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『稲盛和夫一日一言』5/13(土)

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5/13(土)は、「活路を開く」です。

ポイント:豊かな時代にあって、新たな活路を開くには、自らを極限にまで追い込める強さと勇気を持たなければならない。

 2008年発刊の『「成功」と「失敗」の法則』(稲盛和夫著 致知出版社)の中で、人生における成長の分岐点について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 私は「試練」を経験することが、人間を大きく成長させてくれるチャンスになると考えています。実際、偉大なことを成し遂げた人で、試練に遭ったことがないという人はいません。

 明治維新の功労者である西郷隆盛も、人生において様々な試練に遭遇した一人です。例えば、若いときに親友であった僧月照(げっしょう)とともに、鹿児島の錦江湾(きんこうわん)に身を投げ、自分だけ蘇生するという経験をしています。親友を逝(い)かせてしまった西郷の心痛はいかばかりであったでしょう。

 その後も、遠島(えんとう)という不遇を二度も経験しています。特に二度目は、島津久光の逆鱗に触れ、鹿児島から遠く離れた沖永良部(おきのえらぶ)島に流され、風雨が直接吹き込む狭い牢獄に閉じ込められるという悲惨な目に遭っています。

 しかし、そのような逆境の中でも、西郷は東洋古典の耽読(たんどく)などを通じて、自分を高める努力を怠りませんでした。苦難に耐え、むしろ苦労を糧(かて)として、人格を高める努力をひたむきに続けたのです。

 その後、許されて島を出た西郷は、高潔な人格と識見を備えた人物として人々の信望を集め、やがて明治維新の立役者となっていきます。

 この西郷の人生は、「試練」に遭遇したときに、どのように対処するかということが、人生においていかに大切なのかということをよく表しています。

 苦難に直面したとき、打ち負かされて夢をあきらめてしまったり、いい加減なところで妥協してしまったりするのか、それとも西郷のように、苦労を苦労とも思わず、ひたむきに努力を重ねることができるのか、そこに人間的に成長できるかどうかの分岐点があるのではないでしょうか。(要約)

 私たちの人生は、大小さまざまな苦難や成功の連続であり、そのいずれもが「試練」といえます。そして、それら個々の「試練」をどのように受けとめて行動していくのかによって、人生は大きく変化していきます。

 「試練」に遭遇しても、決して自らを見失うことなく、真正面から立ち向かってさらに精進を重ねる。日々たゆまぬ研鑚を積み重ねることによって、一回りも二回りも大きく成長していくことができます。

 私にも苦い経験があります。仕事に行き詰まり、その苦しさに耐え切れなくなり、どうでもいいような仕事を優先してみたり、会社をさぼって一日中ぼーっとして過ごしたりした時期がありました。
 今でこそ冷静に振り返ることができますが、当時は目の前の「試練」に真正面から向き合うことができず、その苦しさから逃げ出したい一心だったのだと思います。
 私の場合は、お客様から試作受注をいただいたことで状況が一変、みんなして取り組まざるを得ない状況に追い込まれ、結果として自分一人で抱え込んでいた課題解決をチーム全員でシェアする環境ができたことで、その苦境から脱出することができました。

 他力によって無理やり環境が変わり、それによって活路が開くといったことも少なからずあるでしょうが、できれば自分で状況を変えることのできる地力を身につけることができれば、無敵の存在にもなれるかもしれません。

 豊かではあるものの深い混迷のなかにある現代にあっては、どのような環境下に置かれようとも、自らを極限にまで追いつめる強さと勇気を持ち、果敢に「試練」に立ち向かっていける強い心が必要なのではないでしょうか。


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