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おとが止まる時がきたら

初めて彼らを聞いたのはいつだっただろうか。
僕がそのバンドを知ったのは、ネットで流行ってた短編動画がきっかけだった。たまたま見たユーモラスなタイトルの動画で流れてた曲が、頭に残るメロディで、気づけばずっと口ずさんでたんだ。

それに加えて、当時のネトゲ仲間がそのバンドのファンだって知って、僕も興味を持つようになった。皆で音楽の話をするのがなんだか楽しくて、気づけばそのバンドの曲をたくさん聴いてた。
この頃初めてネトゲのオフ会をしたんだ。ネトゲ以外では友達がいない僕が、初めて、オフラインで外で「好きなこと」を誰かと話せたのがすごく嬉しくて、その時間が本当に特別だったのを今でも覚えてる。

僕がそのバンドを好きになった一番の理由は、音楽性の激しさとユーモアの絶妙なバランスだと思う。普通なら重くてハードになりがちなサウンドなのに、そこに、おふざけや遊び心を全力で詰め込んでくる感じが最高だった。
歌詞カードは、ただの紙だと思っていたけれど、歌詞カードも細部まで作りこまれていて、ただの音楽というより一つの作品で、
耳だけじゃなくて、目でも楽しませてくれる作品を毎回作り出してくれる彼らのファンになっていくまでにそう時間は、かからなかった。

「こんなバンドがあるのか!」って驚きとワクワクが止まらなかったし、ただカッコいいだけじゃない、どこか笑えるところがあって、そこがすごく親しみやすかったんだ。

それまでの僕は音楽って「聴くだけのもの」だと思ってたけど、このバンドを通じて、「楽しむ」ことができるんだって気づいた。それが僕にとっては新鮮で、すごく刺激的だった。

同時に、メンバーのブログをよく読んでいて
メンバー自身の人間味にも惹かれてたからだと思う。

当時、メンバーのブログや歌詞カードを何度も読み返してた。チョロQの話や、白帯で黒帯を倒すみたいな話、そして「家で引きこもってギター弾いてるお前でいいし、そういうお前がいいんだ」っていう言葉……どれも僕にはすごく響いた。

特に「そういうお前がいいんだ」って言葉は、まるで自分に向けられたみたいで、何度も読んで胸が熱くなった。自分のままでいいんだって背中を押された気がしたし、その言葉があったからこそ、自分の好きなものを大切にしようと思えた。

音楽だけじゃなくて、言葉や生き様からも感動をもらってた。だから、彼らの存在そのものが僕にとって特別だったんだと思う。

僕が初めてライブに行ったのは、ファンになって何年も経った後のことで、シングル曲のツアーだった。メンバーがステージに上がった瞬間に鳥肌が立ったのを今でも覚えてる。あんな感覚、人生で初めてだった。

ヘドバンもモッシュもやったことなかったけど、周りを見て見よう見まねで飛び込んでみた。帰り道、耳鳴りと全身の疲労感がすごくて、それが何とも言えないくらい心地よかったんだ。ライブってこんなに特別なものなんだって、そのとき初めて知った。

それからは、フェスやライブがあるたびに応募して、行けるときは必死に足を運んだ。もちろん倍率が高くて行けないことも多かったけど、それでも当たったときの喜びは格別だった。

一番の思い出は、バンドの内容だけの学力テストで全国上位になったこと。そこでメンバーに直接会えて、一緒にBBQまでしたんだ。そのBBQで出会った人たちとは、今でも仲良くしていて、未だに集まって食事をしたり話してる。

でも今振り返ると、たぶんあの頃が僕の中で一番熱量が高かった時期だったんだと思う。

いつからか、あのバンドに対して違和感を感じるようになった。きっかけは、2号店を作り出したこと。あの独特の特別感が薄れて、安っぽくなったように感じたんだ。

さらには、パワハラやセクハラの炎上事件があったとき。
僕にとってその話題はただのゴシップ以上の衝撃だった。
それまで「信頼できる」「誠実で自分たちの音楽を大切にしている」というイメージがあった彼らが、あの騒動を起こしたことで、一気に距離を感じるようになった。あの事件が、ただの違和感を確信に変えた瞬間だったのかもしれない。

僕が好きだったのは、新しい音楽を届けてくれる彼らだったのに、どんなに辛いことがあっても音楽で吹き飛ばしてくれるような、ブチかましてくれるようなバンドだったのに、それがなくなってしまった。
代わりにグッズを買わせて楽屋に呼ぶみたいなシステムが増えて、純粋に音楽を楽しむ感じじゃなくなってしまった気がする。

服ばっかり作ってるのも正直がっかりだった。
「変なコラボするくらいなら、ツアーをやってほしい。」って何度も思った。

そして何より、昔の彼らはどこか非リアな僕たちの味方でいてくれる存在だった。
それが、いつの間にか遠い世界の人になってしまったように感じたんだ。
僕が好きだったのは、引きこもってギターを弾いてるお前だ。
って言ってくれたあの頃の彼らだったのに。

たまにフェスで彼らを見ると、相変わらずカッコいいなって本当に思う。
音楽性やパフォーマンスには、今でも惹かれる部分がある。

それに、彼らがいてくれたおかげで、たくさんのいい思い出ができた。
それは、どれだけ時間が経っても変わらない。
今でも、本当に緊張してる時や大きな勝負に挑む前は、
結局彼らの昔の曲を聴いて自分を奮い立たせてる。

でも、これから彼らがやりたいことと、
自分が応援したい方向が違うのなら、
もう応援することはできない。

それでも、これまでの感謝は変わらないし、
心の中で頑張ってほしいって思ってる。

そして、いつか遠いどこかで、彼らの新しい発表を聞いて、
初めて彼らに出会えたティーンの頃みたいに
無邪気にはしゃげる日が来たらいいなって願ってる。

あの頃の僕を救ってくれた彼らの音楽は、きっとこれからもどこかで僕を支えてくれる。
たとえ今は距離を感じていても、その存在が僕の人生に刻まれたことに変わりはない。
だから、これからも彼らが彼ららしく輝いていてくれることを、心のどこかでずっと願っている。

元腹ペコの僕より。


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