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お金の話 学級通信『Sagittarius』vol.54 2021.9.7発行

 キミたちの夢は何ですか?「ミュージシャンになる」,「お笑い芸人になる」,「お店を出したい」。いずれにせよ,キミたちが一歩踏み出す時は,必ずお金の問題が絡んできます。活動費や生活費,そのたもろもろの費用を捻出しなければなりません。
 そして,この「お金」の問題をクリアできなくなった瞬間,キミたちの活動は強制的に終わらされてしまいます。そんなことを知っているキミたちは,ついつい「そこで取り返しのつかないことになるくらいなら,無難な道を選んだほうが,まだマシだ」と,ベストではなく“まだマシ“な場所に根を張ってしまいます。それが,納得できなくても,大人が引いたレールの上でも。
 キミたちの人生は自分で守らないといけない。外に飛び出さないと助からないという状況は,いつだってキミたちの元にやってくるかもしれません。その時に,「お金」の不安が大きかったら,なかなか足が動かない。だから,「お金」を学ぶって,とても大切。けっしていやしいことなんかじゃないんです。
 今,私たちが使っている「お金」には大きな変化が起きています。クラファン(クラウドファンディング)の定着によって「お金の流れ方」「お金の作り方」がここ数年で大きく変わり,「お金」の常識も大きく変化しました。
・現代にはクラファンという資金調達の仕組みがある
 これまでは,お金持ちにお金を借りるか,アルバイトぐらいしかお金を集める方法はありませんでした。でも,今はアイデアと熱意さえあれば,例え小学生でもクラファンでお金を集めることができるようになりました。少し前ですが,茨城県の小学生「ツリーハウスを作りたい!」という企画で200万円以上のお金を集めました。
・クラファンは金の生る木ではない
 ここはキチンを押さえましょう。実は同じような企画でも100万円集まる人と,1円も集まらない人がいます。有名なタレントさんがクラファンをやっても,全然お金が集まらない場合もあります。どうして,「クラファンでお金が集まる人」と「クラファンでお金が集まらない人」がいるのでしょうか。キーワードは「信用」です。
  ホームレス小谷さんは元芸人で,今は日給50円で生活しています。「え?50円?」って思いました?その通り,日給50円です。小谷さんは自分の1日をネットショップで50円で売っています。
 芸人を辞め,日給50円生活が始まった当初,50円で草むしりやヌードモデル,iPhoneの新作発売の列に1週間並んだりします。さて,これがどうなったか。
 最初はみんな「うちの庭の草むしりをお願いしま~す」といった軽いノリで彼を買う。しかし,彼が朝からよく働くもんだから,購入者は「さすがに50円で働かせてしまって申し訳ない」となり,昼ご飯をごちそうする。そして,再び仕事に戻り夜までよく働く。30歳前後の男を50円で丸1日働かせてしまった購入者はさらに申し訳なくなって,夜ご飯もごちそうする。
 昼と夜の食事を共にすると,すっかり仲良くなって,購入者のから「飲みに行きませんか?」と声がかかるのがお決まりの流れ。この時点で購入者は昼と夜の食事代を出し,飲み代も出しています。50円どころか,そこそこの金額を彼に支払っています。ところが購入者の口から出てくる言葉は「小谷さん,今日は本当にありがとう」
  これまで私たちは労働の対価として「お金」を受け取っていましたが,ホームレス小谷さんはお金を稼ぐことを放棄して,その代わりに「信用」を稼ぎ続けたのです。
 さて,そのホームレス小谷さんですが,「4000円の支援で結婚式に参加できる」というリターンのクラファンで,3週間で250万円を集めて,結婚式を挙げました。彼に支援をしたのは一体誰でしょうか。正体は「ホームレス小谷を50円で買ったことがある人達」。
 これまでホームレス小谷を買った人達が,「あの小谷さんが結婚式を挙げるなら,4000円くらい喜んで」と一斉に支援を始めたんです。それは,彼が半年間ため続けた「信用」がお金に換金された瞬間でした。
 つまり,ホームレス小谷は「お金持ち」じゃなかったが,「信用持ち」だった。信用を持っているからクラファンという「信用をお金に換金する装置」を手にしたときに,お金を作りだすことができた。


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