『稲盛和夫一日一言』 2月8日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 2月8日(木)は、「天職」です。
ポイント:「天職」とは出会うものではなく、自らつくり出すもの。
2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)「心の持ち方を変える」の項で、「天職」ということについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
私はもともと、どこにでもいるような、一生懸命に根を詰めて努力することの苦手な、むらっ気のある青年だったように思います。
そのような普通の青年が、ここまで長年ひたむきに働いてこられたのは、どうしてなのでしょうか。
それは、私が自分から仕事を好きになろうと努めたからです。「心の持ち方」を変えるだけで、自分を取り巻く世界は劇的に変わるのです。
転職することもかなわず、最初に就職した会社で働き続けなければならなかった私は、「心の持ち方」を変えることにしました。「この仕事に打ち込もう」と自分に言い聞かせるように努めたのです。
すぐには仕事が好きになれなくても、少なくとも「この仕事が嫌いだ」というネガティブな感情だけは自分の心から追い払って、目の前の仕事に全力を注いでみようと決意したのです。今思えば、それが「仕事を好きになろう」と努めることであったのかもしれません。
なかば無理に自分に強いて始めたことでしたが、次第に自分から積極的に取り組むほど仕事が好きになり、さらには好きとか嫌いとかいう次元をはるかに越えて、自分のやっている仕事に意義さえ感じるようになっていきました。ですから、「天職」とは出会うものではなく、自らつくり出すものなのです。
仕事に惚れて、好きにならなければなりません。他人から見れば、「つらく厳しい仕事をするのはたいへんでしょう」と思われるような場合であっても、自分が惚れた好きな仕事なら耐えられるはずです。
「仕事に惚れる」「仕事を好きになる」
そういう状態になれたからこそ、私は長い間、仕事を続けることができたのです。
大半の人は、人生の門出を「好きでもない仕事」に就くことからスタートするかもしれません。しかし問題は、多くの人がその「好きでもない仕事」に不承不承、従事し続けていることです。
まずは、自分の強い意志で仕事を好きになる。そうすることで、人生はより実り豊かなものになっていくはずです。(要約)
また、2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)「物事の本質を究める」の項で、名誉会長は次のように説かれています。
私たちは、一つのことを究めることによって、初めて真理や物事の本質を体得することができます。究めるということは、一つのことに精魂込めて打ち込み、その核心となる何かをつかむことです。一つのことを究めた体験は、そのほかのあらゆることに通じます。
一見してどんなにつまらないと思われるようなことであっても、与えられた仕事を「天職」と思い、それに全身全霊を傾けることです。それに打ち込んで努力を続ければ、必ず真理が見えてきます。
いったん物事の真理が分かるようになると、何に対しても、またどのような境遇に置かれようとも、自分の力を自由自在に発揮できるようになるのです。(要約)
「京セラで働いている間に、何か究めることができましたか?」と問われると、残念ながら「できました」と即答できるようなものはありません。
しかしながら、局面ごとに「自分の仕事に惚れる」「自分の仕事を好きになる」ことで、目の前の仕事に没頭することができました。
その結果、あるセラミック材料系の研究開発に従事すること20年、その後フィロソフィの継承・啓蒙に関する業務に携わってから20年近く、振り返ってみると後悔することも多々ありながら、それでも充実した社会人生活を送ることができたのではないかと思っています。
「目の前のことに、常に真摯な気持ちで向き合おうとする」
そうした心構えが、自分を「天職」へと導いてくれるきっかけになるのかもしれません。