『稲盛和夫一日一言』 9月30日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 9月30日(土)は、「事業の神髄」です。
ポイント:相手を助けてあげる、施しをしてあげることによって、事業は成功していく。事業の神髄はそこにある。利他の心がなければ真の事業の成功はない。
2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、「相手のためになるかどうかを考える」として、利他の心を持つことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
人間というものは、自分にとって都合がいいのか悪いのか、儲かるのか儲からないのかというふうに、自分を中心に据えて物事を判断しがちです。
ところが、このような判断だと、自分自身にとっては都合がいいかもしれませんが、周囲の人にとっては迷惑なことかもしれません。
相手が何も知らないのをいいことに、あるものを相場よりも高い値段で売りつけようとする人がいたとします。その値段で買えば必ず損をするだろうということが売り手には見えているのに、それでも「本人が買うと言っているのだからいいではないか」と売ってしまう。
本能だけで物事を考えた場合、このように周辺の人に損をさせたり、後々大きな問題を引き起こしてしまう恐れがあるわけです。
逆に、利他の心で判断をすると、相手のことを第一に考えるわけですから、「自分は儲かるかもしれないが、相手は必ず困ることになるだろう」と思いとどまり、相手に対して「こんなに高い値段で買ってはいけません。私がリーズナブルな値段でお売りします」と言うに違いありません。これは一見損をしたように見えますけれども、後で必ず双方にとって良い結果をもたらすことになるはずです。
私は、「自分自身を犠牲にしてでも、相手のためになることをしようと思う心、それが利他の心だ」と言っていますが、この利他の心は、何も経営だけに当てはまることではなく、あらゆる局面で大切な判断基準となるものです。
残念なことに、「自分だけ良ければいい」という本能だけに満たされた人が、巷(ちまた)にはうごめいています。
誰もがこの世に生まれ出てきて、一回しかない貴重な人生を必死で生きています。だからこそ、森羅万象あらゆるものが共生、共存していかなければなりません。自分も生き、相手も生かす。それが利他なのです。(要約)
大切なのは、「相手にとって何が本当にいいことなのかを考える」ことです。名誉会長は、「利他の心で見れば、物事の良し悪しがよく分かる。例えば、人が持ち込んでくるいかがわしい話も、その裏側までよく見える」と言われています。
そして、「自分だけ良ければいいという考え方で商売を行うのではなく、周囲にとってそれはどうなのか。取引をする相手にとってそれはどうなのか、というところまで考え、それがみんなにとっていいことなのだ、という結論に達したときに、商売を成立させるように心がけなさい」と説かれています。
「近代日本資本主義の父」「実業の父」と呼ばれる実業家 渋沢栄一は、著書『論語と算盤』の中で、次のように述べられています。
「事柄に対し如何にせば道理にかなうかをまず考え、しかして、その道理にかなったやり方をすれば国家社会の利益となるかを考え、さらにかくすれば自己の為にもなるかと考える。
そう考えてみた時、もしそれが自己のためにはならぬが、道理にもかない、国家社会をも利益するということなら、余は断然自己を捨てて、道理のある所に従うつもりである」
この言葉には、どのような判断基準で物事を判断すべきなのか、その指針が示されているように思います。
「利他の心を判断基準にする」
より良い仕事をする、より良い人生を歩んでいくためにも、日々の判断の基軸としていくべき大事な考え方ではないでしょうか。