『稲盛和夫一日一言』 1月28日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 1月28日(日)は、「宇宙の意志」です。
ポイント:この宇宙には、すべての生きとし生けるものを、善き方向に活かそうする「宇宙の意志」が流れている。その善き方向に心を向けて、ただひたむきに努力を重ねていけば、必ず素晴らしい未来へと導かれていくようになっている。
2001年発刊の『稲盛和夫の哲学 人は何のために生きるのか』(稲盛和夫著 PHP研究所)の中で、「宇宙とは何か」「宇宙の意志とは何か」ということについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
人間を含め、一木一草(いちぼくいっそう)に至るすべてのものが宇宙にとって価値ある存在であるとするならば、そこに必然性をもたらしている「宇宙とは何か」ということについて、私なりの考えを述べてみたいと思います。
私は、宇宙が形成されていく経過を「進化」といってもよいと考えています。「進化」というと、主に生物を対象とした『進化論』を意味していて、一般に無生物は変わらないものとされていますが、初期の宇宙では、無生物の進化が急激に起こっていたと考えられます。
宇宙の生成は、百数十億年前にひと握りの超高温超高圧状態の素粒子の塊が「ビックバン」と呼ばれる大爆発を起こし、その後も膨張を続けて現在に至っているとされています。
その過程で、素粒子は素粒子のままではなく、なぜ陽子、中性子、中間子をつくり、それらがなぜ結合して原子核をつくり、そこへなぜ電子がトラップされて水素原子を構成したのか。さらには、その水素原子がなぜ核融合してヘリウムを生み、その後もいろいろな元素をつくり出していったのかということです。
この問いに対して、「宇宙にはそうした法則がある」と考えるべきだとの意見があります。科学という視点からすれば、宇宙は「宇宙の法則」にしたがって生成発展していると考えたほうが理に適っているのでしょう。
しかし私は、そのような法則があるというよりは、宇宙には森羅万象(しんらばんしょう)あらゆるものをあるがままに存在させるのではなく、それが生成発展する方向へと動かしていく流れ、すべてのものを成長発展させるような進化をうながしていく流れがある、というふうに理解しています。
つまり、無機物的な法則というよりは、宇宙にはすべてのものを生成発展させ、進化をさせていく「意志」のようなものが存在していると考えたほうがよいと思うのです。
ここでは、多くの人たちに理解してもらいやすいように擬人法的な手法で言っていますが、もしそういう捉え方が嫌いな方は、宇宙にはそうした法則があると理解されてもよいと思います。
そうした法則、意志によって進化はうながされ、原子からさらに分子ができ、タンパク質が生まれ、それによってDNAが構成されて生命というものが誕生した。そしてその後も進化は続いていて、決して途切れることはありません。
いわば、「宇宙の意志がすべての存在の源となっている」と考えてもよいのではないか、と私は考えています。
悟りを開いた賢人たちは、「宇宙には愛が偏在(へんざい)している」と表現しました。また、お釈迦様は「すべてのものに仏が宿る」と語られています。天台宗の教義では、真の智慧の根源なるものがすべてに宿るということを意味する言葉として、「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」、つまり「あらゆるものはみな悉(ことごと)く仏なり」と説明しています。
このように、すべてのものを成り立たせる「存在としかいいようのないもの」が宇宙の意志だと考えていいのではないでしょうか。
私たち一人ひとりも宇宙の意志にしたがって存在しているとするならば、肉体が滅びる「死」もまた宇宙の意志です。しかし、宇宙の意志という存在の核を持っている以上、肉体の死はそのまま人間の死を意味しないと、私は信じています。(要約)
この著書のまえがきで、名誉会長は次のように述べられています。
いま私たちに必要なことは、「人間として何のために生きるのか」という根本的な問いに真正面から対峙し、人間としてもっともベーシックな哲学、人生観を確立することだと考えています。
人生に対する考え方により、人生の結果が大きく変わることを私たちは理解しなくてはなりません。苦労を厭(いと)い、人生をおもしろおかしく過ごそうとした人や、世をすね、不平不満を持って一生を過ごした人と、高い目標を持ち、それに向かって明るく前向きに一生懸命努力を重ねてきた人の人生には、大きな差が生じてしまうのです。
つまり、「素晴らしい人生を送る」ためにはそれにふさわしい考え方があり、それはどういうものなのかということを、私たちは知る必要があると思うのです。
混迷する現在にあって、本書が正しい生き方を懸命に模索する方々への一助となることを願ってやみません。(要約)
「宇宙の意志」というものの存在を信じるのか信じないのか、そこは意見の分かれるところだと思います。
しかしそこには、「人間は、ただ存在しているだけでも宇宙の意志に従って生成発展する方向に向かって生きていけるのに、悪い心を持ってしまえば、大変な害毒を流す存在にもなりかねない。人間にはそうした二面性があることをしっかりと理解し、より価値ある存在となるために、みんなして善き方向に心を向けて努力していこうではありませんか」という名誉会長の強い想いが込められているように感じます。
改めて、自分が生きている意味、意義といったものを見つめ直す時間を持ってみるのも、大事なことではないでしょうか。
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