『稲盛和夫一日一言』 5月31日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5月31日(金)は、「人生のバイブル」です。
ポイント:「善きことを思い、善きことをするときには、天地が味方する」ということを、人生のバイブルとして歩む。
2023年8月配信の『致知』独占取材記事「稲盛和夫が即答した人生で一番大事なもの」(致知出版社)において、利他の心を持って生きることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように話されています。
2017年11月27日、京都市内にある稲盛財団の一室で待機していると、約束の時間より10分早く稲盛和夫さんは姿を現しました。与えられた取材時間は1時間。ご体調があまり芳しくないとの理由で、広報の方から事前にそう伝えられていました。
ところが、どうでしょう。本誌編集長が質問を発するごとに、どんどん稲盛さんの表情がほぐれ、生気が漲(みなぎ)り、時には満面の笑みを、時には真剣に質問の答えを考えられる仕草を見せられ、実際には1時間15分に及ぶ白熱の取材となったのです。広報の方が「取材でこんなに笑顔の稲盛を見たのは久しぶりです」と驚嘆するほどでした。
そこで語られた内容は、京都賞を創設した理由、京都賞受賞者の共通点に始まり、松風工業での修業時代の日々、そこでの転機と心掛け、京セラ創業のドラマ、経営理念に込めた思い、さらには、働くことの大切さ、盛和塾で訴えかけていること、KDDI創業のいきさつと成功秘話、JALを奇跡の再生に導いた鍵など、稲盛さんの生き方、働き方、考え方のエッセンスをまさに凝縮したもの。
今年86歳(取材当時)を迎え、「新・経営の神様」の異名を取る稲盛さんから、いま私たちが学ぶべきこととは何でしょうか。
稲盛さんは京セラの創業者であり、経営破綻に陥った日本航空を僅か2年8か月で再上場に導いた名経営者です。
その稲盛さんが新卒で入社した会社はスト続きで給料は遅配。嫌気がさした稲盛さんは自衛隊に転職しようとしますが、実兄の反対を受け、そのまま会社に止まりました。鬱々とした日が続きました。会社から寮への帰り道、「故郷」を歌うと思わず涙がこぼれたといいます。
こぼれた涙を拭って、こんな生活をしていても仕方がない、と思い直します。自分は素晴らしい会社に勤めているのだ、素晴らしい仕事をしているのだ、と思うことにしたのです。無理矢理そう思い込み、仕事に励みました。
すると不思議なもので、あれほど嫌だった会社が好きになり、仕事が面白くなってくるではありませんか。通勤の時間が惜しくなり、布団や鍋釜を工場に持ち込み、寝泊まりして仕事に打ち込むようになります。仕事が楽しくてならなくなったのです。そのうちに一つの部署のリーダーを任され、赤字続きの会社で唯一黒字を出す部門にまで成長させました。
新卒社員の3割が3年以内に離職すると言われて久しいのですが、稲盛さんは当時のご自身の体験を踏まえて、こう言います。
「いまの若い人たちの中に、自分が望んでいる道を選ぶことができなかった人がいたとしても、いまある目の前の仕事に脇目も振らず、全身全霊を懸けることによって、必ずや新しい世界が展開していくことを理解してほしいですね。ですから、不平不満を漏らさず、いま自分がやらなければならない仕事に一生懸命打ち込んでいただきたい。それが人生を輝かしいものにしていく唯一の方法と言っても過言ではありません」
これこそまさに稲盛流成功哲学の要諦と言えるでしょう。
稲盛さんが最後に語られた言葉もまた忘れられません。
取材の締め括りに、「今日まで86年間歩んでこられて、人生で一番大事なものは何だと感じられていますか?」と質問をしたところ、稲盛さんは間を置かず即座に、なおかつ熱を込めて、次のように答えられました。
「やっぱり人生で一番大事なものというのは、1つは、どんな環境にあろうとも真面目に一生懸命生きること。それともう1つは、人間は常に〝自分がよくなりたい〟という思いを本能として持っていますけれども、やはり利他の心、皆を幸せにしてあげたいということを強く自分に意識して、それを心の中に描いて生きていくことです」
稲盛氏の多岐にわたる活動に通底しているもの。それは「精進」すること、そして「利他の心」を持ってことに臨むこと。私たちもこの2つの条件を満たすべく、自己研鑽に努めていきたいものです。(要約)
2011年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅡ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究部編/非売品)「善き思いは、よき結果をもたらす」の項で、名誉会長は次のように説かれています。
人にはそれぞれ持って生まれた運命というものがありますが、善き思いを重ねていけば、私たちは定められた運命を超えて、素晴らしい人生をおくることができるのです。
善き思いとは、次のようなものです。真面目で、正直で、謙虚で、努力家であること。常に前向きで、建設的であること。明るく、肯定的であり、協調性があること。善意に満ち、優しく、思いやりがあること。利己的ではなく、利他的であること。強欲ではなく、足るを知ること。感謝の心を持っていること。
こうした善き思いで事に取り組めば、あらゆるものを生成発展させ、よい方向へ押し進めようとする「宇宙の意志」と調和して、必然的に仕事も人生もうまくいくのです。(要約)
京セラフィロソフィの実践には、「人間として何が正しいか」を判断の基軸とすることが一貫して求められます。
それは、本日のタイトルである「人生のバイブル」と言ってもいいものではないかと、私は思っています。
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