『稲盛和夫一日一言』 6月28日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月28日(金)は、「真のリーダーとは」です。
ポイント:真のリーダーとは、人生において、ひたむきに仕事に打ち込み、その中で人格を高め続けていけるような人。
2013年発刊の『稲盛和夫 経営問答集 第六巻 心を高める 経営哲学編』(稲盛和夫著 盛和塾事務局・京セラ経営研究部編)の中で、「ベクトルをそろえ、強い組織をつくるためには」という塾生からの質問に対して、稲盛名誉会長は次のように回答されています。
私は皆さんに、よく「誰にも負けない努力をする」と言っています。それは、従業員に言いなさいと言っているのではなく、経営者の皆さん、または役員や部長さんなど、いわゆる企業の中で経営を担っておられる経営陣の人たちに対して言っているのです。
それが、従業員に対して「誰にも負けない努力をしなさい」と要求してはいないでしょうか。経営陣は経営のプロですから、無制限一本勝負で頑張らなければならないのは当然のことなのですが、一般社員は労働基準法に定められた範囲内で働かなければなりませんから、経営陣と同じように働きなさいというのは、やはり酷です。
誰にも負けない努力とは経営陣に要求されるべきものであって、それを従業員全員に求めるのは無理があります。しかし、「社長はじめ経営陣があれだけ頑張ってくれているのだから、少しぐらい手伝ってあげよう」という気持ちが従業員から出てくる。つまり、従業員から自然と「してあげよう」というような雰囲気が生まれてくるようになってくれば、全社のベクトルをそろえることにつながっていくのではないでしょうか。(要約)
今日の一言には、「ひたむきに仕事に打ち込み、その中で人格を高め続けていけるような人間であれば、リーダーとして権力を委ねられた後も、堕落(だらく)することも傲慢(ごうまん)になることもなく、集団のために自らを犠牲にして懸命に働き続けてくれるはずです」とあります。
同著に、「社長の五つの要諦」を説かれた内容が掲載されています。
1.判断・決断の基準を心の中に持つ
2.無限大の責任を持つ
3.自らの人格と意志を会社に注入する
4.従業員のために誰よりも働く
5.素晴らしい人格を身につける
名誉会長は、「社長に求められることはたくさんあるでしょうが、およそこのようなことを守っていただければ、社長としては合格ではなかろうかと思います」と締めくくられています。
「社長」のところを「リーダー」と置き換えれば、それがそのまま「真のリーダー」に求められる要件になるのではなかろうかと思います。
京セラ在籍40年の間、自身も何度となくリーダーを任され、また周囲のたくさんのリーダーたちと一緒に働いてきましたが、京セラでは人格が高まったからリーダーになるというのが、もっとも順当なケースだったように感じてきました。
先輩や同僚、また後輩たちが、さまざまな形で組織のリーダーを任され、さらに人間性を磨いていくのを間近で見るにつけ、「あの人なら当然だな」と得心する反面、「なぜ、そのリーダーが自分ではなかったのか?」と悶々とした感情を持ったことも一度や二度ではありませんでした。
人格が高まったからリーダーになれるのか、リーダーになったから人格が高まるのか、それは本人の自覚次第ではないでしょうか。
リーダーを任されたことで、「自分は何でもできるんだ」と自身の能力を過大評価し、高圧的な言動が目につくようになってしまうようでは、とてもリーダー適格者とは言えません。
目の前の課題に対して、周囲の人たちを巻き込みながら懸命にその解決に取り組んでいるうちに自然と人格が高まり、さらに大きな課題解決に向けて新たなリーダーを任される。それを繰り返すことによってさらに人格が高まっていく。それが真っ当な仕事への取組み方ではないかと思います。
個人的には「自己犠牲」という言葉はあまり好きではありませんが、「自分のため」と同じくらい、「集団・組織のため」に一生懸命になれるのかどうか。そこらあたりに「真のリーダー」たる人物かどうかの境目があるのではないでしょうか。