『稲盛和夫一日一言』 5月8日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5月8日(水)は、「本音でぶつかれ」です。
ポイント:経営は毎日が修羅場。課題を解決していこうと思えば、建前論で済ませられるわけがない。会社を伸ばしていこうと思えば、本音をぶつけ合わなければならない。
2013年発刊の『稲盛和夫 経営問答集 第六巻 心を高める 経営哲学編』(稲盛和夫著 盛和塾事務局・京セラ経営研究部編)の経営問答において、「全従業員に自分の思いを浸透させるためには?」との質問に対して、稲盛名誉会長は次のように答えられています。
質問:従業員と信頼関係を構築していくにあたって、自分の意思を組織の末端にまで浸透させるための要点について問う。
回答:従業員のことを思い、トップ自ら率先垂範すると同時に、従業員と本音で語り合うこと。
先に結論から言ってしまえば身も蓋もないのですが、結論は、「あなたが従業員から尊敬されるレベルにならなければならない」ということです。しかし、まだ尊敬されるところまではいっていません。あなたが尊敬されるようになれば、従業員はあなたの言うことを100%納得してくれるようになるはずです。
京セラ創業間もないころ、私は従業員をつかまえてこう言いました。
「私は『全従業員の物心両面の幸福を追求する』ということを経営理念としました。ですから、皆さんを守っていくために私は必死になって皆さん以上に働きます。そのかわり、皆さんにも厳しいことを言わせていただきます。皆さんがいい加減な働きをして、それをそうかと言っていたのでは会社を潰してしまう。それでは皆さんの物心両面の幸福を守ると言った約束に反することになる。だから、いい加減な人には辞めてもらいます」
従業員のために社長が苦労しているというのは、共感を得るものです。ですから、共感を得るためには社長自らが率先垂範して一番苦労しなければなりません。そうすれば、必ず従業員はついてきます。
従業員に自分の意思を伝達しようとしても、杓子定規で、かしこまってしゃべっていては、誰も聞いてはくれません。聞いていたとしても、右の耳から左の耳に抜けているだけで、何も伝わっていません。
私は酒盛りスタイルの『コンパ』というのをやってきましたが、これはコミュニケーションを良くするための最良の方法です。
一杯飲んでいれば、誰でも心情を吐露しやすくなります。そこで出てくる話は本音ですから、従業員の誰が何を思っているのか、どんなことを考えているのかなど、全部わかるわけです。
そこで、一生懸命に頑張ってくれている人には「これからも宜しくお願いしますよ」と言い、間違った考えを持っているような人には、「あなたは間違っている」と言って説教を始める。
また、自分が間違っていると言われて納得できれば、「なるほどそうだ。私が直すわ」と、こちらも素直に頭を下げる。
そこはまさに修行の場、自分を鍛えていく場になるわけです。
しかし、従業員と本音で語り合おうと言われても、凡人にはなかなか「大善」はできません。無理にそうしようとすれば「非情」に見えてしまう。しかしそのくらい冷たいことを、あえてやれるくらいのリーダーでなければ話になりません。
私が、常に従業員を大事にしようと言っているのは、甘やかして引っ張っていくという意味ではありません、たとえボーナスや給料をたくさん出したからといって、従業員はついてこないのです。
やはり、本当にみんなを引っ張っていくための対話というものは、ストレートなものでなければならないと思います。ですから、恐れずに従業員の中に入っていって会話をしてください。
その会話も、取ってつけたみたいに中に入っていけば警戒されますから、例えば先ほど示したコンパみたいな形を取っていけばいいと思います。
積極的に従業員とのコミュニケーションの場をつくり、会話をしていってはどうでしょうか。(要約)
今日の一言には、「経営課題を解決していこうと思えば、幹部同士であっても、ズバズバ本音で議論しなければならないのに、ストレートなものの言い方をして人間関係が壊れてしまっては困ると、どうしても建前で話をしてしまうようになる」とあります。
経営者に限らず、周囲から尊敬されるような人間性を身につけることができれば、本音をぶつけ合うことのできる良好な人間関係の中で生きていけるはずです。
『心を高める、魂を磨く』
人生における永遠の課題ではないでしょうか。