『稲盛和夫一日一言』 11月13日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 11月13日(月)は、「カラーで見えるまで考え抜く」です。
ポイント:新しい事業を始めるときには、寝ても覚めても常にそこに意識を集中し、一点の疑問も残らないほど、起こり得るあらゆる細目を考え抜く。そして、目指すべきビジョンがカラーで見えるようになるまで続けること。
1989年発刊の『心を高める、経営を伸ばす』(稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、見えるまで考えることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
技術開発など新しいことを進めようとするとき、私はよく「見えてこなければならない」と言います。
夢みたいなことを言っているうちに、夢と現実との境がなくなってしまうということを、私は何回も経験しています。つまり、最初のうちは夢として理想として考えていたものが、ずっと考えているうちに、現実なのか夢なのか、自分でも分からなくなってきてしまうという状況になってはじめて、「できる」と私は思うわけです。
そして、まだ何もやっていないのに、もう「できる」ということを言い出すのです。そういう心理状態を、私は「見える」という表現で言っているのです。
夢みたいなことを、ただ漠然と考えているようでは話になりません。まだやってもいないことまでが、「やれる」という自信に変わったときに初めて「見える」ということになるのです。それは、テーマをどこまで深く、どれだけ長く考えているかによります。
こういう「見える」という状況まで考え尽くさなければ、何事も絶対にものにならないと私は思っています。(要約)
今日の一言には、「私は、新しい事業を始めるときに、疑問や不安を抱いたことは一度もない。それは、寝ても覚めても、常にテーマに意識を集中し、考え続けているからである。疑問が一点も残らないほど、起こり得るあらゆる細目を考え抜いているのだ」とあります。
また、2004年発刊の『生き方』(稲盛和夫著 サンマーク出版)の「現実になる姿がカラーで見えているか」という項で、名誉会長は次のようにも述べられています。
物事成就の母体は、強烈な願望である。そして、強く思うだけではなく、頭の中で、その実現へのプロセスを真剣に幾度も考え、シミュレーションを繰り返す。そうやって、思い、考え、練っていくということを執拗(しつよう)に繰り返していると、成功への道筋があたかも一度通った道であるかのように「見えて」きます。
最初は夢でしかなかったものが次第に現実に近づき、やがて夢と現実の境目がなくなって、すでに実現したことがあるかのように、その達成した状態、完成した形が、頭の中、あるいは目の前に克明に思い描けるようになります。
しかも、それが白黒で見えるうちはまだ不十分で、より現実に近く、カラーで見えてくる、そんな状態がリアルに起こってくるのです。
逆にいえば、そういう完成形がくっきりと見えるようになるまで、事前に物事を強く思い、考え、真剣に取り組まなくては、創造的な仕事や人生での成功はおぼつかないということです。(要約)
人生で何かを為そうとするとき、その理想形を目指して進んでいくためには、「見えるまで考え抜く」というプロセスが不可欠だということです。
あえて合格ラインを高く設定し、思いと現実がぴったりと重なり合うまで、突き詰めて考え、取り組んでいく。そうすることで、結果として満足のいく素晴らしい結果を得ることができます。
ふわーっとした気持ちでスタートしたことがなかなかうまくいかないのは、予め「見えるまで考え抜く」というプロセスを踏んでいなかったからであって、うまくいかないのは想定内だったということではないでしょうか。
「今しかない」ということで、ノーアイデア、ノープランのまま気合だけで突き進んでしまえば、失敗するのは目に見えています。単純に時間を多くかければいいというものではないかも知れませんが、疑問が残らないほど、あらゆる細目まで考えて考えて考え抜く。
ここ一番という勝負所だけではなく、日ごろからそうしたプロセスを丁寧に踏む習慣をつけることで、常に勝算を持って挑戦していきたいものです。