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【青森発】亡き人に寄り添う場所に静かに湧く明礬名湯ーむつ市・恐山温泉ー

本州の最北東、下北半島の付け根部分にある霊場・恐山。
はるか昔から「死者に会える場所」として知られ、イタコの口寄せ伝説などが残る特別な地とされています。

NHKの番組「ドキュメント72」でも放映され、特別な思いを持ちながらこの地を訪れる人々の言葉に心を打たれたことを記憶しています。

そのような死者に会える場所、まるで『古事記』における黄泉平坂(よもつひらさか)のようなこの地に、こんこんと湧きだす温泉があるのはご存じですか。

今回は霊場・恐山の強烈な硫黄泉をご紹介したいと思います。


◎特別な霊地・恐山へと向かう
青森市内から車で2時間程度。
下北半島の付け根あたりに差し掛かると「むつ市」が見えてきます。
陸奥湾を有した資源の多い場所で、漁業が盛んな町であることがわかります。

そんなむつ市からさらに車で30分強。
県道をさらに進んでいくと、山肌から湯気が立っている場所に到着します。

赤い橋のある場所に差し掛かると恐山に到着したことがわかってきます。
その場所は恐山菩提寺。

非常に大きな敷地が広がっており、後方にある宇曽利山瑚の素晴らしい風景を感じ見ることができます。その美しい風景から「死者とつながる場所」という意識を再び新たにします。

恐山菩提寺の入口。2025年2月現在入山料は700円となっている

◎温泉の所在
温泉紹介なのに温泉はどこ…?
実際、温泉に入るという気持ちで進んだ方は「どこにあるんだ」という気持ちになると思いますが、実はお風呂はこの菩提寺の境内の中。あくまでお参りをする前提で温泉が付随しています。

駐車場に車をとめ、入口に向かって700円の拝観券を買って中に入ります。

中は入ると大きな楼閣に迎えられます。辺りに刺さっている風車を見ていると、いかにこの地が信仰として大切な場所なのかを理解することができると思います。

楼閣の前にも風車がたくさん刺さっている
境内も自然と相俟った美しい風景が広がる
宇曽利止湖に見える山々と風車。風車が回る音だけが辺りに聞こえる

門をくぐって左右を見ると湯屋が見えてきます。それが今回ご紹介する温泉です。

右側には男湯、左側には女湯、混浴もありましたが女湯になっているときもありました。

風格を漂わせる男湯

がらがらと入って靴を脱ぐとその場に脱衣所があります。

その前にはかけ流しの立派なお風呂!
エメラルドグリーンの硫黄の香り漂う美しい温泉が迎えてくれます。

混浴のときもあったが撮影時は女湯だった

手前がぬる湯、奥があつ湯となっていますがぬる湯でも42度、あつ湯は44度程度なのでかなりあつめのいいお湯です。

一応お水で埋められるようにはなっていますが、せっかくのいいお湯ですから何も埋めずあつ湯でじっくり入りたいものです。

奥のあつ湯はかなり熱い

この立派なお湯に入れるのは拝観者だけ…。ある意味で贅沢で貴重な温泉に心も癒されます。

中央からはアチアチの源泉が流れ出る

近年、ただお風呂に入りたい人が拝観料を払うことへクレームを言うことがあるそうなのですが、祈りの地において、それは笑止千万というもの。

寺院内で祈り、その晴れた心でこの温泉をいただくことこそが、この地の温泉の本当の入り方なのかもしれませんね。

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