ベートーベン:ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」 変ロ長調 Op.106

In this video, we'll be playing Ludwig van Beethoven's Piano Sonata No. 29 in B♭ major, "Harmonic CONCERTO", in the key of A minor.

This Piano Sonata is a beautiful and emotional work, perfect for piano lovers and classical music fans. We'll be playing it in its original key, A minor, and you'll be able to hear the beauty and power of the piano in all its glory. So come join us on this beautiful and emotional journey into classical music!

00:00 1. Allegro
20:12 2. Scherzo
26:43 3. Adagio sostenuto
46:35 4. Largo, Allegro, Allegro risoluto

演奏者ページ Frederic Rzewski (piano)
公開者情報 Frederic Rzewski
著作権 Creative Commons Attribution Non-commercial Share Alike 3.0
備考 Concert recording Bern (Switzerland), March 1991
These file(s) are part of the Werner Icking Music Collection.

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ピアノソナタ第29番 変ロ長調 作品106は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲したピアノソナタ。全10曲ある4楽章制ピアノソナタの最後を飾る大曲である。『ハンマークラヴィーア Hammerklavier』という通称により広く親しまれている。

概要
第28番のピアノソナタを書き上げてからのベートーヴェンは、甥カールの親権争いなど音楽以外のトラブルに頭を悩ませることが多くなっていた。しかし、創作活動が一見停滞したかのように見えたこの時期にも音楽への情熱は作曲者の内で結晶化を続け、このソナタや続く『ミサ・ソレムニス』や交響曲第9番として開花していくのである。

この楽曲の作曲に取り掛かったのは1817年11月のことで、翌1818年初頭に第2楽章までが仕上がり、夏季を過ごしたメートリンクで後半楽章もおおよそ形になっていたものと思われる。1819年3月までには浄書を含めて完成しており、同年9月に出版されてルドルフ大公に献呈された。

この曲が『ハンマークラヴィーア』と通称されるのは、ベートーヴェンがシュタイナー社へ宛てた手紙の中で作品101以降のピアノソナタに「ピアノフォルテ」に代わりドイツ語表記で「ハンマークラヴィーアのための大ソナタ」(Große Sonate für das Hammerklavier)と記すように指定したことに由来する。ところがその後、この曲だけが『ハンマークラヴィーア』と呼びならわされるようになった。なお、この曲の自筆譜は散逸してしまっている[2]。

演奏時間
約38分[3] - 50分[4]。原典版のメトロノーム通りに弾いた演奏は、ヴァルター・ギーゼキング[5]とユルク・ヴィッテンバッハの音源がある。

楽曲構成
第1楽章
Allegro 2/2拍子 変ロ長調
ソナタ形式。

第2楽章
Assai vivace 3/4拍子 変ロ長調
三部形式。

第3楽章
Adagio sostenuto 6/8拍子 嬰ヘ短調
ソナタ形式。

第4楽章
Largo 4/4拍子 - Allegro risoluto 3/4拍子 変ロ長調

逸話
高度で膨大な内容を有し、ピアノの持つ表現能力を極限まで追求している。演奏効果も高いため、国際ピアノコンクールの予選ですら、全楽章を持ってくるピアニストもいる。その技術的要求が当時のピアニストですらあまりに高すぎたため、出版当時の常識では演奏不可能であった。しかし、ベートーヴェン自身は「50年経てば人も弾く!」と一切の妥協をしなかった。現実には、作曲後20数年でクララ・シューマンやフランツ・リストがレパートリー化して各地で演奏した。また、ブラームスは自身のピアノソナタハ長調の中で第1楽章同士に酷似した開始をさせている。

この曲を弟子のフェルディナント・リースが出版するとき、ベートーヴェンから1通の手紙が届く。受け取ったその手紙には、第3楽章 Adagio の最初にA-Cisの2つの音符を加えるようにとの指示があった。リースは回想している。「正直に言って、先生は頭がどうかしたのではないかと疑った。これほどまでに徹底的に考え抜かれ、半年も前に完成している大作に、たった2つの音符を送って来るとは。…しかし、この音符がどれほどの効果をもたらすかを知った時、私はさらに増して驚嘆した。」

フェリックス・ワインガルトナーは、1926年に管弦楽用の編曲を行って録音(1930年)も残している。グレン・グールドはインタビューの中で「鏡に映すと右手と左手がそっくり一緒になるパッセージが第4楽章にあり、確実に意図的だ」という指摘を示した。

なお、スヴャトスラフ・リヒテルの公演で演奏されたハンマークラヴィーアをもとに作曲されたピアノ作品に、マイケル・フィニスィーの「ハンマークラヴィーア」がある。

曲とピアノの発達について
この曲の成立には当時ベートーヴェン所有の2つのピアノが大きく関係している。すなわち、F1~f4(ドイツ表記、以下同様)の音域を持つシュトライヒャーとC1~c4の音域を持つブロードウッドのピアノの音域が楽章によってそのまま反映されている点が特徴的で、具体的には第1楽章~第3楽章はシュトライヒャーで作曲され、第4楽章はブロードウッドで作曲されている。言い方を変えれば、作曲当時のベートーヴェンの演奏環境では第1楽章~第3楽章はシュトライヒャーでなければ高音域が演奏できないし、第4楽章はブロードウッドでしか低音が演奏できない状態であった。しかも、第4楽章114~115小節目には、実際に楽譜には書かれてはいないがブロードウッド最低音のC1よりも更に低いB2を示唆している箇所さえある(このB2を実際に弾く演奏者もいる)。

事実、第3楽章を作曲中の時期にブロードウッドを手に入れた経緯があったとは言え、何故この様な形で完成となったのか詳しい理由は不明であるが、ベートーヴェンの時代はピアノを含め様々な楽器の改良・発展が盛んであった為、全楽章を一台で弾く事のできるピアノの登場はそう遠くなく実現するだろうと予測しての事であるとの見方が一般的である。加えて、作曲当時はベートーヴェン本人以外にこの曲を弾ける人間がおらず、上記の様に「50年経てば人も弾く!」と語っていた事から考えても、あまり作曲当時の演奏環境にこだわらなかったものとも考えられる。「このソナタは押しつめられた状況下で書かれました。なぜなら殆どパンのために書くのは辛いことだからです」と本人の証言が残っており、時間がなかったことが一因とみられている。

また、第3楽章に関してシュトライヒャーではなくブロードウッドの為に書かれたと言う文献を目にする事があるが、第3楽章にはブロードウッドでは演奏不可能な高音のcis4が存在する事と、高音域に関してはベートーヴェンは演奏不可能な音符をピアノ独奏曲の場合書かない為[注 5]、ブロードウッドの為に書かれたという説はそのままでは信用し難い。ただし、先にも記した様にベートーヴェンは第3楽章の作曲の途中時期に低音をC1まで演奏できるブロードウッドを入手しており、その影響かどうかは判らないが63小節目にはシュトライヒャーでは演奏が不可能な低音のD1が大抵の版に存在している事も混乱を助長している。もっとも、このD1は初版にはなく、該当箇所にはD2の下に「8」と読める文字があることから、通例として1オクターブ下のD1を追加しているものと考えられるが、ベートーヴェンにしては珍しい指定方法である。またウナ・コルダ・ペダルの細かな使用指定が第3楽章では顕著に見られる。

なお、第1番からこの曲の第3楽章までのベートーヴェンのピアノソナタには、作曲当時のピアノでは演奏不可能であった低音(主にC1~E1)あるいは高音を校訂者によって所々補強されている事があり、Peters版などはその傾向が顕著であるが、近年の原典版はベートーヴェンの意思を尊重して全てカットされている。実際の演奏に即してこれらの補強低音を弾くかどうかはシューベルトの場合と同様、演奏者の判断に委ねられる。また、この曲の第4楽章以降に作曲されたベートーヴェンのピアノ曲は基本的にブロードウッドを想定して書かれている。
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