ハイドン:交響曲第45番 嬰ヘ短調 Hob. I:45『告別』

00:00 I. Allegro assai
05:34 II. Adagio
08:43 III. Menuet: Allegretto
17:43 IV. Finale: Presto - Adagio (28分44秒)

演奏者 Antal Doráti (conductor)
London Symphony Orchestra (orchestra)
公開者情報 Mercury, 1962. SR 90280.
著作権 Public Domain - Non-PD US
備考 Source: Internet Archive

ハイドンの交響曲第45番嬰ヘ短調 Hob. I:45『告別』は、ヨーゼフ・ハイドンが1772年に作曲した交響曲で、『告別交響曲』とも呼ばれています。この作品は非常にユニークで劇的な構造を持っており、特に最終楽章でその特色が際立っています。

1. **背景**: ハイドンはエステルハージ家の宮廷楽団の首席指揮者として働いていた時期にこの交響曲を作曲しました。伝説によると、この交響曲はハイドンが楽団員たちとともに長期間エステルハージ宮殿に滞在していた時期に作曲され、楽団員たちが家族に会いたいという思いを表現するために作られたと言われています。

2. **構造**:
- 第1楽章: Allegro assai
- 第2楽章: Adagio
- 第3楽章: Menuetto: Allegretto
- 第4楽章: Finale: Presto - Adagio

3. **最終楽章の特徴**: 最終楽章は特に注目されており、楽団員たちが一人ずつステージを去っていき、最終的には2人のヴァイオリン奏者だけが残るという独特の演出があります。これは、楽団員たちが帰りたいという願いを音楽と舞台演出を通じて表現している場面と解釈されています。

4. **評価と影響**: 『告別交響曲』はハイドンの創造力とユーモアのセンスを示す作品として評価されています。また、この交響曲は後の交響曲作曲の発展にも影響を与えたと考えられています。

この交響曲は、ハイドンの交響曲の中でも特に個性的で劇的な要素を持っており、聴衆に強い印象を与える作品となっています。

ハイドンの交響曲第45番嬰ヘ短調 Hob. I:45『告別』は、1772年に作曲された独特な交響曲で、以下のポイントが特徴的です:

1. **作曲の背景**: ハイドンはこの時期、エステルハージ家の宮廷楽団の首席指揮者(Kapellmeister)として働いていました。1772年には特に長いシーズンが続いており、音楽家たちは家族に会いたくてウィーンに帰りたかったとされています。彼らはハイドンに対して帰宅の要求を出し、ハイドンはこれに対して交響曲を作曲しました。最終楽章では、曲のダイナミクスが終結に向かうところで一時停止し、予期せぬアダージョが始まります。そして、この新しいセクションが進むにつれて、楽団員は一人ずつパートを終え、キャンドルを消し、舞台を去っていきました。最終的にはハイドン自身とルイジ・トマシーニという2人のヴァイオリン奏者だけが残り、彼らも仲間に続いて舞台を去りました。これにより、エステルハージ侯爵は楽団員たちに帰宅を許可しました【15†(LA Phil)】。

2. **演奏時間と編成**: 通常の演奏時間は約25分で、編成は2本のオーボエ、バスーン、2本のホルン、および弦楽器で構成されています【7†(LA Phil)】【8†(Wikipedia)】。

3. **作曲時期と人気**: この交響曲はハイドンの「シュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)期」に属する作品であり、ハイドンの交響曲全体の中でも非常に人気のある作品の一つとされています【9†(Wikipedia)】。

4. **作曲の目的**: 交響曲はハイドンのパトロンであるエステルハージ家のニコラウス侯爵のために作曲され、ハイドンと宮廷楽団がエステルハージャの夏の宮殿に滞在していた時期に作られました【10†(Musopen)】。

5. **エステルハージャの宮殿**: ニコラウス侯爵は、自身の壮麗な(そしてまだ新しい)城を持っており、この城は126の部屋、隣接するオペラハウス、音楽家のための別館、宿屋、喫茶店、そして中国風のパビリオンを含む庭園を持っていました【11†(UC Davis Arts)】。

ハイドンの交響曲第45番は、交響曲の創作背景や演奏の特徴、そしてハイドンと彼の時代の社会的環境を理解する上で非常に興味深い作品となっています。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

交響曲第45番 嬰ヘ短調 Hob. I:45 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1772年に作曲した交響曲。『告別』(独: Abschieds)の愛称で知られ、いわゆるハイドンの「シュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)期の交響曲の中ではよく知られている作品の一つであるばかりでなく、ハイドンの交響曲全体の中でももっとも人気のある作品のひとつである。

概要
本作、第46番、第47番『パリンドローム』は、残された自筆譜によっていずれも1772年の作曲であることが判明している。下記の逸話から、1772年の秋に作曲されたことが明らかである。

この曲は嬰ヘ短調という、18世紀の交響曲にはほかに見ない調性で書かれており、第3楽章と終楽章ではさらに嬰ヘ長調(嬰音(シャープ)記号が6つ)になる。有名な終楽章を除いても、第1楽章の激しいリズムや展開部に突然出現する新しい主題、第2楽章の半音階的な進行など、本作には創意があふれている。

愛称の由来
『告別』の愛称はハイドンの自筆譜には見えず、他の18世紀の資料にも見えないが、19世紀初めから広く使われた。

19世紀初めにハイドンの伝記を記したゲオルク・アウグスト・グリージンガー(英語版)やアルベルト・クリストフ・ディース(英語版)が伝える逸話によると、エステルハージ家の夏の離宮エステルハーザでの滞在期間が予想以上に長引いたため、大抵の楽団員がアイゼンシュタットの妻の元に帰りたがっていた。このため、ハイドンは終楽章で巧みにエステルハージ侯ミクローシュに楽団員の帰宅を認めるように訴えた。終楽章後半のアダージョで、演奏者は1人ずつ演奏をやめ、蝋燭の火を吹き消して交互に立ち去って行き、最後に左手に、2人の弱音器をつけたヴァイオリン奏者(ハイドン自身と、コンサートマスターのアロイス・ルイジ・トマジーニ(英語版))のみが取り残される。エステルハージ侯は、明らかにメッセージを汲み取り、初演の翌日に宮廷はアイゼンシュタットに戻された。ただし、この逸話を裏付ける証拠は残されていない。

楽器編成
オーボエ2、ファゴット1、ホルン2、第1ヴァイオリン2、第2ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1、コントラバス1。

両端楽章のホルンは1本がA管、もう1本がE管を使用する。長調の第2楽章では2本のA管を、第3楽章では2本のFis管を使用している。ハイドンは本作と同じく、特殊な調性で書かれた第46番の2曲のためにホルン用の替え管を特注し、ハイドン自身による1772年10月22日付けのホルン製造会社宛ての支払い書が残されている。

古今を通じても、Fis管のホルンの使用例はほとんど見られない(ジョルジュ・ビゼーの『アルルの女』第2組曲の「パストラール」では、同様のFis管ホルンの希少な実例を見ることが出来る)。

最終楽章のアダージョ部分では、各楽団員のために楽譜が12段に分かれて書かれ、2人のオーボエ、2人のホルンのパートがそれぞれ独立しているほか、ヴァイオリンは4パートに分かれ、通常は低音楽器としてひとまとめに書かれるチェロ・ファゴット・ヴィオローネ(コントラバス)のパートが分けて書かれている。

本作が書かれた時期のエステルハージ家の楽団は総勢12人であり、上記の楽譜は1パート1人だった。これまで、ハイドンの交響曲でファゴット、チェロ、コントラバスが同じ旋律を斉奏していたのかどうかはよくわかっていなかったが、この交響曲でその裏が取れている。

ハイドンの後期以外の交響曲はチェンバロの通奏低音つきで演奏されることもあるが(録音はトレヴァー・ピノック/EC、トン・コープマン/ABOなど)、チェンバロを用いない演奏もある(録音はクリストファー・ホグウッド/AAM、ブルーノ・ヴァイル/Tafelmusikなど)。特に、ホグウッドはハイドンの交響曲の初演当時はチェンバロ奏者はいなかったと考える学者の意見を取り入れ、初演当時の響きを再現すべくチェンバロを用いない演奏を録音した。本作におけるその根拠としては、終楽章後半のアダージョで、舞台から去る各楽器には独奏パッセージが与えられているにもかかわらずチェンバロ用の楽譜がないこと、ハイドン本人は最後までヴァイオリンを弾いていたと伝えられることから、ハイドンがチェンバロを弾くことはできなかったと考えられ、ほかにエステルハージ家にはチェンバロ奏者は雇われていなかったことが挙げられる。なお、第1番以前にハイドンは多くの "Sinfonia" を破棄したと考えられており、その時代には通奏低音が含まれていた可能性がある。

曲の構成
定式通りに4つの楽章で作曲されているが、最終楽章のあとのアダージョ部分は実質的に第5楽章に相当する。演奏時間は約25分。

第1楽章 アレグロ・アッサイ
嬰ヘ短調、4分の3拍子、ソナタ形式。

第2楽章 アダージョ
イ長調、8分の3拍子、ソナタ形式。

第3楽章 メヌエット - トリオ:アレグレット
嬰ヘ長調、4分の3拍子。

第4楽章 フィナーレ:プレスト - アダージョ
嬰ヘ短調 - 嬰ヘ長調、2分の2拍子、ソナタ形式。

その他
本作は早くから有名になり、ハイドン自身も自作の第60番『うかつ者』や第85番『王妃』の中でセルフパロディを行っている。
また、アルフレート・シュニトケによる2つのヴァイオリンと11の弦楽器のための『ハイドン風モーツァルト』(Moz-Art à la Haydn、1977年)はこの作品に影響を受けた曲で、真っ暗な中を演奏者が演奏しながら舞台に上がっていく。曲の終わりではひとりずつ演奏しながら舞台から去っていき、再び舞台は暗くなる。
2009年のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートでは、ハイドン没後200年を記念し、ダニエル・バレンボイムが第4楽章をとりあげ、団員が1人ずつ壇上から去っていく様が評判を呼んだ。

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