『稲盛和夫一日一言』 11月12日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 11月12日(日)は、「強く一筋に思う」です。
ポイント:強烈な願望を描き、心からその実現を信じることが、困難な状況を打開し、物事を成就させていく。
1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)の「できると思い込む」という項で、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
1960年代半ば、私は日本で最も尊敬されているビジネスマンの一人である故松下幸之助氏の講演を聞く機会がありました。テーマは「ダム式経営」。
氏は聴衆に向かって、「ダムがいつも一定の水量で満たされているように、われわれも蓄えを持って経営しなければならない」と話されました。
質疑応答の際、聴衆の一人が質問しました。松下氏の考え方の健全さを褒めたたえたあとで、自分には余分な資金がないと言いました。そして「どうやってダム(蓄え)を作れば良いのでしょうか」と尋ねたのです。
松下氏は、「自分もその答えは知らない」と言い、その後「しかし、まず蓄えが要ると思わなあきまへんな」と続けられました。
聴衆はそれでは答えになっていないと笑いましたが、私はその言葉に強い感銘を受けたのです。
私が学んだことは、何か事を起こすときは、まず思い込まなければならないということです。「これが理想的であることはわかっているけれども、現実にはそんなことは不可能だ」と自分に言い続けていたら、何も起こせはしないでしょう。なぜなら、人は自分が信じてもいないことに努力することはできないからです。
強烈な願望を描き、心からその実現を信じることが、困難な状況を打開し、物事を成就させるのです。(要約)
今日の一言には、「理想に対して、そうは思うが、現実には難しいという気持ちが心の中にあっては、物事の成就が妨げられる」とあります。
「強く一筋に思う」ということで、今でも強烈に印象に残っている言葉があります。それは、私が京都セラミツク(現京セラ)に入社した翌年の1982年、全社経営スローガンとして掲げられた次のような一文です。
新しき計画の成就は只不屈不撓の一心にあり
さらばひたむきに只想え 気高く強く一筋に (中村天風)
1981年3月末決算で、念願の1,000億円企業の仲間入りを実現した京都セラミツクは、翌82年10月1日、関連会社4社合併を機に、社名を「京セラ株式会社」と改めます。それに先立って、年初の経営方針発表会で名誉会長が示されたスローガンが、この言葉でした。
目標が達成できないのではないか、というような疑念を払拭し、こうありたいという願望を心の中に抱き続ける。それも「気高く強く一筋に」想い続けること。そうすれば、目標は必ず達成できる!
それぞれの持ち場立場で、誰もが自らが率先して挑戦していかなければならない命題、課題を抱えています。そうであるならば、一人ひとりがその成就、達成に向けて、ただひたすらに「気高く強く一筋に」想い続けることで積極果敢に挑戦していこうではないか、という名誉会長からの強烈なメッセージでした。
京セラフィロソフィに「渦の中心になれ」という項があります。一部紹介します。
自分一人では大した仕事はできません。上司、部下、同僚等、周囲にいる人たちと協力していくのが仕事です。
会社のなかには、あちらこちらに仕事の渦が巻いています。その周囲に漫然と漂っていると、たちまちどこかの渦に巻き込まれてしまいます。自分が渦の中心にいて、周囲を巻き込んでいくような仕事の取り組み方をしなければ、仕事の喜びも、醍醐味も知ることはできないでしょう。
自ら渦を巻き起こせるような、主体的で積極的な人材であるかどうか、それによって、仕事の成果は言うに及ばず、人生の成果も左右させると私は思っています。(要約)
自分一人では大した仕事はできないかもしれませんが、渦の中心になって周囲の人たちを巻き込み、より大きな渦となって世のため人のために貢献できるまでのものをつくりあげていく。そのためには「気高く強く一筋に」想い続けることが不可欠なのではないでしょうか。