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『稲盛和夫一日一言』 10月7日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月7日(土)は、「相棒」です。

ポイント:自分一人で経営していくのは難しい。やはり相棒というものが必要。

 2022年発刊の『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所)の中で、「パートナーとして苦楽を共にする」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 会社を始めたとき、自分一人ではどうにもできませんから、私は創業の同志七人と一緒に力を合わせていこうとしました。そして、「俺が、俺が」と言うことだけはやめようと、まず決めました。
 ふり返ってみて、もし私の実家が資産家で、資金を出してもらっていれば、おそらく今日の成功はありませんでした。というのは、そういう状況下ではどうしても「俺が、俺が」という気持ちが先行してしまい、他の七人が素直に協力してくれるとは思えなかったからです。

 実際には、ある方の出資してもらって仕事の場をつくってもらったわけですが、私は一緒に働く人たちに対して、「今後、お互いのことをパートナー、同志として一緒に仕事をし、苦楽を共にしよう」と話しました。

 しかし、いくら「パートナーだ」「同志だ」「運命共同体だ」と言っても、それが本当に心の底から出てくる言葉でなければ、みんながそう思ってはくれなかったでしょうが、私の場合は、まさに言葉通りだったのです。

 そして、「我々は一緒に会社を始めた仲間として、取ったものは分けて食べることにする。本能で動いてしまっては、すぐに自分のものにしてしまおうとするから、大脳で『これは分けて食べるんだ』と考えるようにしよう。そうすると、一瞬のためらいが生じ、取ろうとした手が止まるようになるはずだ」と続けました。

 つまり、どんな些細なものでも、一緒に会社を始めたパートナー、同志で分けることを前提とする。私の場合、経営の方法論など知らなかったがために、自然とそのような形になりました。

 世の中には、従業員に一生懸命働いてもらうための方法論は無数にあって、聞けば聞くほど迷うものです。しかしそうした問題の前に、まずは自分の会社で働く人々を、自分の家族と同じように大事にしようと心の底から思わなければ、従業員は決して懸命には働いてくれないと思います。(要約)

 今日の一言には、「『人』という字の成り立ちで分かるように、人間は一人では立っていない」とあります。経営もまたしかりということです。

 「相棒」には、「籠(かご)など、二人で物を担(かつ)ぐときの相手のこと。一緒に事をするときの相手、仲間」といった意味があります。

 京セラでは、「会社経営とは一部の経営トップのみで行うものではなく、全社員が関わって行うものだ」という名誉会長の考えが貫かれています。
 組織を「アメーバ」と呼ばれる独立採算で運営する小集団に分け、小集団ごとにリーダーを任命して、全体が共同経営のような形で会社を経営する。
 こうしたアメーバ経営は、社内に経営者意識を持ったリーダーを育成すると同時に、全従業員が経営に参画する「全員参加経営」の実現にも寄与しています。

 各アメーバリーダーは、自分のところの構成メンバーを、同じ目標を共有する「同志」と捉えつつ、同時にその中の誰にも負けない努力でチームを引っ張っていく。
 京セラ社内では、「相棒」という言葉が頻繁に使われることはありませんが、「パートナーシップを重視する」というフィロソフィに代表されるように、一般にありがちな権力や権威に基づく上下関係ではなく、志を同じくした仲間が心を一つにして会社を運営するということが重要視されています。

 「社員は所詮、使い捨ての駒」
 そうした会社に、帰属意識が生まれることは決してないでしょう。


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