『稲盛和夫一日一言』 10月9日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月9日(月)は、「成長する企業」です。
ポイント:企業が伸びていくというのは、トップの人間としての器量が伸びていくということ。それと同時に、従業員も成長していかなければ、企業規模は拡大していかない。
2011年発刊の『新版・実践経営問答 こうして会社を強くする』(稲盛和夫著 盛和塾事務局編 PHP研究所)の中で、盛和塾生からトップの器、企業の治め方について助言を求められた際、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
よく「中小企業と吹き出物は大きくなれば潰れる」といいますが、それはなぜかというと、企業の計数的、財務的な管理がしっかりできていないからです。
では、収益性が高まり、計数的な管理ができるようになれば、それだけで会社が大きくなるかといえば、それは違います。そこに、トップの器という問題が出てきます。
あなたは「経営者には企業規模に合った器量が必要だといわれるが、そもそも自分にそんな器量があるのだろうか」という悩みを持っておられる。そのこと自体は核心をついたものですから、あなたの会社は今後ともさらに成長されていくでしょう。なぜなら、核心をついた悩みは成長の始まりだからです。
会社というものは、トップの器以上には大きくなりません。したがって、人を治めるためには、経理・会計を治めると同時に、あなた自身の魅力、すなわち、人間性、人格をもっと高めていかなければなりません。
では、人格でもって部下を引きつける経営者とはどういう人物なのでしょうか。私は、「仁」「義」「誠実」「公平・公正」「勇気」という五つの言葉で代表することのできる人だと考えています。
つまり、義理人情に厚く、影日向(ひなた)なく努力する人。そして、人事に際しては私情を挟まず、事にあたっては決して卑怯な振る舞いをしない人です。しかし、よほどの修行でもしないかぎり、そのような人格が一朝一夕で身につくはずもありません。
そこで私は、「人のために尽くす」ということを経営の基本におき、人格を磨かれたら良いと思います。たった一回しかない人生です。「どういうふうに生きようが同じ一生なら、もっと多くの人から喜ばれるような経営をしてみよう」と思い、経営するのです。
「利他」の精神を心に抱いて経営にあたっていかれると良いと思います。(要約)
また、2022年発刊の『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所)の「みんなで立派な会社をつくる」の項で、名誉会長は次のように述べられています。
この会社を一緒に立派にし、その中で安心して生活できるようにしよう。そうしたコンセンサスをまず持ったうえで、みんなで切磋琢磨して、立派な会社をつくる。誰もが「私たちの会社だ」と思って懸命に働く。そんな雰囲気を職場につくらなければなりません。
そうした根幹となるコンセンサスが全従業員に伝わっていくと、みんなが自分の会社を自分でよくしていこうと考えるようになっていきます。
経営者が自らの人間性を高めていくと同時に、会社の経営理念、経営の目的をはっきり示していくことも大事なことなのです。(要約)
企業を大きく成長発展させていくには、まずは従業員をして経営者に惚れさせること、経営者が仕事の意義を説くこと。さらにはビジョンを高く掲げ、ミッションを確立すること。
そして、経営者が自身の心を高めていくと同時に、従業員に対してもフィロソフィを説き続けることで、従業員に共鳴、賛同してもらい、モチベーションを高めていくということを継続するしかありません。
事業規模の大小によらず、一考に値する内容ではないでしょうか。