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『稲盛和夫一日一言』 10月26日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月26日(木)は、「大企業の責任」です。

ポイント:大企業は、自らの強大な力をコントロールするために、一般企業よりはるかに厳しい自己管理のルールを確立し、自らを律するように努めなければならない。

 2013年発刊の『経営者とは 稲盛和夫とその門下生たち』(日経トップリーダー編 日経BP社)第一章「稲盛和夫は語る」の中で、人生、会社経営について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 私は若いころから、「人生はどうなっているのだろう」「人間というのは、どういう生き方をしなければならないのだろう」といった哲学的な思考をずっと続けてきました。

 鹿児島に住んでいた小学六年生のとき、私は結核にかかりました。そのときにいただいた宗教法人「生長の家」創始者の谷口雅春さんの本を読んでからというもの、いろいろな書籍を通じて哲学的なものを学び、一方では現実の中で次から次へと逆境に遭遇しながら、そこから逃げるのではなしに、克服する過程で強い意志力というものを身につけていきました。
 就職して以降も過酷な環境を生きざるを得なかったことが幸いして、さらに自分自身が鍛えられ、立派な哲学を身につける糧となりました。

 社会が安定して経済も良くなっていた私よりも若い世代の人たちは、頭が良くて優秀であればいい大学に入れ、卒業後もいい会社に入ることができたでしょう。ただそうすると、苦難に遭遇する機会は少なかったでしょうから、哲学的なものを身につけるような人生を送ってきた人はそう多くないはずです。そうすると、確固たる素晴らしい人生観、価値観を持って「こういう生き方をすべきだよ」と部下に説ける人はほぼ皆無ではないでしょうか。

 当時は「何でこんなにいっぱい苦労をしなければいけないのか」と恨み節を口にしたこともありましたが、今改めて考えてみると、手を合わせて拝みたくなるくらい素晴らしい逆境を与えてくれたと、私は思っています。

 苦難はその受け止め方によってマイナスにもなるし、プラスにもなります。もし今、大変厳しい状況の中にあるのなら、それを真正面から受け止め、自分の成長を促していく大きな栄養剤だと思って、誰にも負けないほど必死に努力をすべきだと思います。

 日本の経営者、特に大企業の経営者には、こうした哲学的なものが欠落しています。そのことが現在の日本企業の停滞をもたらしている要因だと、私は思っています。(要約)

 今日の一言には、「大企業の経営者は、まず、企業や企業群が巨大化してゆけば、必ず社会に対して破壊的な影響を及ぼす可能性があることを認識しなくてはならない」とあります。

 例えば、「GAFAM」(アメリカ合衆国の大手テクノロジー企業であるGoogle、Amazon、Facebook・現META、Apple、Microsoftの頭文字を取った略語)が全世界に与える影響力はまさに破壊的なレベルにまで強大化しています。なぜなら、すでに世界中の多くの人々が利用していて、それら無しでは社会が成立しないほどの共通インフラとなっているからです。

 近年、かつては世界をリードしてきたさまざまな分野において、日本のグローバルな存在感が希薄化してきています。それは日本経済の伸び悩みと比例していて、国民の間にも停滞感や閉塞感が漂っています。
 しかし、混沌とした状況の中にあるからこそ、経営者には状況に流されることなく、逆境に負けない「ナニクソ」という強い精神、「闘争心」を持って立ち向かっていくことが求められるのではないでしょうか。

 2012年開催の第20回盛和塾世界大会塾長講話「人と企業を成長発展に導くもの」の中で、日本経済の再生について、名誉会長は次のように述べられています。

 経営において美しい心の必要性を知り、それを身につけるべく、日々努めている人々は、激しく猛々しい闘争心をもって経営や人生に臨んでも、決して誤った方向へは行かない。なぜなら、美しい心が羅針盤となり、真っすぐに正しい方向へと進んでいくことができるからである。(要約)

 経営者に限らず、私たち一人一人が「美しい心」を持ち、「激しい闘争心」を持って目の前の苦難に果敢に挑んでいく。そうした姿勢こそが己の人生を真っすぐに導いてくれるのではないでしょうか。


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