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【中国発】消えゆく町の静寂ー遼寧省・大連市ー

餃子の本場、中国東北部遼寧省。
古くから日本との関係も深く、その街にはかつての名残を見ることができるものもたくさん存在しています。

中国国内の発展は遼寧省も例外ではなく、半島の先に位置する大連市も次々と「町の改造」の波に呑まれていきました。

そんな大連の中心、大連駅から徒歩で5分とかからない場所に、「旧日本人街」と呼ばれた地区があるのをご存じですか。

もちろんその中を歩いていても、日本を感じさせるものは何も見えなくなっているのですが、一歩路地に入っていくと、どこか過去にタイムスリップしたような風景が広がっているのです。

今回はそんな大連の旧日本人街界隈を散策してみたいと思います。


◎終着地点大連駅から歩いていく
大連駅はいわば袋小路のような位置として存在しており、遠く北京から、さらに北部の瀋陽や長春などからの便も、この大連駅が終点になっています。

駅前付近は、日光を遮るかのように大きなビル群が立ち並び、その中をレトロな緑色の路面電車がガタゴトと走る、感慨深い光景が広がっています。

大連駅前の様子も、周囲の高い近代的なビルの光景とは裏腹に、何となく懐かしい雰囲気が感じられます。

大連駅から北東に少し歩くと、旧ロシア街と呼ばれるエリアに入り、石畳の道や古い建物が立ち並ぶ、さらに歴史を感じさせる場所が現れます。

その正反対、南西方向に歩くと旧日本人街またの名を旧連鎖街というエリアが今回のスポットです。

駅からそれほど離れていないのに閑散としてくる

駅前から離れると人通りが一気に少なくなってきます。

そんな中、ある筋を境に町の空気が一変します。

これほどまでに新旧の対比が見事な場所もない

◎「人」のいない町
それまでまがいなりにも「町」が続いていたのに、突然シャッター街が広がり、まるで何かが起こったかのような様子が広がっていくのです。

残された看板が何とも悲しい
まるで人気の失せた町

その通りには歩く人間の気配が消え、すべてが消えてしまったかのような静寂が包まれているのです。後ろに見えている高層ビルの存在がなければ、かの有名なゾンビ映画の舞台の街にに入ったのかと錯覚してしまいそうになります。

廃墟のような場所に生の存在を見るとほっとする

「ここの人々はすべて立ち退きさせられたのだろうか…」
と考えながら歩いていたとき、洗濯物が干されているのに気づきました。

まるで死の町だったその場所に、人が生きていることを感じてほっとする…そんな非日常がその場所にあるのです。

中にお店があると案内されているが…
中は廃墟。人も見えない。
かつてこの場所は大通りのように栄えていたのだろうか。変な感覚がよぎる

ところが、そこにある屋台には新しいものもありました。

「誰かが時間になればこの屋台を取りに来て商売に行くのかな…」

今度はドラゴンクエスト3の廃墟となったものの夜になれば幽霊となった人々が町に戻ってくるテドンの村が頭によぎりました。それほどまでに今、目の前の様子には生きた気配がなかったのです。

通りを変えるとまた風景がかわる
保険品はいわゆる性グッズの店。新しい?というか営業していた
招待所…なんのだろう

迷路のような町を抜け、やや大きな通りに近づくと、人の喧騒が聞こえてきました。廃墟が続く通りでも、ほんのたまに、本当に時々だけ営業をしている店も確認することができました。

その場所の近くには先程の様子とは少し異なった、人々の生活が見える場所が広がっていました。

筋を抜けると生の世界に戻った感じがする

青空市場、買い物をする人々、車のクラクション…雰囲気は数十年前の様子かもしれませんが、人々が「生きる」世界を感じるようになったのです。

団地の中を買い物する人々
青空市場では野菜も売られる

ところどころ怪しい場所はあったものの、そこは大連の生活が垣間見えたのです。

街中で散髪する光景も最近は少なくなってしまった

先ほどの静寂が嘘のように、大通りは騒がしく人や車が往来をしていました。路上で散髪をする男性の姿を見て、私はさっき見た光景がまるで幻だったかのように、眩暈がしたのです。

大連に眠るかつての町並み…。
もしかするとそれらはもうなくなっているかもしれない。

そこは人だけでなく、風景も「一期一会」なのだと感じた場所だったのです。

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