4 緑血族は引き継がれる 遊戯王ジェネレーションズ
「……俺のターン!」
勇希は静かにデッキからカードを引いた。その瞬間、胸の奥で微かな鼓動が高まるのを感じた。
(まだだ。まだ終わらせない――緑血族の力は、ここで途切れるものじゃない。)
「墓地にいる『緑血族・マジシャン』の効果を発動!」
その宣言とともに、フィールドが緑色の光に包まれる。墓地に眠る「緑血族・マジシャン」のホログラムが浮かび上がり、まるで勇希の決意に応えるかのように静かに輝きを放った。
「この効果で、『緑血族・マジシャン』をデッキに戻し――デッキから新たなモンスターを特殊召喚する!」
緑血族の藍戦士、降臨
勇希がデッキからカードを指し示すと、青く輝く光がフィールドを満たし始めた。その光の中心から現れたのは――「緑血族の藍戦士」。
「来い――『緑血族の藍戦士』!」
深い藍色の甲冑をまとい、鋭い剣を構えた戦士が静かに立ち上がる。その姿は「緑血族・マジシャン」の意志を確かに受け継ぎながら、さらに強力な進化を遂げた存在を思わせた。
「また新しい奴かよ。」
天保が軽い笑みを浮かべながら言うが、その目には微かな警戒心が混じっていた。それも当然だ。「藍戦士」の周囲には、明らかに尋常ではない力の気配が漂っている。
「『緑血族・マジシャン』の効果で召喚された『緑血族の藍戦士』は、特殊効果を発揮する。」
その言葉に、天保の表情が引き締まる。
藍戦士の特殊効果――裏側除外
「『緑血族の藍戦士』の効果発動!相手のデッキ、フィールド、手札から、それぞれ1枚ずつカードを裏側表示で除外する!」
勇希が宣言した瞬間、「藍戦士」が剣を振りかざし、その剣先が天保のデュエルディスクに向かって光を放った。
「まずは――デッキから1枚を裏側除外!」
藍戦士の剣先から放たれた青い光が天保のデッキに突き刺さる。デッキから1枚のカードが弾き飛ばされ、フィールド上に輝きを放った後、光の中に消えていった。
「なんだと……!」
天保が歯を食いしばりながらデッキを確認する。除外されたカードは、次のターンで発動する予定だった「恐竜進化薬」だった。
「次に――フィールドの『超越竜アルティメットグラディオス』を裏側除外だ!」
「藍戦士」の剣先が再び青く輝き、光が天保のフィールドを突き抜ける。その光に包まれた「アルティメットグラディオス」は、咆哮を上げる間もなく消え去り、フィールドは完全に空になった。
「くそっ……!」
天保の顔が歪む。その様子に、勇希は心の中で静かに拳を握り締めた。
「そして最後に――お前の手札から1枚を裏側除外する!」
藍戦士の剣が再び天保のデュエルディスクを指し、手札からカードが1枚弾き飛ばされる。そのカードも光の中に飲み込まれて消えた。
「なっ、原始生命態ニビルが……!」
天保の手札に隠れていた切り札級のモンスターが、まさかのタイミングで除外される。その瞬間、彼の表情には明らかな焦りが浮かび上がった。
「これでお前の手札も、フィールドもほとんど無力だ。」
勇希が静かに言葉を投げると、観客席の鈴が声を上げた。
「やった!ナイス勇希!」
その声が、フィールドに漂う緊張感を一瞬だけ和らげた。しかし、勇希の目は冷静だった。
「バトルフェイズだ。」
バトルフェイズ――緑血族トークンと藍戦士の攻撃
フィールドには、攻撃力3250の「緑血族トークン」と、藍戦士攻撃力2800の2体が並んでいる。それぞれが天保に向けて、決死の攻撃態勢を整えた。
「まずは、『緑血族トークン』で攻撃!」
緑色の光を纏った巨大なトークンが天保に向かって突進する。その動きは力強く、まるで全身全霊を込めた一撃のようだった。
「ぐあああっ!」
天保が叫び声を上げ、デュエルディスクのライフポイントが一気に減少する。だが、勇希は攻撃の手を緩めない。
「次は――『緑血族の藍戦士』でダイレクトアタック!」
藍戦士が剣を構え、青い光を纏いながら天保に向かって突進する。その剣が空を切る音がホログラムシステムを通じて響き渡り、観客席の誰もが息を呑む。
「やめろ……!」
天保の叫びは空しく、藍戦士の剣が放つ一撃が彼に炸裂する。
「ぐああああっ!!!」
天保はその場で思わず後ずさり、爆風に包まれながら絶叫を上げた。彼のライフポイントは再び激減し、デュエルディスクの警告音が響き渡る。
フィールドの静寂
攻撃が終わり、フィールドには静寂が訪れた。「藍戦士」と「緑血族トークン」が佇む中、天保は息を切らしながらデュエルディスクの画面を見つめている。
「くそっ……!」
彼はまだ立ち上がる意思を見せていたが、その表情には余裕の欠片もなかった。
一方、勇希はカードを数枚伏せてターンを終了し、静かに言葉を放った。
「これが……緑血族の力だ。」
その言葉に、天保は歯を食いしばるだけで何も言い返せなかった。
観客席の鈴
「勇希……すごい!」
観客席で見守る鈴が思わず声を上げる。その目には確かな信頼と喜びが宿っていた。
(これなら、勝てるかもしれない。)
勇希の背中を見つめながら、鈴はそう確信していた。
――決着は目前
勇希の反撃により、天保は追い詰められた。だが、デュエリストとしての天保がここで諦めるはずはない――最後の勝負はどちらに軍配が上がるのか。
「俺のターン!」
天保がカードを引く。その瞬間、彼の表情に広がったのは、不敵な笑みだった。
「へへっ……やっぱり俺って運がいいんだよな。」
天保の声には、明らかに余裕が戻ってきていた。その言葉に、勇希の眉が僅かに動く。
「何を引いた?」
「いやいや、教えてやるのはまだ早いさ。」
天保はゆっくりとカードを手に持ち、勇希を見据えながら口角を上げた。
「運がなかったな、勇希君。このカードを引いた時点で、お前の勝ちはなくなったも同然だ!」
サンダーボルト発動
「魔法カード『サンダーボルト』を発動!」
天保がカードをデュエルディスクに差し込むと、フィールド全体に稲妻が走った。その光と轟音が、「緑血族トークン」と「緑血族の藍戦士」を包み込む。
「これでお前のモンスターは全滅だ!」
「くっ……!」
勇希は思わず歯を食いしばる。「サンダーボルト」は、相手フィールドの全モンスターを破壊する強力な魔法カード――その効果により、「緑血族トークン」も「藍戦士」も青い光の中で次々と消滅していく。
「これでお前のフィールドは空っぽだな。どうだい、絶望的な気分になったか?」
天保が余裕たっぷりの声で挑発する。
勇希の窮地
勇希のフィールドは、完全に無防備となった。先ほどまでの反撃の勢いが嘘のように、彼のライフポイントを守るものは何一つない。
(……これが、遊戯王か。)
胸の奥に広がるのは、圧倒的な無力感だった。だが、勇希はまだ諦めていなかった。その瞳には、消えそうになりながらも小さな炎が宿っていた。
「それで……攻撃するのか?」
勇希が天保を見据えながら言葉を放つ。