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『稲盛和夫一日一言』 1月17日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 1月17日(水)は、「人を動かすもの」です。

ポイント:人を動かす原動力はただ一つ、公平無私であるということ。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSION- 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「無私の心が人を動かす」の項で、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 明治維新の立て役者である西郷隆盛は、「金もいらない、名もいらない、命もいらないという奴ほど、始末に負えない者はない。しかし、その始末に負えない者でなければ、国家の大事を任せるわけにはいかない」という言葉を残しています。
 つまり、まったく私欲のない者でなければ、高い地位につけるわけにはいかないと言っているわけです。

 人を動かす原動力は、ただ一つ、公平無私ということです。公平無私というのは、自分の利益を図る心がなく、自分の好みや感情で判断しないということです。
 金や名声、保身の誘惑に負けないというのは、容易なことではありません。しかし、公平で無私の心を持っているリーダーであれば、部下は尊敬しそのあとに従うものです。逆に、自己中心的で欲深いリーダーは嫌悪されることでしょう。

 リーダーは、まず無私の姿勢を明確にしなければなりません。そして、自分の集団のために意義ある目標を立て、自らもそれに向かって進んでいくべきなのです。

 リーダーの決断ひとつで、部下の士気を上げることも下げることもできます。部下にいつまでも自分についてきてほしいと思うなら、気まぐれで自己中心になったり、自分の都合によって物事を決定したりすることのないようにしなくてはなりません。(要約)

 今日の一言には、「無私の心を持っているリーダーならば、部下はついてきます。逆に、自己中心的で私欲がチラチラ見える人には、嫌悪感が先立ち、ついていきかねるはずです」とあります。

 2007年発刊の『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』(稲盛和夫著 日経BP社)第一章のタイトルが「無私」です。その冒頭、名誉会長は「人の上に立つリーダーは私利私欲を捨てて正道を歩め」として、次のように説かれています。

 『西郷南洲翁遺訓』の冒頭を飾る一条は、組織の長を務める者にとって、まさに羅針盤となるべきものです。

 西郷は政治を例に挙げて言及していますが、これは大企業の経営者であれ、中小企業の経営者であれ、さらにはどんな小さな組織のリーダーであれ、トップに立つ者はこういう心構えでなければならないということを示しています。
 リーダーたる者、いささかの私心もはさんではならないと、徹底的に利己を否定する西郷に、私は身震いさえ覚えました。なぜなら、私も当時は、完全には割り切ることができていなかったからです。


 当時、京セラは上場を果たし、順調に成長を重ねていました。しかし、経営者で三十代後半だった私は、創業時と何ら変わることなく、必死に仕事に励み、個人の時間など一切ありませんでした。
 昼夜分かたず、まさに四六時中働きずくめで、個人というものが一切ない、今のような生活が私の人生なのだろうか。個人としての時間も充実していなければ、せっかくこの世に生を受けたにもかからわず、満足できる人生とはいえないのではないかと思い悩み、自問自答を繰り返していました。

 そして、深く考えた末に、自分自身のことは犠牲にしてでも会社のことに集中する、それがトップたる者の務めなのだと思い始めた、ちょうどそのころ、先ほどの『南洲翁遺訓』の一節に出会ったわけです。
 「やはり、そうなんだ!」と、私はまるで西郷に背中を押してもらったかのように感じました。

 トップに立つ人間には、いささかの私心も許されない、基本的には個人という立場はあり得ないのです。トップの「私心」が露わになったとき、その組織はダメになってしまいます。
 「常に会社に思いを馳せることができるような人、いわば自己犠牲を厭わないでできるような人でなければ、トップになってはならない」ということを私は確信するようになり、その後は一切迷うことなく、自分の人生のすべてを経営にかけることができました。
(要約)

 『南洲翁遺訓』一条の冒頭の一文は、次のようなものです。

 「廟堂(びょうどう)に立ちて大政(たいせい)を為すは天道(てんどう)を行うものなれば、些(ち)とも私(わたくし)を挟(はさ)みては済まぬもの也」

 【訳】
 政府にあって国の政(まつりごと)をするということは、天地自然の道を行うことであるから、たとえわずかであっても私心を差し挟んではならない。

 現在の日本の政治家といわれる人たちの中に、このような心の羅針盤を持って事にあたっておられる方がどれほどおられるでしょうか。
 また、相次ぐ企業・団体・教育機関等で起こっている不祥事を見聞きするにつけ、その組織のトップの心構えに対して疑念を抱かざるを得ません。

 今後とも、「公平無私」であろうと日々心がけを新たにすることで、より後悔の少ない人生を過ごしていければと思っています。


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