#1 心に何かを刻み込む作品

 小説『きみは雪をみることができない』読了。

 昨年の春、自分が大学2年生になるタイミングで購入したが、序盤の主人公の心情や心向があまりにも自分と似ていて同化しそうだったため、読むのを中断して寝かせていたものだった。しかし、2,3日前から読み直してみると、止まることなく読み進めることができ、すとんと心に落ちるような作品だった。
 自分が今年度から大学で専攻している社会学のテーマとも有機的に結びつき、非常に心に残るものがある。社会学の中では専門ではないけど、医療社会学やジェンダー論をはじめとするマイノリティの社会学に通ずるものがあった気がした。
 作者はこの作品を通して何を伝えたかったのか、何が言いたかったのか、何を感じて欲しかったのか。まだ読み終わったばかり、自分の中でそれを整理して考えることはできていない。でも思い返してみれば、自分が今まで良作だと感じたものはいつだってすぐに心の整理ができないものだった。このような作品を読むと、心の奥にある何かを無理やり引っ張り出されたような感覚に襲われる。
 自分の心に残る作品は、自分の心に傷跡をつけていく作品なのだ。

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