『稲盛和夫一日一言』 7月8日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 7月8日(月)は、「運命は宿命にあらず」です。
ポイント:持って生まれた運命さえも、善きことを思い、善きことを行うことによって、善き方向に変えることができる。
2004年発刊の『生き方』(稲盛和夫著 サンマーク出版)「第一章 思いを実現させる」の中で、運命は自分の心次第という真理に気づいたときのことについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
「どうして、自分という人間はこうついていないのだ」
若いころから失敗や挫折となかなか縁が切れず、私は世の不公平とおのれの不運を呪っていました。
大学を卒業して就職する際も、大学の教授のお世話で何とか京都の碍子製造メーカーにもぐり込むことはできたのですが、内実はいつつぶれてもおかしくないオンボロ会社で、同期入社の同僚たちは次々と辞めていき、とうとう私一人だけ取り残されてしまったのです。
さすがにそこまで進退窮まると、かえって吹っ切れた思いになれました。これ以上この境遇を呪っていてもしかたがない。ここは百八十度気持ちを切り替え、仕事に精を出し、必死に研究に取り組んでみようと腹を据えたのです。それからは、鍋や釜まで研究室に持ち込んで実験づけの日々を自分に課しました。
すると、その心の変化が反映したように、研究の成果が上がりはじめました。目に見えてよい結果が出て上司からの評価もよくなると、ますます仕事に熱中するようになり、さらによい結果が生まれるという好循環が生まれたのです。
心の持ち方を変えた瞬間から、人生に転機が訪れ、それまでの悪循環が断たれて、好循環が生まれ出した。このような経験から、私は人間の運命は決して敷かれたレールを行くかのように決定されているものではなく、自らの意志でよくも悪くもできるのだということを確信するようになりました。
つまり、自分の周りに起こるすべての事象は、自分の心がつくり出しているという根本の原理が、さまざまな蹉跌(さてつ)や曲折を経て、ようやく人生を貫く真理として得心でき、腹の底に収まってきたのです。
たしかに「運命」というものは、私たちの生のうちに厳然として存在します。しかし、それは人間の力ではどうにも抗(あらが)いがたい「宿命」なのではなく、心のありようによっていかようにも変えていける。
「運命」を変えていくものはただ一つ、私たちの心であり、人生は自分でつくるもの。東洋思想では、それを「立命」という言葉で表現しています。
思いという絵の具によって、人生のキャンパスにはその人だけの絵が描かれます。だからこそ、あなたの心の様相次第で、人生の色彩はいかほどにも変わっていくものなのです。(要約)
今日の一言には、「人間は運命に支配される一方で、自らの善思善行(ぜんしぜんこう)によって、運命を変えていける存在でもある」とあります。
2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、善きことを思うことで人生は好転するとして、名誉会長は次のように説かれています。
千人いれば千人、万人いれば万人、それぞれ異なった人生をおくります。それが社会というものだから、各々がどういう考え方、思想を持つかなどといったことはまさに自由であると思います。
しかしその自由のなかで、自分がどのような考え方を選択するかによって自らの人生が決まってしまう、ということを、果たしてどれくらいの人が認識しているでしょうか。
学校でも会社でも、誰もそのことの重要性を教えてはくれません。
例えば仏教では、お釈迦様が「こういう生き方をしなければなりません。さもなくば地獄に堕ちますよ。ちゃんと守れば極楽に行けますよ」と説いておられますが、それだけでは地獄も極楽も死んだ後の荒唐無稽(こうとうむけい)な話だと思って、誰も真剣にはとらえません。
また、思想家の中村天風さんは、次のように言っておられます。
「自分には輝くような未来が待っている、素晴らしく明るくて、幸せな人生がひらけていくと、それをただ一点、建設的に、ポジティブに、前向きに思い、明るく人生を考えなさい。決して陰々滅々とした暗い思いを持ってはなりません」。
しかし、そうした考え方を知識として「知っている」だけでは意味がありません。そこに行動が伴っているかどうかが肝心です。知識として得たものを血肉化する、つまり、自分の肉体にしみこませ、どんな場面でもすぐにその通りの行動がとれるようでなければなりません。
私が機会あるごとに同じような話をするのも、正しい考え方、フィロソフィを血肉化し、人生の節々において、また日々の業務においてそうした考え方を生かすことができなければ、全く価値がないからです。
人生というのは、自分の描き方一つです。自分というものを大事にし、一日一日、一瞬一瞬をど真剣に生きていくことによって、人生はガラッと変わってくるのです。(要約)
人生には、「宿命」「運命」「立命」の三つがあるといわれます。
生まれる前に決まっているのが「宿命」、生まれた後に決まっていくのが「運命」だとされていますが、自分の努力では動かせないと諦めてしまいがちな「宿命」を動かして「運命」に変え、さらにその「運命」をも自分の考え方、行動によって変化させ、「立命」に変えていく。
「運命は宿命にあらず」
まずは、「運命は変えられる」と信じることから始めてみませんか?