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『稲盛和夫一日一言』 3月8日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 3月8日(金)は、「心は心を呼ぶ」です。

ポイント:人の心ほど、はかなく移ろいやすく頼りないものはない。しかし、世の中でこれくらい強固で重要なものもないのではなかろうか。「心は心を呼ぶ」ということを忘れてはならない。

 2022年発刊の『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所)の中で、人の心の大切さについて稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 日本の歴史、また世界の歴史をひもといても、人の心ほど頼りにならなくて不安定なものはないことを示す事例はいくらでもあります。
 同時に、人の心が不動にして非常に強固なものであるという事例も数多く見い出せるのです。

 幸い、京セラでは創業時に馳せ参じてくれた方々、またその後、集まってくださった方々が皆同じように、この集団のためなら命を懸けても惜しくない、この信じられる仲間のために尽くそうという気持ちになってくれました。
 もちろん私自身、皆に命を懸けているという気持ちを表明し、経営にもまた日常の業務にも携わってきました。

 京セラは、ベンチャー・ビジネスとしての形態で、いわゆる技術先行型の企業としてスタートを切り、今日、世間では一応、素晴らしい発展を遂げたという評価をいただいています。
 それは人の心をベースにした経営、つまり信じられる者同士の集まりという側面を大切にした経営を行なってきたからであり、それが技術先行型の経営とあいまって、今日の発展につながったのではないかと思っています。

 「心は心を呼ぶ」といいますが、やはり経営者は素晴らしい心根を持っていなければなりません。これはいわゆる思いやりとか、宗教でいう慈悲の心にも通じるものです。
 同時に経営者には、私心をなくし皆のために尽くすという自己犠牲的な精神が、絶対に必要だと思っています。
(要約)

 2014年発刊の『稲盛和夫の経営問答 従業員をやる気にさせる7つのカギ』(稲盛和夫著 日本経済新聞出版社)の中で、従業員に心底惚れてもらうことの大切さについて、名誉会長は次のように述べられています。

 創業して間もないころ、まだ零細企業だった京セラに入社してはみたものの、すぐに辞めていった人はたくさんいました。そうした中、最後まで残ってくれた人たちが40年ほど経ってわざわざ謝恩会を開いてくれ、「若いころから、ただただ稲盛さんを信じて、一緒になって懸命に働いてきたことが、今日までの素晴らしい自分の人生をつくったのだと思っています」と、しみじみと語ってくれました。

 社長であるあなたに惚れこみ、どこまでもついてきてくれる人たちをつくり、彼らを幸せにしていく、それが企業経営者の務めです。
 その務めを果たしていくには、己(おのれ)ばかりを愛していたのでは誰も惚れてくれません。己を空(むな)しくして、自己犠牲を払い、従業員のことを最優先に考える。そうするから、皆、惚れ込んでくれるのです。

 従業員の誰よりも懸命に努力するといった仕事に対する姿勢、また仕事が終わった後もわずかであっても身銭を切って従業員を労(いた)わるといった、相手を思いやる姿勢こそが大切です。
 そうした自己犠牲の精神が、従業員の心を動かすのです。
(要約)

 ここでは「従業員に心底ほれてもらう」という経営者からの視点ですが、一社員でしかなかった私にとっては、「(京セラという)会社に惚れた」という状態に近かったように思っています。

 それは、京セラの経営理念である「全従業員の物心両面の幸福を追求すると当時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営トップ自らが率先、実践しようとする姿を、さまざまな場面で実感できたからです。

 「類は友を呼ぶ 」ということわざがあります。「気の合った者や似通った者は自然に寄り集まる。類をもって集まる」といった意味ですが、「心は心を呼ぶ」もそれに近いものだと思われます。同じ心根を持った人たちが集う集団ほど、働きやすい環境はないと思います。

 「心が呼ばないものが自分に近づいてくることはない」
 現在の自分の周囲に起こっているすべての現象が、自分の心の反映でしかないとするならば、自分の周りに集まってくる人たちもまた、一人一人の心、互いの心が呼び寄せたものに違いありません。

 これからもそうした人間関係を大切にしていければと思っています。


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