『稲盛和夫一日一言』 12月18日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 12月18日(月)は、「働く価値観を改める」です。
ポイント:働くということに対する価値観を改めることが、今の日本にとって最も重要なことではないか。
2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)のプロローグで、「本当に価値ある人生を送るために」として、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
この国は今、「道しるべのない時代」を迎えています。
確かな指針を見出せない中にあって、少子高齢化や人口減少、地球環境問題など、過去に経験したことがない問題に直面し、人々の価値観そのものが、大きく揺らいでいるように見受けられるのです。
人生の中でもっとも多くの時間を費やす「働く」ということに関する考え方、仕事に対する心構えも、その一つなのかもしれません。
「なぞ働くのか」「何のために働くのか」、多くの人が今、働くことの意義やその目的を見失っているようです。
日々の仕事を進めるための技術やマニュアルは、あふれるほど用意されているのに、「働く」ということに込められた、根本的な価値を明らかにすることは、ないがしろにされてきました。
そのため、今、若い人たちの間で、労働を厭(いと)い、できるだけ回避しようとする傾向が顕著になっています。
例えば、「一生懸命に働く」「必死に仕事をする」といったことを意味がないとか、格好悪いと冷笑する人さえ少なくありません。
一方、働くことを怖がる傾向も多く見られます。
社会へ出て働くことは、自分の人間性を剥奪(はくだつ)されてしまう苦役(くえき)でしかない。だから、就職もせず、親の庇護(ひご)のもと、ぶらぶらと過ごす。さもなくば、目的もなくアルバイトでつなぎながらイヤイヤ働く。引きこもりやニート、フリーターなどの増加は、労働に関する考え方、心構えの変化がもたらした、必然的な結果だと言えるかもしれません。
本当は働きたくない、しかし食べていくためには、やむを得ないから働く。だから、できるだけ楽に稼げればいい。本当は、会社に縛られず、プライベートな時間を大切にして、自分の趣味に没頭していたい。そのような生き方は、豊かな時代環境を背景に、今や若い人の間に浸透してしまったようです。
このようにして、今多くの人が「働くこと」の根源的な意味を見失い、「働くこと」そのものに真正面から向き合っていないように思うのです。
私はそういう人たちに、「せっかくこの世に生を受けたにもかかわらず、果たして本当に価値ある人生だったのか」と問うてみたい。いや、問うだけでなく、そのような若い人たちに、何としても、私の考える正しい「働き方」を教えてあげたい。
働くことの意義を理解し、一生懸命に働くことで、「幸福な人生」を送ることができるということを。(要約)
私は、いわゆる「団塊の世代」と呼ばれるパワフルな上司、先輩の背中を追いかけるように、目いっぱい仕事にのめり込んだ社会人生活を40年間過ごしてきました。
退職して前期高齢者の仲間入りをした今、後悔する部分は多々あるものの、社会人になってから一度のブランクもなく働き続けることができたことに、素直に感謝しています。
しかし現在の日本では、寿命が尽きるまで一切働く必要がないという人はそう多くはありません。すでに70~74歳の就業率は32%を超え、労働力人口に占める65歳以上の割合は15%近い数字となっています。(2021年版「高齢社会白書」より)
今日の一言では、「なるべく働かずに多くのお金をもらうのがいいのではなく、懸命に働くことで、生活の糧を得るだけでなく、精神的な満足が得られ、人間を磨くことにもつながるのだ、という考え方を多くの人が持つようになるべきではないか」と説かれています。
たとえ高齢者といわれる年代になっても、「働く」ということが本来持っている価値観をしっかりと見据え、物心両面の幸福を求めると同時に、少しでも世のため人のためになるようにと心がけて行動することで、まだまだ己の人間性を磨くこともできるのではないかと思っています。
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