に使うと、それが「不純物」として作用し、目的とした特性が得られません。そこで実験が終わるたび、どうしても器具を水洗いするという作業が必要だったのです。

 当時の私は、そうした洗浄作業を、研究開発とは直接関係のない雑作業だと考え、手早く要領よく済ませていました。そんな雑なことをやっているから、不純物が混入してしまって、思い通りの実験結果が出ていなかったのだということに思い至った私は、恥じ入るとともに、大いに反省をしました。
 
 いい仕事をするために必要不可欠なこと、先輩にあって自分にないものを、眼前に突きつけられたような思いがしたからです。
 そのとき私は、仕事に取り組むための根幹となる考え方、いわば働く基本姿勢といったものを、一人の先輩から無言のうちに教えてもらっていたように思います。
(要約)

 今日の一言には、「雑用のような単純作業でも、いや単純作業であるからこそ、丹念に丁寧にこなす必要があります。『神は細部に宿りたまう』というドイツの格言があるように、仕事の本質は細部にあります」とあります。

 私も京セラに入社してすぐに、セラミックス材料の研究開発という業務を担当することになったため、このエピソードは私の実体験そのものです。
 原材料の計量→調合→混合・粉砕→乾燥→成形→焼成→評価(特性評価)という一連の工程を経て初めて実験結果が得られるのですが、洗浄というのは、次の実験に向けての下準備に過ぎません。
 しかし、その下準備をいい加減に済ませてしまえば、次の実験で目的とした結果など得られるはずがないのです。

 地味であっても細部をおそろかにしない。そうした姿勢からいい仕事が生まれてくるのではないでしょうか。


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