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『稲盛和夫一日一言』 11月10日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 11月10日(金)は、「リーダーシップと謙虚さ」です。

ポイント:経営者は、強烈なリーダーシップを持つと同時に、一方ではそれを否定するような謙虚さを兼ね備えていなければならない。

 2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第5巻 リーダーのあるべき姿』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、経営においては三つの要諦を謙虚に実践し続けることが大切であるとして、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 中小企業であれ、大企業であれ、「従業員を自分に惚れ込ませる」「月次の売上と経費を細かくチェックする」「フィロソフィを共有する」という三つの項目を、この順番どおりに実践しさえすれば、経営は必ずうまくいきます。「経営の要諦」として、これ以上のものはないと私は思っています。

 こうした経営の要諦を血肉化し、自分のものにしていくためには、同じことを繰り返し繰り返し、何度も行うしかありません。
 少し勉強すれば知識はついてきますが、それだけでは決して自分のものにはなりません。単に知っているだけの「知識」ではダメなのです。それを信念のレベルである「見識」にまで高めなければなりません。いや「見識」でも不十分で、いかなる障害をも恐れず実行していくという勇気を伴った「胆識」にまで高めていかなければなりません。

 私は、プリミティブな哲学を必死で守ろうとし、また実践してきました。それは幼稚な哲学かもしれませんが、毎日毎日の実践の場で繰り返しその哲学を判断基準として使ってきました。だからこそ、京セラは創業以来一度も赤字を計上することなく、成長し続けてきたのです。

 「経営の要諦」を血肉化し、経営という実践の場でそれを生かしていくためには、ばかみたいに繰り返し繰り返し学んでいくことが大切です。謙虚さを忘れて慢心してしまえば、企業でも人生でも、必ずといってよいくらい没落していきます。

 「月盈(み)つれば則(すなわ)ち食(か)く」(『易経』)という言葉があります。月は満ちれば必ず欠けていきます。これは自然の理(ことわり)であり、人間には変えようがありません。満ちてしまうとは、慢心する、増上慢(ぞうじょうまん)になってしまうことです。
 いくら会社が立派になろうとも、経営者として有名になろうとも、常に切磋琢磨し合い、謙虚に努力をすることを通じて、「満月」になるのを遅らせるよう、努めていかなければなりません。
(要約)

 今日の一言では、「強いリーダーシップだけでは暴走してしまうし、謙虚さだけでは企業集団をダイナミックに引っ張っていく力強さが足りなくなる」と補足されています。

 ここにも、京セラフィロソフィにある「両極端を合わせ持つ」という考え方が反映されています。

 両極端を合わせ持つということは、「中庸」を言うのではありません。
 それは、ちょうど綾(あや)を織りなしている糸のような状態。縦糸が大胆さなら横糸は繊細さというように、相反するものが交互に出てくる。大胆さによって仕事をダイナミックに進めることができると同時に、細心さによって失敗を防ぐことができるのです。
 大胆さと細心さを最初から合わせ持つのは難しいことですが、仕事を通じていろいろな場面で常に心がけることによって、この両極端を兼ね備えることができるようになるのです。
(要約)

 「大胆さ」を「強烈なリーダーシップ」、「細心さ」を「謙虚さ」と置き換えると、今日の一言になります。

 経営者は、強烈なリーダーシップを持つと同時に、一方ではそれを否定するような謙虚さを兼ね備えていなければならない。

 私の信条は「謙虚にして驕らず、さらに努力を」です。
 しかし、謙虚さばかりが先行してしまえば、ダイナミックな進展など望めむべくもない、ということを改めて認識し直し、目の前の事業拡大に向けて注力しなければと猛省しています。


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